拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-04

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「子爵様!」
 兵長が心配そうに近づき、片膝を突く。

「何をした貴様!」

「へ~。こんなのに対しても忠誠心があるんだね~」
 返す言葉は軽い調子での侮蔑。
 ヘイターの発言に苛立ちを覚え、切っ先を突き立ててやろうという心に支配されていた時、
「う、あぁ……」
 弱々しくも反応があるマリド。
 兵長が覗き込もうとした時、
「ああぁぁぁ」

「ああ!?」
 驚き尻餅をつく兵長。
 それを見ていたヘイターは大いに笑う。

「どっちも、ああって言ってるから、どっちがどっちか分からないよ」
 と、馬鹿にしながら二人を指差す。
 驚く兵長の目に入ったのは、子爵だった――――、ものであった。
 皮膚は夜のように黒く、目は白目と黒目に境がない、どす黒い血のような色となり、焦点があっていないのか、うめき声を上げながら、見回している。

「子爵様?」
 兵長の呼びかけに、ピクリと体を反応させると、ゆっくりと顔を兵長へと向ける。

「まあ、これから本当に、どっちがどっちか分からなくなるけどね」
 低い声でヘイターが告げれば、それを合図にしたかのように、子爵だったものが、うめき声を大きくして、兵長へと飛びかかる。

「なんだ!」
 我が身可愛さが勝ったようで、自分の主であるにもかかわらず、兵長は剣を突き立てた。
 剣は胸から入り、剣身の半分ほどが背中から突き出ていた。
 急に襲われた条件反射で刺してしまった兵長の呼吸は荒い。
 襲われた事に対処する興奮からか、はたまた、主を刺してしまった事への取り返しの付かない失態からなのかは分からない。
 それが分かるのは兵長だけであるが、
「くきゃぁぁぁあぁぁっぁあぁ」
 気が違った動物のような鳴き声を子爵だったものが発する。
 刺された状態であるのに、それを気にも留めずに、目の前の兵長を目指し接近するだけの単純な行動。

「来るな!」
 最早、主従の関係など関係ないとばかりに剣を更に深く突き刺し、助かりたいがために命を奪おうとする。

「来るなとか言って、自分から刺して近づいてるとかウケる~♪」
 哄笑するヘイター。
 懸命に振り払おうとするも、兵長へと接近する黒い存在は、黒く染まった諸手にて兵長に触れる。

「――はあぁぁぁ!?」
 触れられた箇所が黒く染まり、広がっていく。
 子爵と同じ症状である。
 
 ――――触れられた兵長もまたうずくまり、程なくすれば、彼もまた全身が黒に染まる。

「皆、仲良く黒に染まろう♪」
 ポンと柏手を一つ。仮面の下から、嬉々とした声が発せられる。

 戦闘態勢を整え、陣形を敷いていた私兵たち。
 先頭の方では子爵と兵長に何が起こったか分かっておらず、眼前から迫る敵達に対して構えていた。
 ――――が、次第に後方が騒がしくなる。
 声には恐怖が織り交ざり、背後からの声に目を向ければ、先ほどまで同じ釜の飯を食していた者が変わり果てた姿となり、自分に迫ってくる姿。

「なんだぁ?」
 シラクサ達と行動を共にしていた冒険者たちの足が緩やかになり、眺望。
 眼前でいきなり同士討ちが始まったのが理由である。

「ねえ、なんで向こうはあんな状況?」

「分からない」
 フィットの問いかけに首を傾げる事しか出来ないエルン。

「ゲイアードさん」
 と、知恵を求めるエルンが問いかける。
 死霊魔術師ネクロマンサーならば何か分かると思ったんだろう。

「すまない。あれは理解できない」
 ヘイターが新術を生み出した……?
 疑問符を浮かべつつ様子を見る。
 今まで目にした事のない死霊魔術ネクロマンシー
 そもそもあれが死霊魔術ネクロマンシーなのかすら不明な状況である。
 しかし、術に囚われた者たちの姿は、亡者のような姿であった。
 分からないからこそ、ここは様子を見るべきだと周囲に伝え、先頭に合流しようとしている冒険者と兵達が、これ以上前に来ないように制止する。
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