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●五話 平等で甘美な褒美

●乱れながらも2

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「あァ……っ、焔……ッ、は、ン……っ……」

「ここじゃあまだ挿れないからな……ここで抱き潰してしまう。寝台の上で、たっぷりとこれで可愛がってやるからな……嬉しいか、誠人……?」

 まだ指で数えられるだけしか体を重ねていないのに、もう簡単に華候焔に堕とされてしまう。

 早く素の自分を壊して欲しくてたまらない。
 さっさと快楽に屈してしまえと腰の奥が激しく疼く。

 ――でも本当は俺がそうなることを望んでいないのだろ、華候焔?

 頷いてしまいたくなる衝動を堪え、俺は残っている力をすべてかき集め、華候焔の目を視線で貫く。

 どれだけ快楽を仕込まれても、心は絶対に折れたりはしない。
 これから抗えない淫らな行為を教えられ、酷くよがり狂う醜態を晒しても、完全に堕ちて華候焔にすべてを委ねる弱者にはならない。

 俺の意図が伝わったのか、華候焔が微笑を浮かべる。
 喜んでいる気配が伝わってくる。そしてどこか安堵の色も滲んでいた。

「……だから誠人は好きなんだ。ここまで俺を夢中にさせてくれるヤツは、今までいなかった……っ……遠慮なく抱ける……っ」

 掠れながら華候焔の呟いた声は、子供がはしゃぐような嬉々とした響きがあった。

 そして一度限界を迎えようと、華候焔の腰の動きが速さを増す。
 おもむろに大きな手が、俺の弾け飛びたがっているものを握り、滑りよく扱いてくる。

 達するのは呆気なかった。

「ぁぁ……ッッ……ぅ……っ……ぁあ……」

 すぐに下腹の奥から快感がせり上がり、堪えることなく一気に放たれる。
 華候焔も同じく楽を手に入れたのか、腰を止め、大きく息をつく。

 終わりだと思った矢先――腰に手を回され、俺は尻を突き出す姿勢を取らされた。

「一回抜いたんだから、もう少しだけ我慢できるな? ここ、洗ってやるから――」

「ま、待ってくれ、休みを挟ませて――」

「嫌だ。早く挿れたい。もう我慢できない……」

 荒い息のまま声を返し、華候焔は俺の後孔に指を沈めて洗い出す。
 情けないことに、俺の膝は踊るばかりで踏ん張りなんか利かなかった。

 グチグチと、浴室に淫らに拓かれていく音が響く。

 また初めて教えられた時のように、朝を迎えるまで抱かれるのか?

 浅い所を何度も指を出し入れされながら、俺は体が華候焔を知った日を思い出す。
 ――たったそれだけのことで、体の奥が甘く小さな絶頂を覚えた。
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