拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-80

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「堅物公務員が」
 ケーシーの発言に、ここでようやくゲイアードが声を出して笑う。

「そうよお堅すぎ。どうせ、これが終われば英雄だよ。英雄から違反金は取れないわよ。世間がうるさいから。公務員や政治屋は世間の声には惰弱でしょ」

「惰弱って……」
 場を更に明るくしようと、リューディアもケーシーに味方してゲイアードを茶化す。

「で、違令管理課の公務員様よ、行くか?」

「どうでしょう。炎竜王殿の魔法が全く通用していません。我々が行っても邪魔になるだけでしょう」

「だな……」
 圧倒的な存在たちが、圧倒的な存在に対して攻略を見いだせていないところで、彼女たちより遙かに脆弱な自分たちに、あの場に居場所はない。
 現状はただ見守るだけであった。

「ゲイアードさ~ん」
 前線だというのに、緊張もせずに素人が大音声で駆け寄ってくる姿には、胆力は自分たち以上なんじゃないだろうかと思ってならないケーシーとゲイアード。

「――――これを」
 クリスタルを手渡せば、琥珀色の瞳に力が入る。

「これは凄い」

「ゲイアードさんに渡せばいいみたいな事を小生意気な魔王さんが言ってました」
 全体をゆっくりと見渡すゲイアードとリューディア。
 その横で、
「お前は凄いな。王がひれ伏す存在を小生意気とか言えるんだからな。グリグリもするし」

「ごめんなさいケーシーさん。先ほどもやりました」

「うん……。娘なんだよ。体は……」
 頼むから痛めつけないでくれと、些か涙目のケーシー。魔王が我が儘だから仕方ないものの、やはり娘が痛がる姿は子煩悩には耐えられないようであった。

「この中に伝説の勇者であるパルティナがいるんですよね?」
「だろうね。このクリスタルにはとても清らかな魂が眠っている」
「では、お願いします」
「あ、うん。唐突に頼んでくるね。ピート君」
「こういう状況なんで、いつまでも寝ていられては困ります」
「はっきりと言える胆力も備わったようで」
 胆力もあれば、戦いを間近で多く経験している。剣でも習わせたら、そこそこの冒険者になれるんじゃないだろうかと、達人二人はピートに可能性を見出す。

「では――――」
 声の調子を整えるように、咳払いを一つ。
 流石のゲイアードも伝説の勇者を呼び出すという大役に緊張のご様子。

「水晶に眠りし英霊よ、ノイエ・イルマン・ユーティライネンが願う。長き眠りより現世へと目覚める事を熱誠にて求める」
 清き心の死霊魔術師ネクロマンサーによって願いが込められれば、応えるようにクリスタルが強く輝き出す。
 青い光は天にも届くように真っ直ぐと伸び、クリスタルはゲイアードの手より離れ、宙に漂えば、周囲に魔法陣を展開していく。
 円形から四角、六角となり、クリスタルの八角錐に合わせたように、魔法陣も八角へと変われば、高速で回転を始める。
 
 魔法陣の中央部分より霧散が始まり、霧散した粒子は魔法陣の前に集約していく。
 徐々に人の形を成していき――――、
「願いはしっかりと届いた。清らかな願いを込められる者でよかった」
 完全なる人の姿となれば、まずは安堵の言葉を漏らした。
 悪しき者に操られる事だけは避けたいという事から、戦女神にすら魂の場所を告げずに、神殿にて密かに眠っていたほどである。

「私の言葉に応えてくれて感謝します。勇者パルティナ」
 深く頭を下げるゲイアード。
 つられてリューディア、共に行動しているマルケルと騎士団もそれに続く。

「私と同じような立場の方々も多いようで」
 霊体の者たちに典雅な一礼を受ければ、それだけでゲイアードが悪しき存在ではないと完全に信用したのか、ここで頭を下げるパルティナ。

「ふえ~」
 礼を交わし合う傍らでは、現れた伝説の勇者が美しい女性と知るや、惚けた声を出して見とれるピート。
 藍色の長い髪に同色の瞳。
 軽装な出で立ちで、体の線に沿った鎧皮の鎧から、たわわに実ったものをお持ちだと、鼻の下が伸びる。
 前線で素人がこの胆力。漢である。
 ゲイアードと違い、清き心ではないが……。
 
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