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●五話 平等で甘美な褒美

●言い訳のための媚薬

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   ◆ ◆ ◆

 淫らに体を洗われて力が抜けた俺を、華候焔は用意されていた柔らかな布で拭き上げ、わざわざ寝間着を羽織らせ、抱きかかえて部屋まで運んでくれた。

 まだ宴は開かれているようで、賑やかな声が聞こえてくる。
 明らかな劣勢かと思いきや、蓋を開けてみれば勝利を手にすることができて歓喜せずにいられないのだろう。

 もし俺が討たれて他の領主に代わったとしても、領民たちはそのままでいられるだろうし、下手をすると俺よりも潤沢な資金があるだろうから、領土は一気に発展するかもしれない。

 それでもこうして勝利を喜んでもらえると、俺が領主でいいのかと嬉しくなる。
 ……こうして体を褒美に華候焔を手元に置いている甲斐があると、心が救われる気がした。

 俺の部屋へ入ると、華候焔は一旦俺を寝台に横たわらせて扉を閉める。

 パタン。宴の喧騒が消え、二人の気配と息遣いだけが部屋にある。

 快楽の余韻にぼんやりとしたままの俺を見て、華候焔が楽しげに目を細めた。

「もう出来上がってるようだが、もう少し後押ししてやるか」

 言いながら華候焔は腰の衣嚢を弄って褐色の小瓶を取り出す。

 前に飲まされた、理性を溶かされ乱れる薬。媚薬なのだろう。
 初めての時は抵抗感があったから、それに頼って良かったと思う。しかし今は――。

「……使わなくても大丈夫だ。華候焔の相手なら、もう……」

「いいや、使っておけ。言い訳ができるようになるからな」

 華候焔の言葉を理解できずにいると、その大きく雄々しい唇に小瓶の中身が消えていく。
 そして俺に覆い被さり、唇を重ねて甘い液体を飲ませてくる。

 また華候焔に狂ってしまう。前よりもさらに酷く、いやらしく。
 いったいどこまで俺は堕とされてしまうのだろうと思っていると、顔を上げた華候焔の唇が不敵に引き上がった。

「今からのことは全部薬のせいだ。俺で悦びを得ることも、アイツで悦んでしまうのもな」

 アイツ……?
 一瞬意味が分からなかったが、不意に理解してしまう。

 男を無性に欲しがり始めた体でも、俺の理性は起き上がり驚きで目を丸くする。

「ま、まさか……」

 キィィ、と閉じたはずの扉が開く音。
 入ってきた者に華候焔は去れとは言わなかった。

「そっちの首尾はどうだ?」

 華候焔の問いに、フッ、と一笑する声がした。

「抜かりなく。白澤殿はよく飲まれますね。せっかくの楽しみに水を差されるのは嫌でしたから、念入りに飲ませて酔い潰しておきましたよ」

 面白がっているような食えない声。
 才明がここに来てしまったことに、俺の熱がスゥ……と引いた。
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