拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
334 / 604
ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-36

しおりを挟む
「ナイゼル! 指示を!!」
「……突撃だ」
「いいんだな?」
「ああ……」
「了解だ……」
 あ、何だろう。この風景。どこかで見た事あるぞ。

「我らが最後の希望! ピートさん! 後は任せました!!」
 なにを? 僕に何を託そうとしているんですかね? なんの手順も話も聞かされていないのに、なにを行えと? 
 そもそも僕が、それを聞いていたとして、実行するとでも?

「ばんざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」

「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
 ああ……、どこかで見たと思ったら、自分自身だった。僕もそれ演習の時にやったよ。
 後、シズクさんとの初対面時に、言い合いから発展した時は一人でやった。
 演習の時は残った皆さんと一緒にやったな~。皆さん元気にしてるかな~。
 
 でも、結局それを実行するとさ……。

「バイバイ」
 ――……皆さん仲良くカチコチになったよ……。
 全くもって歯が立たないとはこの事。
 シズクさんはコンクエストとかに参加しちゃ駄目なんじゃないかな?
 いや――――、これはルールがあるとはいえ、冒険者と魔王軍の戦いなんだから、しかたがないのか。
 弱い冒険者が悪いって事になるな。
 
 いいところまでいったんだろけど、シズクさんは越えられない壁だね。

「はい、今回も勝ち――――と、するべきなのでしょうか?」
 それはつまり、僕を倒してないから、まだ勝負がついていないという内容の元で、話しているのでしょうか?

「出来ればそうしていただけると、ありがたいですね」
 ナイゼルさんは僕に託そうとしてるけど、どうしろと? そもそも僕は冒険者ではないですから。
 分かってますよ。一緒に寝食を共にしているのに、そこだけは線を引くなんて、手前勝手じゃないかとも思われるでしょう。
 でも、そうなんだから仕方がないのですよ。だって僕、公務員なんで。
 僕は――――、戦いたくなんかないし、戦えない! だって僕、公務員なんで。



「お怪我は?」

「問題ないです」

「よかった。非戦闘員に怪我でもされたら恥ですから」
 ほら! ね! シズクさんも非戦闘員と認識してますよ。
 貴方たちだけですよ。僕を戦闘要員と考えてるのは! 
 目力で伝えてみるけど、氷の世界に閉じ込められてるからね、この気持ちは伝わらないよね~。
 
 と、いうことで、今回も冒険者サイドが全滅で終わりでいいじゃないですか。
 どうせ死んだ事がなかったかのように、生き返るんだから。リセットのきく人生で万歳だね。
 うん――――、思考がここに馴染んできてる。そろそろ、本気で鏡と向かい合うのが怖くなってきた。
 魚の目はやだ! キラキラの蒼眼を維持したい!!

 よし、コンクエスト終わり。感想戦に移行して、検討でもやりましょうか。
 
「僕に配慮をしてくださる優しさを、もう少し配下の方々に向けてあげてほしいです」
 ん? って、首を傾げて、言っている意味が分からないって表情。
 分かっちゃいるが、本当に命を軽く見てる面々ばかりだよ……。

「長たる者、慈悲を持つ事で、徳を得るというのも大事だと思うんです。素人が生意気で申し訳ないですけども」
 歴史が物語ってるけども、恐怖政治はろくな結果も生まないし、いずれは淘汰されるってものだ。
 カグラさんの妹さんなんだから、配下の方からの忠誠も、お姉さんに負けないくらいになってほしいわけですよ。
 比べると不愉快になるだろうから、経験を活かして口には出さないヘタレな僕。

「ピート様がそう言うのでしたら、考えを改めましょう」
 あら? 最初のころと違って、素直になられて。
 それくらい素直に接していれば、最高に可愛い存在なのに。
 脱、戦々恐々による統治を、スローガンに掲げていただきたい。

「では、結果は魔王軍の勝利でいいですね?」

「ナイゼル達もやり手ではありますが、まだまだですね」
 これでまだまだなんだからね。魔王討伐に最も近いとされているカルタさん達って、どれだけ強いの? 
 噂では魔王幹部と互角の勝負が出来るみたいな事になってるけど、シズクさんのこの無双っぷりを目にすると、信憑性に欠ける。
 というか、シズクさんが規格外なだけなんだよね。
 実際、どうなんだろうね。あのパーティー。強いのは確かなんだろうけどさ。
 目の前の現実を見せられるとね~。これで本気じゃないんだよ。
 
 ――――ま、そんな事は、正直、僕のような一般人がいちいち気にする事でもないので――――、
「調査はこれくらいでいいよね~」
 独白して、ここでの調査を無理矢理に終わらせる事を決定。
 ここの方々の生き様ってのも理解できたし。
 魔力粒子が測定不能なくらいの濃度だという事をレポートにすれば、及第点だろう。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...