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二話 初めての戦
戦闘開始
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周辺の山々の中で、なだらかながら高さのある山の中ほどで俺と十数名の兵が身を潜める。
兵士たちの中で最も視力の良い者が身を乗り出し、平野の様子を探る。
俺の目でもある程度は状況が分かる――本隊を中央に置き、左右に小隊を展開し、回り込まれることを警戒しているのが見て取れた。
この陣形を崩すために、俺の身代わりとなった英正が率いる本隊を左に向くように戦況を動かすと華候焔は言っていた。
直接領主を討とうと視界が狭まり、本隊が背を向け出したらそれが攻め時。
俺が素早く山を下り、敵の本隊へ切り込み、大将を討ち取って勝利を目指す。
可能な限り被害は最小に抑えながら、確実に勝利する。
一番の難所は、俺が大将と直接対決して倒すこと。
技を出せた俺を華候焔が信じて、こうして別動隊で動いて討つよう言われたのだ。無様な戦いはできない。
次第に緊張し、背中に背負っていた竹砕棍を抜いて弄っていると、
「……領主様、本体が動きました」
見張りの者の声に俺はハッと息を引く。
いよいよ始まった、初めての戦が……。
すぐにでも飛び出したくなる衝動に従いたくなるが、息を殺して好機を待つ。
――時間の感覚が長く感じてしまう。
まだ数分しか経っていないはずなのに……。
俺は深呼吸し、少しでも普段の調子を保とうとする。
柔道の試合と同じ緊張感を持つようにすれば、より戦いやすくなる。
しかも相手は東郷じゃない。どれだけ手を打っても相手にされないような手強さはないはずだ。
脳裏に醒めた目で俺を見下ろしてきた東郷が過ぎる。
難攻不落の強者――この戦いを切り抜けることができれば、俺は東郷の目に熱を宿すことができるのだろうか?
早く戦いたい。俺の道を切り開きたい――。
どれだけ自分を抑えようとしても、前のめりになってしまう。
そうして見えた眼下の景色は、遠目からで分かるほど先頭同士が交じり、競り合いを始めていた。
オォォォ――ッ、という戦の声が聞こえてくる。
そして声は少しずつ聞こえてくる位置を変えて、自陣の位置と状態を教えてくれる。
――隙が見えた。
俺は手綱をしっかりと握り、馬の首を軽く叩いた。
「さあ行くぞ……よろしく頼む」
言葉は分かっていないだろうに、栗毛の馬は理解したと言わんかりブルル……と、いななく。
あぶみに足をかけたまま馬の腹を軽く蹴れば、カサ、と馬が歩き出す。
そして怯むことなく坂を下り、勢いよく山肌を走り抜けていく。
兵士たちの中で最も視力の良い者が身を乗り出し、平野の様子を探る。
俺の目でもある程度は状況が分かる――本隊を中央に置き、左右に小隊を展開し、回り込まれることを警戒しているのが見て取れた。
この陣形を崩すために、俺の身代わりとなった英正が率いる本隊を左に向くように戦況を動かすと華候焔は言っていた。
直接領主を討とうと視界が狭まり、本隊が背を向け出したらそれが攻め時。
俺が素早く山を下り、敵の本隊へ切り込み、大将を討ち取って勝利を目指す。
可能な限り被害は最小に抑えながら、確実に勝利する。
一番の難所は、俺が大将と直接対決して倒すこと。
技を出せた俺を華候焔が信じて、こうして別動隊で動いて討つよう言われたのだ。無様な戦いはできない。
次第に緊張し、背中に背負っていた竹砕棍を抜いて弄っていると、
「……領主様、本体が動きました」
見張りの者の声に俺はハッと息を引く。
いよいよ始まった、初めての戦が……。
すぐにでも飛び出したくなる衝動に従いたくなるが、息を殺して好機を待つ。
――時間の感覚が長く感じてしまう。
まだ数分しか経っていないはずなのに……。
俺は深呼吸し、少しでも普段の調子を保とうとする。
柔道の試合と同じ緊張感を持つようにすれば、より戦いやすくなる。
しかも相手は東郷じゃない。どれだけ手を打っても相手にされないような手強さはないはずだ。
脳裏に醒めた目で俺を見下ろしてきた東郷が過ぎる。
難攻不落の強者――この戦いを切り抜けることができれば、俺は東郷の目に熱を宿すことができるのだろうか?
早く戦いたい。俺の道を切り開きたい――。
どれだけ自分を抑えようとしても、前のめりになってしまう。
そうして見えた眼下の景色は、遠目からで分かるほど先頭同士が交じり、競り合いを始めていた。
オォォォ――ッ、という戦の声が聞こえてくる。
そして声は少しずつ聞こえてくる位置を変えて、自陣の位置と状態を教えてくれる。
――隙が見えた。
俺は手綱をしっかりと握り、馬の首を軽く叩いた。
「さあ行くぞ……よろしく頼む」
言葉は分かっていないだろうに、栗毛の馬は理解したと言わんかりブルル……と、いななく。
あぶみに足をかけたまま馬の腹を軽く蹴れば、カサ、と馬が歩き出す。
そして怯むことなく坂を下り、勢いよく山肌を走り抜けていく。
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