~voice~

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No.39

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悪魔はニヤリと笑いながら私に手を差し出すと
「お前をお迎えに来ました。魔界からきたNo.39だ。よろしく。」と言った。
呆気にとられた私はうまく言葉が出ず、私達の間に沈黙が流れた。
丁寧だか乱暴だかわからないような言葉遣いに、片耳だけの大きなピアス。髪は黒髪だけど、一部分だけが赤く染められている。
「おい!なんか言えよ!」
沈黙に耐えかねた悪魔はそう言った。
「チャラ男だ……。」
思わず出た声に、悪魔は、ん?と怪訝そうな顔をしている。
私はすぐに取りつくろうように「カッコイイって意味ですよ!!」
しーんとまた私達の間に沈黙が流れる。
さっきまで自殺しようとしていた私は未練たらたらに、まるで遊園地にバッタ売りされているぬいぐるみのように笑っていた。
「そうか。そんなこと初めて言われたな。カッコイイってすごく美男子ってことだよな!」と悪魔は満面の笑みである。
私は呆然としてしまう。こんなことで上機嫌になるなんて案外チョロいのかもしれない。くしゃっと顔を歪めて笑う姿は私と同じ高校生ぐらいに見えた。
「俺のことはチャラ男って呼んでいいぞ(ニコッ)  お前だけ特別だ!!」
いや、違う。チョロいのではない。こいつは相当馬鹿なのだ。
さっきまでの深刻さを忘れるように、クスッと一瞬笑ってしまった。

「それでは本題だ。お前の命を今日頂く。」一瞬にしてチャラ男の顔が元に戻り、さっきよりも冷酷に見えた。

つづく
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