拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
424 / 604
変転

PHASE-35

しおりを挟む
「こ、これからは考えを改めるよ。へへへ――――」
 王様との会話を終えると、真っ先に僕の所に来た。
 僕といる方が、ここでは居心地がいいのだろう。
 周囲は強い人ばかり、少しでも顔見知りに媚びへつらうって感じだな。こうやって世渡りしてきたと思えば、才能ではあるよね。

「お嬢さんも、以前は……」

「近づくんじゃねえ」
 すかさずシュパーブ君が威圧だ。ロールさんに語りかけるのは許さないといったところ。
 あの時の事は知らないからな。勘で近づけてはいけないと思ったんだろう。
 語りかけられたロールさんも無視を決め込んだ。
 大抵のことなら怒っていても口をきいてくれるロールさん。でも、ノムロのおっさんは受け付けないようだ。あたりまえだけど。
 作り笑いでペコペコとしながら、ロールさんから距離をとっていき、つかず離れずな距離を維持して僕の側に立つ。
 気持ち悪いので、ぶっ飛ばしたいが、おっさんの相手をするのは勿体ない。
 
 ――――あらためて見ると、皆さんのがんばりで、避難の進捗は悪いものではない。
 
 ロールさんが言うには、避難誘導をしていると、直ぐに王様と忠臣の方々が王城より馳せ参じて、先頭に立って避難指示を始めたそうだ。
 この時ロールさんはまだ王様とはもちろん分かっておらず、素早い行動の将軍だと感嘆したそうだ。
 王様と分かってからは、更に好感が上がったそうだ。
 危険地帯から脱出せずに民を第一に優先だからね。好感は天井知らずだろう。

「炎竜王と連絡が取れなくなった事に不安を覚え、密偵を各地に送り、子爵の企ての端緒を掴むまでいたったそうだが、確証を得られなくて強行に出られなかった。だから今回、爆発が起こった時点で、大きな行動が起こったと推測し、王は率先して民の避難指示に動いたそうだ」
 と、ケーシーさんが王様との会話を終えて僕たちの所にやってくる。

「王様、やりますね」

「企てを阻止できなかった事を悔やんでいたがな」
 十分でしょ。どのみち追い込めば、暴発してただろうし、あの子爵、馬鹿っぽいし。
 だからヘルムに利用されてるんだろうけど。もしかしたら、ヘルムが密偵の方々の視線を、尻尾が出やすそうな子爵の方に向けさせてたのかもな。
 自分たちに目が向けられないように。ばれたら切り捨てるってところか。

「金髪ボーイもだが、ここの民は素晴らしいな」
 と、シュパーブ君。
 まあ、落ち着いてますよ。焦燥している方もいるけども、大きな混乱を見せないのは、王様に対する信頼から来ているのだと思う。
 いままでが平和だったのも、国がちゃんと機能していた証拠だし、それに応えようと各局の方々に、兵士の皆さんも、日々、頑張っていらっしゃる。
 
 それに――――、
「あれはバッカスのホルテン君たちじゃないか」
 荷馬車で樽を運んで来たのか、エードなんかをグラスなんかに注いで皆さんに配っている。
 軽食もあるようだ。
 食事を与える事で、収拾に一役買っているんだな。
 皆、自分が出来る事をしっかりとやってくれている。

 ――――うん。

「整備局、集合!」
 僕の呼びかけに、側にいるロールさんが真っ先に僕の前に立つと、皆さんも続く。
 一人、気怠そうにダラダラとした足取りの整備長。
 一番最後に来たくせに、
「なんでお前が仕切ってんだよ」
 と、誰よりも早く口を開いて悪態。殴ってやろうか!

「それより、その服の穴は?」
 気になったのか、四年先輩であるコランさんが問うてくる。
 これはいいふりだった。
 ――――僕は怪我の事に、西門の爆発、前回の王城庭園襲撃犯の中心人物が局長であると伝えた。
 流石に内容が内容だから、先ほどのロールさん同様にショックが大きいようだ。
 頭を抱えてふさぎ込んでしまう人もいる。

「こいつは……」
 紫煙を燻らせ始める整備長に皆の目が向けられる。

「この問題が終わった後の、世間様の俺たち整備局員に向けてくる視線がキツイものになりそうだな……。何とかしねえと」
 そこかよ……。保身を考える状況かよ。
 いかにもおっさんらしい考えではあるけども、皆さん嘆息で返していた。頼りないおっさんである。
 世間様の視線がキツイものにならないように、ここで僕たちが頑張ればいいんだよ。そういう考えには至らないのだろうか。

「ま、当面はこの俺が整備長として、全体の指揮を――――」

「ロールさんが暫定で局長をやればいいと思う人!」
 おっさんの台詞を断って、賛成を求めれば、おっさん以外は満場一致。

「いやいやいやいや! おもしろい冗談だな。俺、整備長。どうぞ宜しく。順当に考えたら俺だろ。ロールちゃんはまだ二年目だぞ。俺じゃなくても勤続年数の長いのは納得いくのか?」

「いや~。勤続年数の長さじゃないですよ。実力と人徳ですよ。だからマジョリティーの賛成をロールさんは得たんですね~」

「俺だってあるだろう」
 ハッ! なにがあるんですかね? あるのは無駄な中性脂肪くらいでしょ?

「お前、むかつくな!」
 額に手を当ててキョロキョロと探す仕草をしてあげたら、怒ってますよ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...