拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-60

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 ――――久しぶりにグライフ君に乗り、空をゆったり移動。
 自由を体現するかのように、両拳を高らかに天へと掲げて大声を出し続ける。
 うるさかったようで、グライフ君が僕を猛禽の目で睨んでくる。
 いやいや、グライフ君。僕はね、君が必死になって行く事を拒んだヴィン海域に行ったんだよ。二ヶ月ちょっと。分かるかい? あそこで二ヶ月ちょっと。
 幻獣の君でも二ヶ月も滞在できないだろう? だって、君は拒んだんだから。僕は君よりも精神が強いんだよ。
 
 意思が通じたのか、渋々と、睨んでいた視線をゆっくりと正面に向けた。ちょっと前までは僕を小馬鹿にしていた存在が、視線を逸らしましたよ。へへ――――、なんだよ僕の目が怖いのかい? 
 だとすると、ヴィン海域あそこで精神が汚染されたのかもしれないな。
 鏡を見るの嫌だな……。
 まあいい、何とかなるはずだ。王都でロールさんと楽しくおしゃべりでもすれば、浄化していくはずだ。
 
 地続きの異世界であるヴィン海域。もう二度とこんな所には足を踏み入れたくない。
 もっと健全な戦いを行う方々の世界に僕は帰るんだ。
 
 ちなみに、グライフ君を預かってくれた方には、ナイゼルさん達から謝礼が支払われていたようだ。
 こういうところは律儀でいい方々なのにな……。どうして、あんな感じになったのやら。
 
 ――――もう、考えるのはよそう。僕は王都で頑張ればいいんだ。
 八億ギルダーを蹴ったんだ。しゃかりきに頑張って上を目指して、収入をアップさせなければ、未だに赤貧なんだ――――から……?

「――――ああ!? しまった」

「どうしたボーイ?」
 グライフ君の頭に乗っかるシュパーブ君が振り向く。

「ハンカチ、シルク製の高いヤツ。シズクさんに貸してたままだった……」
 ヴィン海域での苛烈な毎日に擦り切れ削れていく常識を維持するのに精一杯で、完全に忘れてた……。

「いいじゃないか。きっと大切に使用してくださる」

「高かったんだよ……」

「くよくよするな。また新しいのを買え。それとも、すでに女の涙を拭ったハンカチで、別の女の涙を拭うつもりかボーイ。それは男として恰好の悪い事だ」
 正鵠を射るね~。
 男前な渋い声で射てくるね~。
 目だけ閉じて聞いたら、とても説得力があるんだけど。語ってるのが、愛玩もふもふのぬいぐるみみたいなのだからね。
 しかし、ハードボイルドな存在だな。形はこれでも、百六十四年の歳月によって、今の存在が構築されてるんだろうな。
 


 ――――。

「戻りました!」

「おお!? おお! 無事だったね」
 なぜに驚く、局長よ? 足はついてますよ。
 出向先があれだったからって僕は恨んでませんよ。弱腰で大公様の発言にずっと従ってたんでしょ? きっと。
 まあ、貴男は許してやりますよ。でも、大公は殴る! 魔王軍の手先だからしばく!!
 
 ちなみにシュパーブ君は外で待機。仕事場にペット同伴は駄目だからね。ペットじゃないけど。
 
 しかし、この新人公務員が、ヴィン海域から凱旋の如き帰任をはたしたというに、なぜに誰もいないのか?
 ロールさんは? 僕の癒やしは?

「あの、整備長は?」
 まずはおっさんの所在から聞く。ロールさんを口に出すと、下心まる出しでがっついているように思われるからね。

「ニーズィー君は外回りだよ。今日はそのまま直帰だね」

「サボってるだけですよ」

「そんな馬鹿な。整備長がサボタージュなんて」
 ピュアな心を持ってますね、局長。

「ジャイロスパイク君は案内をしていてね。今日はニーズィー君同様に直帰だよ」
 まだ、ロールさんのこと聞いてないのに。やっぱり顔に出ているのかな?
 ぷ~ん。僕が帰ってきたというのにこの状況。納得がいかないよ。
 僕の凱旋。
 疲労に支配された僕という設定で、ロールさんのおっぱいに抱きつくという、王都からヴィン海域に行く時に画策していた計画が、水泡と帰する事になってしまう……。
 他の方々も作業に出てるみたいで、局には僕と局長だけ……。
 なんだよ……。二ヶ月ちょっと離れていたのに、皆たんぱくだな。

「今日は大きな問題も起こっていないし、帰って休みなさい。疲れているようだし」
 疲れてはいません。その演技をしたかったんです。

「おや?」
 局長の右食指に乳白色だけど、綺麗に輝く、技工に秀でた彫刻の入った指輪。

「ん? これかね。いいものだろう。骨董店で買ってね。気に入って、ここ最近つけているんだ」

「珍しいですね」

「指輪くらいならファッションとして誰も文句いわんだろう。本来なら左の無名指なんだろけどね。とっくに適齢期は過ぎ去っていてね」
 未婚だったっけ? 仕事一辺倒なんだろうね。語末は哀愁のある台詞でしたよ。

「ウィザースプーン君はいい関係がいるから問題ないだろう」
 いないよ。なに言ってんですか……。さらっと心にダメージを与えてきたよ。
 僕に対して好感を持ってくださる方々はいますけどね。
 でもな~。僕が帰ってきたのにな~。誰もいないんだもんな~。
 実際の好感度は低いのかな…………。
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