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レコンキスタ
PHASE-53
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「まあ、はい……敵なので……」
渋面になりつつも、満面のバロニアに返せば、
「じゃあ、このラインから先が敵と――――」
大剣で線を地面に引き、境界線を決める。
「よし! たまには人間を相手にするのもいいだろう。にわかのぬるいのばっかりだけどな」
登場からすぐ、話を交わすという事もなく殺害する存在に、及び腰になっている相手を侮蔑するように睨みつつ、ナイゼルが語る。
「でも最高だったぜ! 普段は人間じゃなく半漁人ばっかりだからな。基本プールはナイゼルにだけ斬られるし。なんだろうな、この人間特有の柔らかさってのは。鍛えていても、筋肉の質は魔王軍の面々とは違うんだよな~。この感触よ~。スンだな。音にするならスンって、肉に入るんだよ俺の剣が。気持ちのいい感触だな人間の肉ってのは。やみつきになりそうだ」
口角をつり上げ、絶頂時のような悦に浸った表情。
語末に進むにつれ、闇に心が支配されているかのような暗く不気味な声音に、ラゴットどころか、その光景を目にしている王軍と、近くにいる不死王軍の心胆すら凍えさせるバロニアの発言。
それを全く気にせずに、楽しみだと返すその他のヴィン海域の面々は、辛抱たまらんとばかりに、得物を手にして虹彩のない瞳を輝かせる。
「他ならぬ我らが同胞にして、英傑であるピートさんからのお願いだ。皆殺しにするぞ。皆殺しだ。皆殺し以外あり得ないし、考えられないし、考えたくもない。いいな。帰るまでが殺しだぞ」
これから、ピクニックにでも行くかのような楽しげな語調のナイゼル。
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
続いて集団が返事をすれば、獲物を早く殺したいという衝動に駆られたガチ勢が一斉に走り出す。
虹彩のない瞳。市場で売れ残った魚のような目。それをキラキラと輝かせ笑いながら……。
相変わらずな返事だと、ピートは〝なんて?〟と、つっこんでいた。
――。
「イィィィィィハァァァァァァァァ」
嬉々として、瞬く間に凄惨な世界に変えていくヴィン海域の面々。
ラゴット勢の豊饒な鮮血によって、大地が深紅に染め上げられていく。
それでもなお、色が薄いとばかりに、方々で鮮血を足していく。
「俺のことも覚えておけ! ロッケンジー・マナルガルだ。そして死ね」
おおよそ勇者とは思えない名乗りを上げつつ、普段は買い出ししか与えてもらえない鬱憤を込めるかのように剣を振り下ろせば、瞬く間に数人の首や胴が別れていった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ」
阿鼻叫喚。地獄絵図。
ラゴットは突如として現れ、無慈悲で残酷に命を奪う者たちに心底に恐怖した。
先ほどまで優性だったのに、この数百規模の化け物集団が、万を超える数を相手に嬉々として得物を振るっていく。
「な、なんなんだよ!? あんた達!」
尻餅をつき、仲間たちの死体に囲まれた一人がバロニアへと問う。
「あ? なんなんだよって、どうでもいいだろう。俺たちは、ただお前等を殺すために馳せ参じたんだよ。なあ」
パーティーの勇者である、十三歳のマリアンと、ソードダンサーのザンデへと問えば、
赤髪のショートカットの少女は、元々の髪の色なのか返り血なのか分からない状況で、
「うん♪」
と、楽しげに返し、逃げる数人を屠れば。
「敵はただ殺すだけだよ」
ピンク色のフィッシュボーンをゆらして、操る複数のロングナイフで標的をめった刺しにした後、刻みつつバロニアに返す。
「ふざけんな! なんだその理由!」
「理由なんていいんだよ。殺しに理由なんかいらねえよ。しっかし――――」
尻餅をついた男に大剣を向けつつ、
「いいな~やっぱり。人間の肉の感覚。今度から人間通しでのやり合いってのもヴィン海域に導入するか」
歪んだバロニアの発言と笑みが、ラゴットの男の最後に見た光景だった。
「ピートさんが我々に頼んだんだ。お前達が悪いんだろう。なあ、悪いんだろう」
クレイモアを横薙ぎにすれば、それだけで十数人が容易く両断され、全身を黒焦げにして命を落とし、バリバリと、クレイモアの軌跡に、雷とその残響だけが続いていた。
氷竜王軍も負けじと、ピートも何度も見たことがある、半漁人たちによる、三叉矛にて串刺しにし、亡骸を天高く掲げる行為。
甲高い声で笑いながら返り血を浴びて、興奮と悦に浸っていた。
「無茶苦茶じゃねえか……」
とても見ていられないと、ニーズィーはまともに立っていられないのか、腰を抜かしてへたり込んでいる。
ロールは側にいるピートにしがみついて、地獄絵図に震えていた。
「ピート君……」
「なんです?」
「!?」
恐怖から救ってもらう気持ちで名を呼べば、映像に映る光景をケロッとした表情で見ているピートの姿に驚き、目を見開いてしまうロール。
周りでは激戦を経験している大公であるラゼンも、目を伏せているというのに、ピートは光景に対して、痛々しそうな表情にはなっても、嫌悪とまでは至っていなかった。
「やはり戦いはこうじゃないとな~」
傍らにいるシュパーブの発言に、ロールの血の気は引く。
深紅の愛らしい瞳が、不気味に見えてしまった。
だが、これが本来の彼の姿なのである。
渋面になりつつも、満面のバロニアに返せば、
「じゃあ、このラインから先が敵と――――」
大剣で線を地面に引き、境界線を決める。
「よし! たまには人間を相手にするのもいいだろう。にわかのぬるいのばっかりだけどな」
登場からすぐ、話を交わすという事もなく殺害する存在に、及び腰になっている相手を侮蔑するように睨みつつ、ナイゼルが語る。
「でも最高だったぜ! 普段は人間じゃなく半漁人ばっかりだからな。基本プールはナイゼルにだけ斬られるし。なんだろうな、この人間特有の柔らかさってのは。鍛えていても、筋肉の質は魔王軍の面々とは違うんだよな~。この感触よ~。スンだな。音にするならスンって、肉に入るんだよ俺の剣が。気持ちのいい感触だな人間の肉ってのは。やみつきになりそうだ」
口角をつり上げ、絶頂時のような悦に浸った表情。
語末に進むにつれ、闇に心が支配されているかのような暗く不気味な声音に、ラゴットどころか、その光景を目にしている王軍と、近くにいる不死王軍の心胆すら凍えさせるバロニアの発言。
それを全く気にせずに、楽しみだと返すその他のヴィン海域の面々は、辛抱たまらんとばかりに、得物を手にして虹彩のない瞳を輝かせる。
「他ならぬ我らが同胞にして、英傑であるピートさんからのお願いだ。皆殺しにするぞ。皆殺しだ。皆殺し以外あり得ないし、考えられないし、考えたくもない。いいな。帰るまでが殺しだぞ」
これから、ピクニックにでも行くかのような楽しげな語調のナイゼル。
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
続いて集団が返事をすれば、獲物を早く殺したいという衝動に駆られたガチ勢が一斉に走り出す。
虹彩のない瞳。市場で売れ残った魚のような目。それをキラキラと輝かせ笑いながら……。
相変わらずな返事だと、ピートは〝なんて?〟と、つっこんでいた。
――。
「イィィィィィハァァァァァァァァ」
嬉々として、瞬く間に凄惨な世界に変えていくヴィン海域の面々。
ラゴット勢の豊饒な鮮血によって、大地が深紅に染め上げられていく。
それでもなお、色が薄いとばかりに、方々で鮮血を足していく。
「俺のことも覚えておけ! ロッケンジー・マナルガルだ。そして死ね」
おおよそ勇者とは思えない名乗りを上げつつ、普段は買い出ししか与えてもらえない鬱憤を込めるかのように剣を振り下ろせば、瞬く間に数人の首や胴が別れていった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ」
阿鼻叫喚。地獄絵図。
ラゴットは突如として現れ、無慈悲で残酷に命を奪う者たちに心底に恐怖した。
先ほどまで優性だったのに、この数百規模の化け物集団が、万を超える数を相手に嬉々として得物を振るっていく。
「な、なんなんだよ!? あんた達!」
尻餅をつき、仲間たちの死体に囲まれた一人がバロニアへと問う。
「あ? なんなんだよって、どうでもいいだろう。俺たちは、ただお前等を殺すために馳せ参じたんだよ。なあ」
パーティーの勇者である、十三歳のマリアンと、ソードダンサーのザンデへと問えば、
赤髪のショートカットの少女は、元々の髪の色なのか返り血なのか分からない状況で、
「うん♪」
と、楽しげに返し、逃げる数人を屠れば。
「敵はただ殺すだけだよ」
ピンク色のフィッシュボーンをゆらして、操る複数のロングナイフで標的をめった刺しにした後、刻みつつバロニアに返す。
「ふざけんな! なんだその理由!」
「理由なんていいんだよ。殺しに理由なんかいらねえよ。しっかし――――」
尻餅をついた男に大剣を向けつつ、
「いいな~やっぱり。人間の肉の感覚。今度から人間通しでのやり合いってのもヴィン海域に導入するか」
歪んだバロニアの発言と笑みが、ラゴットの男の最後に見た光景だった。
「ピートさんが我々に頼んだんだ。お前達が悪いんだろう。なあ、悪いんだろう」
クレイモアを横薙ぎにすれば、それだけで十数人が容易く両断され、全身を黒焦げにして命を落とし、バリバリと、クレイモアの軌跡に、雷とその残響だけが続いていた。
氷竜王軍も負けじと、ピートも何度も見たことがある、半漁人たちによる、三叉矛にて串刺しにし、亡骸を天高く掲げる行為。
甲高い声で笑いながら返り血を浴びて、興奮と悦に浸っていた。
「無茶苦茶じゃねえか……」
とても見ていられないと、ニーズィーはまともに立っていられないのか、腰を抜かしてへたり込んでいる。
ロールは側にいるピートにしがみついて、地獄絵図に震えていた。
「ピート君……」
「なんです?」
「!?」
恐怖から救ってもらう気持ちで名を呼べば、映像に映る光景をケロッとした表情で見ているピートの姿に驚き、目を見開いてしまうロール。
周りでは激戦を経験している大公であるラゼンも、目を伏せているというのに、ピートは光景に対して、痛々しそうな表情にはなっても、嫌悪とまでは至っていなかった。
「やはり戦いはこうじゃないとな~」
傍らにいるシュパーブの発言に、ロールの血の気は引く。
深紅の愛らしい瞳が、不気味に見えてしまった。
だが、これが本来の彼の姿なのである。
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