拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-52

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 映像を見せられている側は、なんだこの乱痴気騒ぎの集団は? と、思っていることだろう。
 氷竜王軍も、主が捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデと戦っているのに、狂気な笑みで武器を振り上げている。
 急に映し出されたそれは正に地獄。
 この戦場よりも生々しく、血煙が大気を支配していた。

「あの~」
 久しぶりに目にしたそれは、王都に戻り、生活に慣れてきたピートにとってはやはりいいものではなかった。
 やはり関わりたくないと思ったが、そうも言っていられないので、今度は聞こえるように、
「あの!」
 腹に力をいれて、間延びさせずに呼びかけた。

『ん? あれ!? ピートさん!』
 煌びやかな鎧に、獅子の金刺繍が施された深紅のマント。各属性のタリスマンが埋め込まれたクレイモアを手にした、長い金色の髪。
 ナイゼル・エースである。
 髪、鎧を返り血に染めて笑顔で応対する姿は、目にする人々の心胆を寒からしめるには十分であった。
 虹彩の無い目が、恐怖に拍車をかけているようだ。

『どうしました』
 言いつつ、半漁人サハギンを唐竹割りにて屠るが、腹部で止まってしまうクレイモア。
 死体となった半漁人サハギンに、押し倒すような蹴りを行い、クレイモアを引き抜けば、肩に担い、命を奪っているのに、笑顔に清々しさを加えて問うてくる。
 
 ピートは迷っていた。
 ナイゼルの笑みを見て、躊躇する心が芽生える。
 だが、ここの戦況を鑑みるに、背に腹は代えられないと、
「以前、言ってましたよね。困った事があったら協力すると」
 このピートの発言を耳にしたラゴット側から、ざわつきが生まれる。
 彼が何をしようとしているのか理解できたからだ。
 地獄の門という、ブラフと思われたピートの言葉が、今になって重くのしかかってきた。
 先ほどまでは利器を振るっていたのに、今は生唾を飲み、動向を窺っている。

『ええ、もちろんですよ。MVPのピートさんのお願いですからね。それに俺たちは仲間じゃないですか』
 全くもって迷惑この上ない仲間発言だと思いつつも、ピートは続ける。

「大至急こちらに来てもらえませんか。助けてください」
 真っ直ぐに虹彩の無い目を見れば、ヴィン海域方向からの剣戟音や魔法による爆発音が静かになっていく。

『バロニア、戦いは一時中止だ。向こうの幹部たちにも伝えろ。死んだ奴らは今すぐ生き返らせるんだ』

『いいところだったんだけどな。しかたないか。ピートさんの頼みじゃ』
 大剣を地面に刺し、相対する氷竜王軍に制止を求め始めるバロニア。

『そちらにはシズク様もおられますし』
 代表してイスキが氷竜王軍の戦闘停止を行い、ナイゼル達と合流すれば、ピートに典雅な一礼を行い、進軍を約束する。

『ヤー』

『何よ、気安いわよ』

『そう言わずに。頼んだ』
 言われれば、頬を赤くしてそっぽ向く。
 ビーフシチューのサワークリームがどうたらというくだらない理由で殺し合っているが、元々? 恋人ということもあって、仕方ないと口にすれば、プールが行動する。
 やり取りを見ていたピートは、かゆくもないが体を掻いていた。半眼で。

『よっし、ナイゼル。こっちも氷竜王軍も蘇生したぞ』
 バロニアが笑んで言う。相変わらずリセットのきく人生だと、嘆息するが、頼れるとピートが笑む。

『じゃあ、行くわよ』

『おっしゃゃゃゃゃゃゃっ!!!!』
 誰よりも気合いが入るのは、ロッケンジー・マナルガル。
 普通に活躍していれば、大陸に名が轟く実力者。
 しかし、ヴィン海域では未だに使いっ走り。
 普段のそれを鬱憤しようと考えているようで、誰よりも先頭に立って、自慢の剣を抜いている。
 到着と同時に斬るといった意識が映像から伝わってくる。

『それ!』
 快活良くプールが諸手を広げれば――――、
 連動して王都に巨大な黒い門が現れる。
 遠目から見ないと、門とは思えない程の巨大さで、壁にしか見えない。ラゴット勢が展開している同種の魔法とは天壌の差であった。
 これだけで、今からやって来る者たちの実力が容易に把握できる。
 漆黒の壁がゆっくりと左右に開かれていく。

『さすがは――――』
「――――ヤー・プール」
 映像から聞こえていたバロニアの声が、語末に進めば直に聞こえる。
 彼とロッケンジーを先頭にして、ゾロゾロと統率もなく冒険者と、氷竜王軍の面々がゆったりとした歩みで出て来る。

「な、なんだよ」
 急に目の前に現れた、虹彩の無い人間たちを目にして、ラゴット所属の一人が語りかける。

「なあ、これって敵なのかナイゼル?」

「よく分からんな~。まあ、あれだ。襲ってくるのが敵。魔王軍と一緒にいるのが味方なんじゃないか」

「じゃあ、これ敵――――だろ?」
 言いつつ、確認を取ることもせずに、斬りかかる素振りも見せないままに、肩に担っていた大剣を無造作に振り下ろせば、簡単に体は右と左で別れる。
 体内より溢れる臓物。
 意にも返さず、バロニアはその臓物と鮮血の上を歩み、ビチャリと生々しい音を周囲の耳に届けながら歩む。
 その光景に両軍総毛立つ。
 映像に映し出されているものだから、後陣にいるロールやニーズィー。魔道開発局の者たち、素人の面々は卒倒しそうになっていた。
 一人を除いて――――。

「ピートさーん」
 大気を揺るがす大音声のバロニアは、
「こいつってよかったんですよね?」
 と、殺めた後に確認を行ってくる……。
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