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三話 逃れられぬ世界

華候焔の提案

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 ため息をつきたい衝動を堪えていると、華候焔が臣下らしく正座して座り直し、凛々しく引き締めた顔を俺に向ける。

「領主様のお食事中に無礼を承知で参ったのは、これより我らで練兵や武具の購入など、敵国に侮られぬための手筈を整えることを任せてもらえるよう、許可を頂きたい」

 本来なら領主である俺が把握し、指示を出さなくてはいけないこと。
 しかしプレイしたばかりの俺ではまだ対応し切れず、もたもたしている間に新たな敵が攻め込んでくるのは目に見えている。

 だから華候焔は自ら最短の道を提示し、俺の許可を取って攻め込まれにくい状態を作ろうとしているのだろう。

 今の俺にはありがたい申し出だ。断る理由はない。
 分かったと俺が声を出しかけたその時、白澤が俺たちの間に割って入ってきた。

「そんな重要なこと、華候焔が勝手に仕切らないで下さいー! あんまりちゃっちゃか進めちゃうと、誠人サマの理解が追い付かなくなりますからー。誠人サマを華候焔なしではいられない体にしないで下さいー!」

 白澤、言い方……っ!
 思わず俺は机に肘をついて額を押さえてしまう。

 言いたいことは分かる。だが、別の意味にも取れてしまう体になったせいで、簡単に動揺が表に出てしまう。

 そんな俺とは違い、華候焔は素知らぬ顔で白澤へ言い返す。

「もちろんずっと俺たちが仕切る訳じゃない。だが、今はそんな悠長なことを言ってられないのは毛玉も分かっているだろ? 成熟し切った領主たちに蹂躙されぬよう、可能な限りこっちも早く成熟する必要があるんだ」

「た、確かにそうですけどー。でも、アナタに全部を委ねるのは、ワタシは反対ですー!」

「そりゃあ俺は信用ゼロだからな。警戒するのは分かるぜ。だから顔鐡と一緒にやるんだ。俺ほどではないにしても、武に長け、戦をよく知っている。俺は全権を握らず、お互いに得意なものを請け負っていく……最悪俺が裏切っても、すべては消えん」

「なんでそこまでやりたがるんですかー? ヤル気があるのが、逆に疑わしいんですけどー」

「今日の褒美は既に貰ったからだ。貰うだけ貰って役目を果たさないなんて、俺の美学に反する」

 華候焔の目に力がこもる。
 揺らぎのない眼差し。この件に関しては必ず責任を負う、という気概が伝わってくる。

 今の華候焔は俺を裏切らない。そんな確信を強く持つ。
 だから俺は短いながらもしっかりと頷くことができた。

「よろしく頼む。周辺の領主たちと強さが拮抗できるまでになったら、俺に詳しい理を教えてくれるとありがたい」

「無論、その時は喜んで。では顔鐡と共に今から手配を進めて参る」

 言いながら華候焔は顔鐡に目配せし、各々に立ち上がって部屋を出ていく。

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