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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~

顔も名前も同じだが

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 オレが盛大に叫んだことで、その場の誰もが驚き、ビクッと体が跳ねる。

 偶然に作ってしまった隙。クウガは見逃さなかった。
 腰を落としたかと思えば力強く地を蹴り、魔獣たちが集まっている所に飛び込む。

 そして剣をひと振り――キャウンッ、と犬のような鳴き声を上げながら、魔獣たちが次々と切られて地に伏していく。

 オレはクウガの戦いぶりに目を奪われ、立ち尽くす。
 素早く動いてもブレない体幹、熱くなり過ぎず冷静に周りを見ている目、甘さを微塵も感じさせない凛々しい顔、無駄のない剣技……オレより高い身長。

 ちくしょう! 前はオレと変わらない背丈だったのに! しかも戦い方が洗練されていて、オレの理想がクウガの顔して服着て動いていやがる。

 これがもしクウガじゃなかったら、速攻で「弟子にして下さい!」って頼み込むのに。
 なぜクウガ? どうして神様はオレに理想を授けてくれなかった? 不公平だろマッチョ神!

 軽く半泣き状態になっていると、魔獣たちを蹴散らしてしまったクウガが心配そうな顔して近づいてきた。

「ケガはないか? 一番負担がかかっていたと思うんだが……緊張の糸が切れて泣きそうになっているんだな。安心してくれ、もう大丈夫だ」

 あー、前世で散々見てきたクウガの心配性だ。あと人のこと勝手に決め込みやがるのも同じだ。前と違うのは背丈と、髪が長くなって後ろで縛ってるってところぐらいか。

 思わず顔を見上げて凝視していると、無骨な手がオレの目元まで伸びて涙を拭ってきた。

「や、やめろ……っ!」

 慌ててオレはクウガの手を叩いて睨みつける。

「クウガ、お前、なんでこっちに来た? なんのためにオレが異世界に来たと思ってんだよ!?」

「……? 何を言って――」

「異世界転生してまで切れない腐れ縁ってなんだよ! 魂レベルでストーカーするな! 何をやりたいんだよ、お前はいったい――」

「君とは初対面なのだが……」

 ……え?
 クウガは前世のこと、覚えてない?

 オレは何度か目を瞬かせてから、心の中でグッと拳を握った。

(よしっ! 覚えていないなら、さっさと立ち去ってもらえばこの縁は終わりってことだな!)

 こっちに来てまでクウガと一緒だなんて勘弁して欲しい。
 オレはエルフの里で楽しく暮らすから、クウガはオレに構わず自由にしてくれ。

 頬を叩いて鋭くなった目つきを戻すと、オレはにっこりと愛想笑いを浮かべた。

「これは失礼しました。私の古い知人に似ておりまして……里を救って頂き、ありがとうございます」

「訳あってこの里に立ち寄らせてもらったが、助けが間に合って本当に良かった」

 フッ、とクウガが優しく微笑む。
 なんかこそばゆいなあ……と思っていると、オレたちの間にアグードが割り込んできた。

「クウガ様、里長がお呼びです。どうか一緒にお越し下さい」

「あ、ああ、分かった」

 短く頷いてアグードに答えた後、クウガはオレと目を合わせた。

「君の名は?」

「……ルカ、だ」

「ルカ、君がいなければ里の被害はもっと大きかっただろう。いい戦いぶりだった」

 小さく手を振りながらそう言い残し、クウガはアグードに連れられて里長の家に向かっていく。

 その背を見つめながら、オレは心の底から願う。
 どうか早く用事を終わらせて立ち去ってくれ、と――。
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