拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
507 / 604
レコンキスタ

PHASE-20

しおりを挟む
「しかし、火龍の装備なのに、氷の使い手なんだな」
 シュパーブ君もそこは気になるようだ。
 本人は、氷の使い手だから、火龍も倒せるんだ。と、言っていたような記憶がある。

「こっちが有利で申し訳ないが、敗者の再戦だからな。そっちはハンデ背負ってもいいだろ?」

「構わないよ。それだけ貴男が、自分は弱いと認識してるのだから」
 本当に、こういう時は刺々しい発言が多い。
 ダイアンの渋面。
 それと同時に双剣を交差させてサージャスさんに迫る。

聖闘衣セイクレッド
 青いチャクラを身に纏い、足の自由を奪う氷をチャクラで破壊すれば、体勢を整える事をせず、そのままダイアンへと正面から挑む。
 交差する二振りの剣の中心をピンポイントに穂先で突く。

「なんだその馬鹿高い技量は!」
 点を突かれて双剣の構えが崩れる。
 崩した次ぎに、穂先を地面に刺せば、そこを軸にして、柄を諸手で掴んだまま、蹴撃をダイアンへと見舞う。

「いって~」
 軽い言い様。
 ダメージは無いようだ。
 瞬時にして、鎧の上に氷の膜を作り出していた。

「蹴りへのお返しだ」
 サージャスさんが足を地面につけた途端、氷柱が地面から現れ、その中に閉じ込められた。

「前回は足だけを固めたが、今回の氷地走フロストマインはガチ中のガチだからな。氷の芸術が出来上がったぜ。美少女勇者のだから、変態たちが喜んで買うかもな」

「――――ボクを買うのは高いよ。違反金が未だに一億ギルダーを超えてるから」

「そりゃすげえ…………」
 他愛なく封じられた氷を破壊して出て来るサージャスさんに驚くよりも、違反金額の多さに驚いていた。

「まったくなっちゃいない。固めたら、間髪入れずに砕く。このコンボが鉄板だろう」

「ヴィン海域の流儀なんかいらない。見てる人のトラウマになるから」

「そうか?」
 そうだよ。大体シュパーブ君の内容の通りになったら、サージャスさんが粉々になるだろうが!

「まったく、魔法も使わないでこれだからな~。大した勇者様だよ!」
 語末が力強くなり、同時に剣を振れば、氷塊が出現して放たれる。
 人の頭ほどある物が、轟音と共に飛ぶ。当たればその部分の骨が砕けそうだ。

「せい!」
 願望破壊の乙女ラーズグリーズが氷塊を砕く。綺麗な氷の粒子がキラキラと舞い散る。

「そらそら!」
 お構いなしにダイアンが氷塊を放ち続ければ、受けて立つとばかりに全てを粉々にする。
 
 ――……寒いんだけど。

 気温が一気に下がった。
 周囲で戦う冒険者の方々も、時折ブルリと震えている。
 よく見れば、サージャスさんの黒い鎧に霜が付いてる。
 綺麗で長い睫毛も凍ってきてるし、吐く息も白い。

「もっと寒くしてやる」

「ボクは北国の生まれでもないから、これ以上はお断りしたいかな」
 魔法が使えれば、炎熱系なんかで対応するんだろうけども、出来ない以上、辛いよね。

「サージャス!」
 慌てた声で近づいてくるドレークさん。
 慌てるのも無理はない。
 サージャスさんがダイアンに集中すれば、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデの動きが止められなくなる。
 再び振るわれる拳が地面に触れれば、大きな揺れと衝撃で、土埃が舞い、人も舞う。

「くっ!」
 眼界の脅威に対処しようとすれば、
「行かせねえよ!」
 と、ダイアンの追撃。
 双剣が冷気を纏い、薄氷がパラパラと剣から剥がれていく。

氷結女王ヴィルジナル
 唱えると、一帯の冷気が具現化するように、無数の氷塊となって現れる。
 先ほどまでの氷塊と違い、刺々しい、ウニのような氷塊。
 サージャスさんを完全に包囲してしまった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...