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二話 初めての戦

中断ポイント

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 ――漆黒に落ちていく。

 寝てしまったのか気絶してしまったのか分からないが、やっとひと区切りつけられたと胸を撫で下ろす。

 そうして暗闇に浮かび続けていると、俺の目の前に白く輝く文字が現れた。

『お疲れ様でした。自動セーブを行います』

『このまま続けますか? 中断しますか?』

『中断の場合は、現実時間で七十二時間以内に再ログインしなければ、強制的に敗者となりますのでご注意下さい』

 どうやら現実には戻れるようだが、ゲームを続けるなら長く間を空けるのは許されないらしい。

 たかがゲーム。
 しかしあまりにリアルで現実の感覚通りの――まだ華候焔に抱かれた感触が濃厚に残っている――鮮やかで生々しい世界。

 たった一度のプレイで、取り返しのつかないことを教えられてしまった。

 これ以上続ければ、戦いの緊張感は得られるかもしれない。だが戦い以外の情報量が多すぎて、柔道の試合どころではなくなりそうな気がしてしまう。

 もうこのゲームを続けるべきじゃない。

 俺の理性が声高に訴えてくる。
 このまま中断し続けて、敗者になればいい。こんな心身を犠牲にする世界をまともに相手をしても、得るものなど何もない。所詮はゲームなのだから。

 戦うべきは現実。ゲームの中で勝ち上がった所で意味はない。

 俺は『中断する』に手を伸ばし、触れる間際に硬直する。

 ……俺が戻らなかったら、華候焔はひどく冷めた目をするだろうな。

 あそこまで延々とまぐわい続けても、飽きるどころか熱を滾らせ続けていた目。
 脳裏に浮かんだ瞬間、俺の胸がキュッと痛みを覚える。

 あんな熱い眼差しでも、ゲーム内の作り物なんだ。

 罪悪感を覚えなくてもいい。
 俺が戻らず強制的に敗者になれば、華候焔はすぐに俺を忘れてしまうのだから。

 ――男に抱き潰されるなんて事態が現実じゃなくて良かったはずなのに、ゲーム内の出来事だという事実を辛く感じてしまう。

 ……もうお前は、逃げられない……。

 華候焔の声が脳裏に響く。
 早く現実に戻らないと本当に逃れられない気がして、俺は衝動的に『中断する』に触れた。

 ツゥン――。
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