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変転
PHASE-33
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「よかったよ。無事だったんだね。部屋まで行ったけどいなかったから……」
ああ、なんて優しい。自分の避難も大事なのに。
東門への経路の方がロールさんの所からは近いのに、人の流れに逆らって僕の部屋まで来てくれるとは、心配される喜び。
「この通り無事です」
「そのお腹と、血は……」
傷の原因とヘルムの事を告げると、流石にショックが大きかったようだ。足下がふらついたけど、何とか堪えたといった感じだ。
怪しんではいたけど、まさかここまで大それた事をするためだったとは思いもよらなかったんだろう。
それ以上に、僕の怪我の事で大層心配してくた。
「まったく……無茶をして……」
「いや~。まさか命を奪われそうになるなんて……」
お願いだから、泣かないでくれますか。なんかすごっく罪悪感なんですけど……。
「ふぃ!?」
穴が空いて、肌が露出したお腹部分を優しく撫でられてしまい、変な声を上げてしまった。
上げてしまったが――――、悪くない。悪くないぞ。
「鼻の穴」
呆れたようにゲイアードさんが僕の開いた鼻の穴を指摘してきた。面目ねえ。美人様にタッチされるのって嬉しいんですよ。
「でも、さっきの大きな光が兵仗だったなんて」
あ、おさわりタイム終了なんですね……。
二射目もしっかりと防いでくれたけども、流石に耐えるのがしんどそうだ。
心なしか、結界の魔法陣が薄くなっているように見える。
「また光だ!」
と、大音声。聞いた声だと思ったら、整備長だった。
その声に、全体から悲鳴が上がる。あのおっさんは、避難させてるのか、混乱させてるのか……。
――――三射目の光の帯が、とうとう結界を破り、王城まで到達した。
「ああ……」
ロールさんがまるで事切れるかのような儚い声を漏らす。
白亜の城は、禍々しい赤い帯の直撃で爆発四散。
――――濛々と上がる粉塵が晴れれば、直撃反対側の壁部分だけがかろうじて残った状態になっていた。
たったの一撃で、王都を見守ってきた城が容易く消え去ってしまった……。
「王……」
城を見て一歩前へと足を出すケーシーさん。
「どうするんです?」
「救いに行かねば」
そう言って駆け出そうとした時、
「大丈夫じゃ、逸るでない」
心配無用とばかりに、小さい食指が広場の一角を指差す。
魔王さんの威光でも溢れているのか、魔王さんが指差す方向では、人垣が不思議と割れていく。
おっさんの大音声で生まれた悲鳴も、人垣が割れるのと同時に、静まりかえっていく。
ケーシーさんは大きな安堵の息を零した。
続けて、
「ご無事で」
柔和な笑みを向けて、白銀の胸当てに、深紅の羅紗の陣羽織と――、大陸とワギョウのデザインが織り交ざったような出で立ちの人物を前にして片膝を折る。
ゲイアードさんもそれに続いた。
魔王さんはカーテシーでの挨拶を軽く行う。
「ボーイ」
うん――――。
現れた人物に、我知り顔になる僕とシュパーブ君。
なるほどね。ケーシーさんこと、ニコ・グッドスピードと、先王様は懇意の間柄。
現王様とだって関係を持っているのは必然だよな。
「ビルギット様、お目覚めになったようで」
うむ。
カーテシーに対して、今度は羅紗の陣羽織の人物が、魔王さんの前で膝を折る。
「ピート君も無事で何より」
「ありがとうございます!」
やおら立ち上がって、僕の方に体を向けてくると、穏やかな声で話しかけてきてくれた。
穏やかであっても、こっちは背筋がピンとなってしまう。
ケーシーさんのお店で話しかけられるのとは訳が違う。
ド緊張だよ。
ああ、なんて優しい。自分の避難も大事なのに。
東門への経路の方がロールさんの所からは近いのに、人の流れに逆らって僕の部屋まで来てくれるとは、心配される喜び。
「この通り無事です」
「そのお腹と、血は……」
傷の原因とヘルムの事を告げると、流石にショックが大きかったようだ。足下がふらついたけど、何とか堪えたといった感じだ。
怪しんではいたけど、まさかここまで大それた事をするためだったとは思いもよらなかったんだろう。
それ以上に、僕の怪我の事で大層心配してくた。
「まったく……無茶をして……」
「いや~。まさか命を奪われそうになるなんて……」
お願いだから、泣かないでくれますか。なんかすごっく罪悪感なんですけど……。
「ふぃ!?」
穴が空いて、肌が露出したお腹部分を優しく撫でられてしまい、変な声を上げてしまった。
上げてしまったが――――、悪くない。悪くないぞ。
「鼻の穴」
呆れたようにゲイアードさんが僕の開いた鼻の穴を指摘してきた。面目ねえ。美人様にタッチされるのって嬉しいんですよ。
「でも、さっきの大きな光が兵仗だったなんて」
あ、おさわりタイム終了なんですね……。
二射目もしっかりと防いでくれたけども、流石に耐えるのがしんどそうだ。
心なしか、結界の魔法陣が薄くなっているように見える。
「また光だ!」
と、大音声。聞いた声だと思ったら、整備長だった。
その声に、全体から悲鳴が上がる。あのおっさんは、避難させてるのか、混乱させてるのか……。
――――三射目の光の帯が、とうとう結界を破り、王城まで到達した。
「ああ……」
ロールさんがまるで事切れるかのような儚い声を漏らす。
白亜の城は、禍々しい赤い帯の直撃で爆発四散。
――――濛々と上がる粉塵が晴れれば、直撃反対側の壁部分だけがかろうじて残った状態になっていた。
たったの一撃で、王都を見守ってきた城が容易く消え去ってしまった……。
「王……」
城を見て一歩前へと足を出すケーシーさん。
「どうするんです?」
「救いに行かねば」
そう言って駆け出そうとした時、
「大丈夫じゃ、逸るでない」
心配無用とばかりに、小さい食指が広場の一角を指差す。
魔王さんの威光でも溢れているのか、魔王さんが指差す方向では、人垣が不思議と割れていく。
おっさんの大音声で生まれた悲鳴も、人垣が割れるのと同時に、静まりかえっていく。
ケーシーさんは大きな安堵の息を零した。
続けて、
「ご無事で」
柔和な笑みを向けて、白銀の胸当てに、深紅の羅紗の陣羽織と――、大陸とワギョウのデザインが織り交ざったような出で立ちの人物を前にして片膝を折る。
ゲイアードさんもそれに続いた。
魔王さんはカーテシーでの挨拶を軽く行う。
「ボーイ」
うん――――。
現れた人物に、我知り顔になる僕とシュパーブ君。
なるほどね。ケーシーさんこと、ニコ・グッドスピードと、先王様は懇意の間柄。
現王様とだって関係を持っているのは必然だよな。
「ビルギット様、お目覚めになったようで」
うむ。
カーテシーに対して、今度は羅紗の陣羽織の人物が、魔王さんの前で膝を折る。
「ピート君も無事で何より」
「ありがとうございます!」
やおら立ち上がって、僕の方に体を向けてくると、穏やかな声で話しかけてきてくれた。
穏やかであっても、こっちは背筋がピンとなってしまう。
ケーシーさんのお店で話しかけられるのとは訳が違う。
ド緊張だよ。
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