拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです！

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-52

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「周囲が見えなくなるだけでなく、余裕がないと、簡単に乗せられる」
　偉そうに評価してしまう。

「ですから一軍をまかせることが出来ないのです」
　常にシズクさんの側にいて、侍女的な立ち位置なのにはそういう理由があったんだ。
　てっきり大精霊様だから、特別顧問的ポジションだと思ってた。
　個人の実力はあっても、指揮官としてはまだまだって事か。
　
「ムキになって用兵を行えば、兵に無駄な死傷者が出ますからね」

「流石はピート様です」
　褒められてなんですが、いくら参加しないからって、瀕死の部下を目の前にして動かないってのもなんだかな～。
　せめて、声くらいかけてあげればいいのに。

「死んで学べばいいのです」
　うん、氷竜王は、名の通り、氷の対応だ……。
　
　――――でも、
「死んでも蘇るって考えが根幹にあるから、楽観的な考えに支配されて、成長できないんじゃないでしょうか？」
　本来は痛い思いをしたら、それを今後は避けようとするもんだろうけど、ここの方々は気にもしないでズンズンと覆轍を踏みしだいて行くよね。
　踏みしだきすぎて、覆轍もなくなって、綺麗な道にならしているよね……。
　経験から学ぶという事を、端から視野に入れていかないスタイルだな。
　生死を軽視しているから、精神面が成長しない単純行動の病んでる連中として、思考が構築されていくわけですよ。

「素晴らしい着眼点です。戦いが終わり次第、下の者達に教え説いていきましょう」

「ならば、命大事に！　を、植え付けていきましょう」

「はい」
　返事はいいけど、無理だな……。
　素人の僕が考える事なんてすでに実行して通過してるはずだ。覆轍を舗装して、同じ所を踏んで通過してのこの状況なんだからね……。
　正直、ここの方々は手遅れなんだよな……。

「おあぁぁぁぁぁ！」
　会話を交わしている間も、イスキさんの視野はどんどん狭くなっているようで、背後から初歩魔法を受け続けているのにやはり対応しない。
　見るに堪えない背中の傷。青い肌だから、よけいに赤い筋肉がむき出しなのが目立っている。

「ナイゼル……」
　弱っていく体でなおも狙う。

「では――――同じ死を辿るがいい」
　膝を突いた状態で、体を引きずってナイゼルさんに接近していく。
　勝負ありだな……。
　ナイゼルさんがクレイモアを掲げる。陽射しを受けて、剣身が鈍く輝く。

「次も楽しもう」
「フフフ――――」
「なにかおかしいか？」
「貴男……勝利を確信すると、無駄に剣を高く掲げる……動きがオーバーになるのよ…………」
　次の瞬間、ナイゼルさんの足下から、水の槍がいくつも突き出て、ナイゼルさんを串刺しに……。

「ごふっ！」
　口から勢いよく吐血。
　
　イスキさんの発言は、正鵠を射ているのかもしれない。だから、イスキさんの水の槍が直撃。

　ナイゼルさんはとどめとなると、大きなモーションになるのだろう。
　プールさんには、ここぞで大味になるとか言ってたけど、そのプールさんを突き刺した時は、僕は光で視野がきかなかったから、刺した時を視界に収める事は出来なかったけど、遠目から抱き合っているように見えた。
　大きくモーションを行った後、勢いよく突進したから、そう見えたんだと思う。

　イスキさんはナイゼルさんの癖を熟知していると考えられる。
　――――当然といえば当然か。
　イスキさんは追い詰められると、周囲が見えなくなる事が欠点であり、それを冒険者に知られているのなら。ナイゼルさんの攻め方、癖を魔王軍が研究しているのも当然のこと。
　そこをつかれて、イスキさんではなく、ナイゼルさんが絶命する事になった。
　相手の癖や性格は研究しても、自分を見つめる事はしないのかな？　だから覆轍を踏むんだろうけど……。

「中心は討ち取った。次は………………」

「水の大精霊ウンディーネ。イスキ・ナミル・パルルスの御首級みしるし。マリアン・ルルーチェがとりました」
　ドーナさんに続いて、イスキさんの生首を持って掲げる十三歳……。
　
　諸手に幹部二名の首を持ってる十三歳……。
　
　虹彩が消え失せてる瞳にて、屈託のない笑顔を周囲に見せてる十三歳……。
　
　賞賛する周囲の目上たち……。
　なんておぞましい世界なのだろう…………。
　
　――――狂ってやがる！

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