拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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変転

PHASE-18

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「さあ皆。綺麗に一列横隊を作ろうね~」
 子供が通う学舎の教師みたいなのりだな。
 ヘイターの指示に従い。亡者たちが並び始める。
 指示に従う時の動きは、思いの外、機敏だった。

「突撃万歳」
 の一言で、横隊から俊敏な動きでこっちに向かってくる。
 走っているというより、滑空にちかい移動だ。
 先ほどの指示に対する動きといい、現れた時のふらついた足からは、想像を悪い意味で裏切ってくる。

「ああぁぁあぁ」
 うめきつつ口を大きく開けば、ガコンと間接音がした。
 亡者の顎が外れている。更に広がる口。スイカくらいなら簡単に飲み込めそうな開きっぷりだ。
 自然と銃を向ける僕。
 でも、恐怖を持っていないのか、考えもなくとにかく真っ直ぐに突っ込んでくる。

「無駄だよ。亡者に物理攻撃は効果がない。古都にいる幽霊兵レヴァナントに似たタイプだからね」
 銃を構える僕に、手を横に出して静止するゲイアードさん。

「だったら、魔弾があります」

「それで、ヴァルバディッシュ氏を守ってあげなさい。ケーシー殿」

「ああ」
 前に立つ二人が呼応して、迫ってくる亡者たちに突撃。
 今にも肉弾戦をしそうな勢いだ。物理攻撃は通用しないって言ってたのに、行動が無茶苦茶に見えてしまう。

炎加護フラムウェア
 ケーシーさん!? それはサージャスさんも使用してた魔法剣じゃないですか。
 高等技術という事で、魔法剣が使用出来る人は少ないって話だけど、僕が住んでいる多層型共同住宅インスラの一階でお食事処を経営しているおじさんが、二本のナイフに炎を揺らめかせた魔法剣を使用している。
 
 へっ――――、レインちゃんが魔王さんになったし、こんなんで驚いてちゃ駄目だよな。

「ぁぁぁあああ!」

「嫌な声だな」
 炎を纏った二本のナイフを素早く数回動かせば、炎は瞬く間に数体の亡者を飲み込んでいき、亡者たちは霧散して消え去った。

「なんて酷いんだ! 元は人間なのに。血も涙もないおじさまだ」
「黙れ。お前に使役されるなんて恥辱から解放してやり、魂があるべき所へと帰ることこそ幸福だ」
「そんなのエゴだよ兄さん! やつがれと一緒にいたいって思ってるのもいるかもしれないじゃないか。――――たぶん」
「本当に――――、お前の語り口は、私を苛立たせるよ。ルネア」
「本名じゃないですかやだ~。じゃあ、ゲイアード・マヒューズなんて偽名を名乗らないでよね。ノイエ・イルマン・ユーティライネン」
 こんな状況下で、ゲイアードさんの本当の名をフルネームで知ることが出来た。
 ミドルネームがある。貴族とか特権階級の人だったのか。
 名前を変えて公務員になるなんて。

「軽い口だな」
「いやいや、兄さんから言ってきたんだよ」
「そうだな。命を軽んじるから、口も軽いと思ってしまった」
「こうやって、魂を無理矢理に傀儡にすることが死霊魔術ネクロマンシーの美。その美を使用出来るのが、死霊魔術師ネクロマンサーの特権だよ」
「喋るなと言っている。気持ちの悪い」
「可愛いおとう――――とっと」
 おお! 火球ファイヤーボールの大きなこと。大人の体を余裕で飲み込めるくらいの大きさじゃないか。
 初期魔法でこの威力。ゲイアードさんはやっぱり凄い人だ。

「喋るなと言ったはずだ」

「怖いよ~。兄様がオイラをいじめるよ~」
 柏手かしわでを打って、諸手を足下に置くと、またも六芒星の魔法陣が現出する。
 いくつも現出させて維持しているから、ヘイターの魔力も桁違いなんだろうな。
 またも亡者が這い出してきた。二体いる。

「――……ノイ……エ…………」
 喋った!? 今度のは喋ったぞ。しかも、ゲイアードさんの名前を口にしたような……。

「さあ、親父殿、母様。弟をいじめる兄を叱ってよ~」

「は!? 両親!!」

「なるほど、ゲスなやつじゃの」
 僕の行天の声に、魔王さんが不愉快さをまる出しにして反応する。
 死霊魔術師ネクロマンサーって、魂ならなんでも使役できるのか? 親でも……。
 
 カルタさんの魔剣士は世界でただ一人の職種だけど。死霊魔術師ネクロマンサーも希有な職種だ。

 歴史上、死霊魔術師ネクロマンサーが活躍したなんて、目にも耳にもしたことがない。
 ただ、書物には最上位の魔術師という簡素な内容しか記されていない。
 弟がそうなら、ゲイアードさんも死霊魔術師ネクロマンサーってことなのか?
 
 死者を召喚するみたいだけど、ゲイアードさんも出来るのだろうか。
 出来るとしても、ヘイターのような死霊魔術師ネクロマンサーではないというのは、言動と、何より性格で理解できる。
 
 自分の両親まで使役するなんて……。魔王さんが言うように、ヘイターはゲスだ。
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