338 / 604
ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-40
しおりを挟む
「では、参りましょう」
すっと手を出してくるシズクさん。
僕をつれて空を移動するみたいだ。
この手を取ると、僕は海戦イベントに強制参加って事になるのか……。
でも、この手を取らなければ大公様に後から難癖つけられそうだし、取るも取らぬも道は過酷よ……。
――――ええい! ままよ!!
「はぅ」
勢いよく強く握ったのがいけなかったのかな? 可愛い声をお出しになって。
恐怖を振り払うために力んでしまったよ。
はあ……。これだ。これさえ乗り切ればいいんだ。
例え命の軽い場所であろうとも、死なないで終わらせてやる。こんな事を思ったら真っ先に死ぬなんてジンクスは僕には通用しないからな。
シズクさんの側にいてずっと守ってもらわないと。
「握る手が強くなってます……」
頬を紅潮させてくれるのは嬉しくもありますが、これは恐怖を払うために力んでるんです。照れないでいただきたい。
――――。
「こちらがピート様が乗船する旗艦アイスブランドです」
「旗艦。立派ですね。これなら沈む事はなさそうだ」
ワギョウの旅でお世話になった三本横帆からなる快速船に比べると、小型なキャラック船。ずんぐり丸みのある三本マストからなる船だ。
多島海の中を進むにはギリギリの大きさだ。
――……まって……、これって恰好の的なんじゃないの? 小回りを有する場所には不向きだよね。広さのある海路を選択するとなると、限られたところになる。
そこを狙われたらひとたまりもないような……。
「この船。大丈夫ですよね?」
「ええ、不沈艦です」
自信ありげなシズクさん。この方が守ってくれるなら、ダメージは入らないのかもしれない。
それならば安心も出来る。
オールによる人力のガレー船。帆船のキャラベル船が護衛船として任についている。
正直、乗船しているのより、横にいるキャラベル船の方が小回りがききそうでいいんだけど……。
旗艦として派手じゃないといけないのか、船端は金細工の派手なデザイン。
氷竜王さんの旗艦だから、船体の色は青を基調としたものだ。
海と同色だから目立たないようだけど、マストが純白に氷の結晶を模したマーク。遠目からでも旗艦って分かるものだ。
真っ先に狙われること間違いなしの船だ……。
「明日の模擬海戦に向けて、皆の士気も高いです」
普段から高いでしょう。高すぎて空回りだけはしないでもらいたいですね。
――――。
「ふぅ~」
やっぱり、こうじゃないと……。
冒険者サイドに比べたら本当にいいね。足を伸ばせる湯船に浸かれて、味付けがしっかりとされてた食事もいただけた。
半漁人さんが持ってきた、白身魚のパイ包み焼きには複雑な気持ちにもなったけど……。
狙ったかのようにパイも魚のデザインだったし、それを切り分ける時に半漁人さんが【ぎゃぁぁぁぁ】って言った後にどや顔を見せてきたけど、それに対して、どうリアクションをとればよかったのか、未だに正解は見つけ出せてない……。
美味しかったからよしとしよう。
僕の事を気に入ってくれているみたいだから、てっきりシズクさんがお風呂にでも入ってくるという、ドキドキなイベントがあるとか思ってたけど、初心だからなかったな~。
ほっとしたような、残念だったような――――。
満腹で、潮も流せて最高の状態で、ベッドに横になれる。この幸せは最高だ。
船に乗るより、模擬海戦が終わるまでここにずっと入り浸りたい。
明日からの事を考えると、億劫になるけど、柔らかベッドの魔力には勝てない僕…………。
――――あっという間に朝だぜ。
「楽しんでいきましょう♪」
えげつない絶命だったはずのイスキさんが、何事もなかったかのように蘇って、笑顔で模擬海戦を説明。
船上にて、波にゆられながら説明を聞き終える。
船から船への飛翔禁止。
魔王軍サイドが有利になる事から、飛翔同様に海中の移動も禁止。それに伴い、海中からの攻撃も禁止。
船の移動は人力と風のみ。大海蛇のような存在による船の牽引も禁止。
風の魔法などを帆に唱えるのも禁止。
多島海の特性上、島に伏兵を潜ませるのも禁止。
純粋に船での戦いのみ。
これを守れなければ負け。
ルールにはこだわるんだよな~。もっとそれを研鑽していって、命を奪わない方向にならないものかね……。
すっと手を出してくるシズクさん。
僕をつれて空を移動するみたいだ。
この手を取ると、僕は海戦イベントに強制参加って事になるのか……。
でも、この手を取らなければ大公様に後から難癖つけられそうだし、取るも取らぬも道は過酷よ……。
――――ええい! ままよ!!
「はぅ」
勢いよく強く握ったのがいけなかったのかな? 可愛い声をお出しになって。
恐怖を振り払うために力んでしまったよ。
はあ……。これだ。これさえ乗り切ればいいんだ。
例え命の軽い場所であろうとも、死なないで終わらせてやる。こんな事を思ったら真っ先に死ぬなんてジンクスは僕には通用しないからな。
シズクさんの側にいてずっと守ってもらわないと。
「握る手が強くなってます……」
頬を紅潮させてくれるのは嬉しくもありますが、これは恐怖を払うために力んでるんです。照れないでいただきたい。
――――。
「こちらがピート様が乗船する旗艦アイスブランドです」
「旗艦。立派ですね。これなら沈む事はなさそうだ」
ワギョウの旅でお世話になった三本横帆からなる快速船に比べると、小型なキャラック船。ずんぐり丸みのある三本マストからなる船だ。
多島海の中を進むにはギリギリの大きさだ。
――……まって……、これって恰好の的なんじゃないの? 小回りを有する場所には不向きだよね。広さのある海路を選択するとなると、限られたところになる。
そこを狙われたらひとたまりもないような……。
「この船。大丈夫ですよね?」
「ええ、不沈艦です」
自信ありげなシズクさん。この方が守ってくれるなら、ダメージは入らないのかもしれない。
それならば安心も出来る。
オールによる人力のガレー船。帆船のキャラベル船が護衛船として任についている。
正直、乗船しているのより、横にいるキャラベル船の方が小回りがききそうでいいんだけど……。
旗艦として派手じゃないといけないのか、船端は金細工の派手なデザイン。
氷竜王さんの旗艦だから、船体の色は青を基調としたものだ。
海と同色だから目立たないようだけど、マストが純白に氷の結晶を模したマーク。遠目からでも旗艦って分かるものだ。
真っ先に狙われること間違いなしの船だ……。
「明日の模擬海戦に向けて、皆の士気も高いです」
普段から高いでしょう。高すぎて空回りだけはしないでもらいたいですね。
――――。
「ふぅ~」
やっぱり、こうじゃないと……。
冒険者サイドに比べたら本当にいいね。足を伸ばせる湯船に浸かれて、味付けがしっかりとされてた食事もいただけた。
半漁人さんが持ってきた、白身魚のパイ包み焼きには複雑な気持ちにもなったけど……。
狙ったかのようにパイも魚のデザインだったし、それを切り分ける時に半漁人さんが【ぎゃぁぁぁぁ】って言った後にどや顔を見せてきたけど、それに対して、どうリアクションをとればよかったのか、未だに正解は見つけ出せてない……。
美味しかったからよしとしよう。
僕の事を気に入ってくれているみたいだから、てっきりシズクさんがお風呂にでも入ってくるという、ドキドキなイベントがあるとか思ってたけど、初心だからなかったな~。
ほっとしたような、残念だったような――――。
満腹で、潮も流せて最高の状態で、ベッドに横になれる。この幸せは最高だ。
船に乗るより、模擬海戦が終わるまでここにずっと入り浸りたい。
明日からの事を考えると、億劫になるけど、柔らかベッドの魔力には勝てない僕…………。
――――あっという間に朝だぜ。
「楽しんでいきましょう♪」
えげつない絶命だったはずのイスキさんが、何事もなかったかのように蘇って、笑顔で模擬海戦を説明。
船上にて、波にゆられながら説明を聞き終える。
船から船への飛翔禁止。
魔王軍サイドが有利になる事から、飛翔同様に海中の移動も禁止。それに伴い、海中からの攻撃も禁止。
船の移動は人力と風のみ。大海蛇のような存在による船の牽引も禁止。
風の魔法などを帆に唱えるのも禁止。
多島海の特性上、島に伏兵を潜ませるのも禁止。
純粋に船での戦いのみ。
これを守れなければ負け。
ルールにはこだわるんだよな~。もっとそれを研鑽していって、命を奪わない方向にならないものかね……。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる