拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-38

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 ――――カツカツと氷の上を歩く足音が、サッサッというものに変わる。ザッザッではなく、サッサッ。浜辺の砂がきめ細かいから、砂上の足音も軽やかだ。
 反面、僕の足は重いけどね。
 館に近づく度に重みが増していくよ……。
 
 で、何処に旗を立てればいいのかな? そもそも、旗を持ってないんだけども。
 
 ――……便利な世の中だね。考えてるだけで、旗が僕の手元にやって来たよ……。
 氷の壁をすぅぅぅぅぅって滑りながら、僕の手元にやって来たよ……。
 きっと、氷漬けになってる冒険者さんの一人から取り出されたんだろうね。すごく冷たいもの。
 でもって、館の瓦屋根に登れるように、氷の階段が出来ていくってね……。
 魔力は残ってないんですよね?

「はぁ~」
 長嘆息を一つ、続いて階段を上り、屋根にある――、というか、急遽できた氷のポールに旗を結んだ。

「ああ、負けてしまった~」
 いや、もう、本当に、いい加減にその棒読みやめてください…………。

 ――――。

「ピートさん。貴男って人は最高の人だ!」
 勝利やらせに沸くナイゼルさんが、僕の両肩を掴んで強くゆらしてくる……。脳が、ゆれる……。

「ピートさんは公務員。決して最強じゃない。でも、ナイゼルの言うように最高の人だぜ」
 バロニアさんも僕の頭をなで回してくる。脳が、崩れる…………。
 皆様、コンクエストが終われば即座に宴会コレだよ。
 本当は死んでないんじゃないかって疑いたくなるくらいに、普通に楽しんでるよね……。死の恐怖ってのが忘却に旅立ってる。
 死と蘇りが、形骸化しているな……。

「MVPの発表です――――」
 前線に立てないロッケンジーさん。司会進行で少しでも目立とうとしているのかな? 
 間を作るところは司会として卓抜ですよ。その証拠に、皆さんから視線を向けられて、目立ててます。
 けど、それも一時。視線を受けるロッケンジーさんが僕を凝視している……。
 つられて皆さんも僕を凝視だ……。
 やめてよ。僕は何もしてないよ……。

「初日に続いて、なんと二度目のMVP! ピートさん!」

「「「「イェェェェェェェェェェェェイ!!!!」」」」
 空前絶後のぉぉぉぉぉぉぉ! やらせによるMVPだよ……。
 ――……再び行われる、空を飛んでるかのような胴上げ……。
 本来だったらあの時点で負けだから、ここはお通夜ムードだったはずなのに、やらせの勝利で皆々様、大いに喜んでおります。
 どうしてこうなった……。
 
 ――――。
 
 まあ、いいさ。
 昨晩はなんだかんだで美味しく料理をいただいた。シンプルなものに舌が慣れてきたけど、もうおさらばだ。
 心が軽い。清々しい朝だ。解放されるって最高だ!

「ピートさん、おはようございます」

「おはようございます! ナイゼルさん」

「お元気ですね」
 ええもう。貴方たちと離れられると思うとですね、心だけじゃなく、体も軽いってもんですよ。今なら空を飛べそうな気がしますね。

「お世話になりました」

「はい?」
 帰るんだよ。絶対に帰るからな。戻って来ていいとか言われてないけど、絶対に帰る!
 帰りにクリネア見学でもしてから帰ろうかな。もしかしたらサージャスさんに会える可能性もあるし。
 快活な笑顔で、この荒んだ世界に身を置いた僕を癒やしてもらいたいね。

「え? 帰られるの――――」

「もちろん」
 言い終わるよりも早くに返答してあげた。
 きっと、人生の中でも上位に入るほどの屈託のない笑顔が出来ていると思う。

「ふむ」
 なんですか? 意味深な【ふむ】は、嫌ですよ。

「聞いてませんか?」

「な、なにを?」
 嫌な予感ビンビンだ。声が震えてしまう。

「大公様からの連絡が整備局にあったそうで」
 あん? なんで大公様なんですかね? あの人は、僕に嫌がらせをする事を楽しんでいるのかな。
 局長はそれに対して反論とかしなかったのかな。
 確実にこの流れは、延長コースしかありえないんだけど。
 だって、周りに耳を傾けてみるとさ、皆さんがざわつき始めてきたよ。
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