拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-68

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 ラゴットからの増援もなく、前線では地獄の使者を思わせるヴィン海域の者たちが、躊躇なく大魔法と自慢の得物で殺戮を行使し、その姿と、倒れていく凄惨な姿となる仲間を目にし、心が折れ、戦闘を継続する力をラゴット勢は失っていた。
 
 逆にヘイターを倒した事を知った王軍陣営は、対象の一つを攻略したと、シラクサに魔王が大きく息を漏らす。
 近衛たちは喜ぶが、シラクサにラゼン達、中心に立つ者たちは、弟を失ったゲイアードの事を考えると、大声で喜ぶ事は出来なかった。


「まだだぞ! まだ我々には捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデがある!」
 かろうじて戦う気力を有している者たちは巨神に縋り、自我を保っていた。
 だが、大多数は厭戦ムードであり、戦いに恐怖する者ばかりであった。
 利によって集まった者が多い証拠がここで露呈する。

「早いところ逃げるんだよ!」

「無理だろ!」
 お互いが罵声を浴びせる始末。
 逃げたくても、巨大な壁に囲まれた状況。
 空間魔法を使おうとすれば、プールによってその空間を支配される。

「俺たちが生き残るには戦い抜くしかない」
 気骨ある者が説いても、
「生き残る!? あんな化け物たち相手にどう生き残るんだよ!」

「たかが数百の戦力だ。何とかなる」

「なるかよ! 質の高さで王軍にも負けている。頼りの兵力も、亡者がいなくなった事と、増援の途切れた事で逆転。それに、数百規模だろうが、この戦場で一番相手にしたくねえ連中だよ!」
 叫び狂うように発せば、それを離れた位置で耳にする隻眼の男が、
「だよな~。あれは反則の集団だぜ……」
「だよね。あれほどの力を見せつけられれば、如何にボクたちが狭い世界で生きているかを理解するよ」
「な! お宅でも勝てないと思うほどだろ」
「躊躇もなければ、実力も違う。特に、あの中心にいるクレイモアにタリスマンを埋め込んでる人。強い。周囲の人たちもボクなんかより遙かに強い」
 強さから伝わる恐怖に、サージャスが冷や汗を流せば、大きく首肯で返すのは双剣の兵仗、狂乱の乙女ゲルを手にするダイアン。

「まあ、ここも十分に怖いけどな」
 周囲には魔王軍の幹部。
 フサルクを倒せば、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデに邪神と共の対応する。
 フサルクが復活すればそれに対応。この繰り返し。
 超絶な力を有した周囲に嘆息を漏らすダイアン。

「怖いとか、その割には萎縮せずに戦うよね」

「気合いだよ気合い。それで誤魔化してんの。じゃねえと、生きた心地がしねえ」
 狂乱の乙女ゲルを振りかざせば、サージャスは距離を取る。
 願望破壊の乙女ラーズグリーズの間合いよりも離れた位置で双剣が振られれば、それだけでサージャスの感覚が狂ってしまう。
 見舞われて学習し、そこからは間合いを取る事を優先している。

「いいのかそんなんで、このまま時間が過ぎれば、こっちが有利だぞ。何たって、その槍がこっちの主力に対する唯一の切り札なんだろう? 邪神たちだって長くは持たないぜ」
 言われれば、サージャスは動きを止めて歯を食いしばる。
 正鵠を射ている発言。
 自分が頼りないから、周囲に迷惑をかけている。
 もしこの願望破壊の乙女ラーズグリーズを途中から参戦してきたヴィン海域の強者に託せば、自分以上に力を発揮してくれるはずである。
 そういう考えを抱きながらも、目の前の敵に屈したくはない。
 魔王が自分に託してくれた事も考えれば、自分が達成しなければならないと、勇者としての矜持もある。

「隙あり」
 考えていれば、それを見逃してやるほどダイアンの力量は低くない。
 槍のギリギリの間合いで双剣を振る。

「――――くっ……」
 遅れて、サージャスの視界がグルグルと回る。

「よっしゃ!」
 動きが止まるサージャス。
 剣の間合いとなり、ここが勝機と、気迫を口にすれば、手にした狂乱の乙女ゲルにて乗算記号を書く。

「――ふう、危なかった……」

「躱すか。紙一重だったな――――」
 ぶれる視界の中で、鎧に触れた剣の感覚だけで咄嗟に後方に避ければ、かろうじて双剣が肉体に触れる事だけは回避できた。
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