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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-61
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――――局長のお言葉に甘えて、素直に帰った。
――。
ケーシーさんだけだったよ。おかえりって言ってくれたのは……。
夕餉のおかずを一品サービスしてくれた。煮込まれた牛のほほ肉はほろほろと口でほどけて美味しかった。
――――。
「ボーイ。何をそんなに拗ねている」
「拗ねてないよ。寂しいんだよ」
シュパーブ君は本当にここに住むつもり何だな……。
プライベートな空間で一人になれないって辛いな。特に、今の僕にとっては。
いじけて泣くことも出来やしない……。
皆、冷たいな~。
「もしかしたらサプライズを考えているのかもしれないぞ」
だといいけどさ。それもなくて、そのまま仕事に馴染んでいくとなると、寂しい限りだよ。
まあ、でも、明日は休日だ。もしかしたらって期待もあるよね。
とりあえず大公様は、僕に羊皮紙でもパピルスでもいいから、賞賛と謝罪の言葉を連ねて、金の箔押しも加えた書簡でも送ってもらいたいもんだよ。
もしそれが現実になったとしても、殴るけどね。
は~、想像していたのと違う出向からの帰任だったな……。
寂しい…………。
お久しぶりの硬いベッドだけど、冒険者サイドの寝床や、甲板での雑魚寝に比べれば天国だ。
空虚な心を少しでも癒やしておくれ――――……。
* *
孤独な心に支配されながらも、ヴィン海域からの解放と、長距離の空の移動で、しっかりと疲れていたピートは眠りにつく。
シングルベッドで寝返りを行いつつも、まどろみから本格的な睡眠へと入っていく。
半刻も経つと、眠りは深いものになっていた。
闇に支配された室内は、どこに何があるか把握できないくらいの暗闇である。
そんな中、明かりがない空間にもかかわらず、赤い光が二つ室内に現出する。
――――赤い光の正体は、シュパーブの瞳。深紅のルビーのように美しい瞳が、光を発していた。
ルビーのような瞳が凝視しているのはピート。
彼を捕捉し、息を殺すかのように、シュパーブは沈黙に徹して、瞬きをする事なくピートをただ見る。
――――見続ける。
――――。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ――――」
遠く離れた地にて、恍惚、悦楽にひたる声を出す存在……。
ヴィン海域にある館の一室よりその声は漏れている。
戦いが終わり、波の音は心地よく眠りへといざない、疲れ果てた者達が寝静まっている未明の世界。
声の主は、館の主でもあるシズクである。
執務で使用するであろうマホガニーの机に体を預けながら、机に置かれた魔石鏡を眺めていた。
闇が支配しているにもかかわらず、不思議と部屋の隅々まで鮮明に映し出された一室。
ベッドとそこで眠っている男性を、シズクは幸せそうな表情で眺めている。
ベッドで眠る男性は――――、ピートである。
「ピート様……なんて愛らしい寝姿。シュパーブ、もう少し寄りなさい」
うっとりとしたシズクの瞳。しかし、口角は三日月のようにつり上がっている。
精神が病んでいるかのような笑みである……。
ピートが返してもらうのを忘れていたハンカチを、引き出しから取り出すと、
「すぅぅぅぅぅぅ――――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――」
――……口に当ててから、深い呼吸を繰り返す……。
「ピート様の匂い……」
恍惚な表情の目元が更に緩み、口角は更に上がり、精神汚染の進行が甚だしく、とても第三者には見せられないものとなっている。
そこには凛とした美しさも愛らしさもない。歪んだ精神の女性が一人…………。
「これから毎日、愛らしい寝顔を拝見させていただきます。愛しの殿方。私が見守ってあげますからね……」
抑揚がない独白。
恐怖である……。
歪んだ愛情が見せる狂気の笑み。
恐怖である…………。
「これが私の愛の形――――」
恐怖である………………。
――。
ケーシーさんだけだったよ。おかえりって言ってくれたのは……。
夕餉のおかずを一品サービスしてくれた。煮込まれた牛のほほ肉はほろほろと口でほどけて美味しかった。
――――。
「ボーイ。何をそんなに拗ねている」
「拗ねてないよ。寂しいんだよ」
シュパーブ君は本当にここに住むつもり何だな……。
プライベートな空間で一人になれないって辛いな。特に、今の僕にとっては。
いじけて泣くことも出来やしない……。
皆、冷たいな~。
「もしかしたらサプライズを考えているのかもしれないぞ」
だといいけどさ。それもなくて、そのまま仕事に馴染んでいくとなると、寂しい限りだよ。
まあ、でも、明日は休日だ。もしかしたらって期待もあるよね。
とりあえず大公様は、僕に羊皮紙でもパピルスでもいいから、賞賛と謝罪の言葉を連ねて、金の箔押しも加えた書簡でも送ってもらいたいもんだよ。
もしそれが現実になったとしても、殴るけどね。
は~、想像していたのと違う出向からの帰任だったな……。
寂しい…………。
お久しぶりの硬いベッドだけど、冒険者サイドの寝床や、甲板での雑魚寝に比べれば天国だ。
空虚な心を少しでも癒やしておくれ――――……。
* *
孤独な心に支配されながらも、ヴィン海域からの解放と、長距離の空の移動で、しっかりと疲れていたピートは眠りにつく。
シングルベッドで寝返りを行いつつも、まどろみから本格的な睡眠へと入っていく。
半刻も経つと、眠りは深いものになっていた。
闇に支配された室内は、どこに何があるか把握できないくらいの暗闇である。
そんな中、明かりがない空間にもかかわらず、赤い光が二つ室内に現出する。
――――赤い光の正体は、シュパーブの瞳。深紅のルビーのように美しい瞳が、光を発していた。
ルビーのような瞳が凝視しているのはピート。
彼を捕捉し、息を殺すかのように、シュパーブは沈黙に徹して、瞬きをする事なくピートをただ見る。
――――見続ける。
――――。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ――――」
遠く離れた地にて、恍惚、悦楽にひたる声を出す存在……。
ヴィン海域にある館の一室よりその声は漏れている。
戦いが終わり、波の音は心地よく眠りへといざない、疲れ果てた者達が寝静まっている未明の世界。
声の主は、館の主でもあるシズクである。
執務で使用するであろうマホガニーの机に体を預けながら、机に置かれた魔石鏡を眺めていた。
闇が支配しているにもかかわらず、不思議と部屋の隅々まで鮮明に映し出された一室。
ベッドとそこで眠っている男性を、シズクは幸せそうな表情で眺めている。
ベッドで眠る男性は――――、ピートである。
「ピート様……なんて愛らしい寝姿。シュパーブ、もう少し寄りなさい」
うっとりとしたシズクの瞳。しかし、口角は三日月のようにつり上がっている。
精神が病んでいるかのような笑みである……。
ピートが返してもらうのを忘れていたハンカチを、引き出しから取り出すと、
「すぅぅぅぅぅぅ――――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――」
――……口に当ててから、深い呼吸を繰り返す……。
「ピート様の匂い……」
恍惚な表情の目元が更に緩み、口角は更に上がり、精神汚染の進行が甚だしく、とても第三者には見せられないものとなっている。
そこには凛とした美しさも愛らしさもない。歪んだ精神の女性が一人…………。
「これから毎日、愛らしい寝顔を拝見させていただきます。愛しの殿方。私が見守ってあげますからね……」
抑揚がない独白。
恐怖である……。
歪んだ愛情が見せる狂気の笑み。
恐怖である…………。
「これが私の愛の形――――」
恐怖である………………。
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