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六話 将の育成は体を張って
受け入れられない提案
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褒美を分担? ……あれを分担!?
思わずギョッとなり、俺は華候焔に向かって首を大きく横に振った。
「だ、駄目だ! それだけは絶対に駄目だ!」
「ん? ああ、安心してくれ。俺は誠人様からの褒美しか認めんから、他で済ますことはまずないぞ。男を知ってしまった責任はちゃんと取らんとな」
「その心配はしていない! そうじゃなくて、他の将にあれをやらせるなんて酷い真似はできない!」
「ほう。俺との閨には心配ないとは。信用して下さっているようで、なんとも嬉しい限り」
「信用も何も、あれだけされたら疑いようがない――じゃなくて、将に娼婦の真似事をしろだなんて俺は頼みたくない」
恥ずかしいことを口走ってしまった気はするが、それよりも今は才明の提案のほうが問題だ。
わざわざ才明が褒美の分散を提案してくるということは、登用希望の将たちの中に、華候焔と同じ褒美がいいと希望した者が何人もいたのだろう。さすがに全員ではないと思いたいところだが。
抵抗する俺に、華候焔は息をついて苦笑する。
「誠人様の気持ちは分かる。人に負担させるぐらいなら、自分が苦しんだほうがいいっていう人種だしな。だが、才明はさっき絡んでいた馬騰を登用するつもりでいる」
「十傑に入るほどの者だ。確かに戦力にはなるだろうが……」
「俺もアイツはいけ好かないから嫌なんだが……まあ百歩譲って登用するのは構わん。だがアイツにその体を触らせるのは駄目だ。あれは人を壊し、狂わす」
スッ、と華候焔が目から笑みを消してしまう。
顔鐡が距離を詰めて俺たちに告げる。
「もしや華候焔殿は羽勳の噂をご存じで?」
「酒場で耳にしたことはあるな。遊郭で何人もの妓女を相手にして、ほとんどを抱き潰して正気を失わせ、使い物にならなくしてしまったとか……噂なんざ聞かずとも、目の色と気配で分かるがな」
華候焔がここまで言うということは、それだけ厄介な男ということか。ならば尚更、他の人間を犠牲になどできない。
俺は顔鐡に顔を向け、軽く頭を下げた。
「すまない顔鐡。手合わせはここまでにする。また今度付き合って欲しい」
「分かりました誠人様。いつでも声をかけて頂ければ、喜んでお相手致しましょうぞ」
快い返事に顔鐡のありがたみを噛み締めた後、俺は華候焔の手を肩から降ろさせた。
「今から才明の所へ行く。案を考え直してもらわなければ……!」
駆け出してすぐ「待て」と華候焔の声が飛んできたが、犠牲者を出す訳にはいかないという一心で、俺は立ち止まらずに城内へと向かった。
思わずギョッとなり、俺は華候焔に向かって首を大きく横に振った。
「だ、駄目だ! それだけは絶対に駄目だ!」
「ん? ああ、安心してくれ。俺は誠人様からの褒美しか認めんから、他で済ますことはまずないぞ。男を知ってしまった責任はちゃんと取らんとな」
「その心配はしていない! そうじゃなくて、他の将にあれをやらせるなんて酷い真似はできない!」
「ほう。俺との閨には心配ないとは。信用して下さっているようで、なんとも嬉しい限り」
「信用も何も、あれだけされたら疑いようがない――じゃなくて、将に娼婦の真似事をしろだなんて俺は頼みたくない」
恥ずかしいことを口走ってしまった気はするが、それよりも今は才明の提案のほうが問題だ。
わざわざ才明が褒美の分散を提案してくるということは、登用希望の将たちの中に、華候焔と同じ褒美がいいと希望した者が何人もいたのだろう。さすがに全員ではないと思いたいところだが。
抵抗する俺に、華候焔は息をついて苦笑する。
「誠人様の気持ちは分かる。人に負担させるぐらいなら、自分が苦しんだほうがいいっていう人種だしな。だが、才明はさっき絡んでいた馬騰を登用するつもりでいる」
「十傑に入るほどの者だ。確かに戦力にはなるだろうが……」
「俺もアイツはいけ好かないから嫌なんだが……まあ百歩譲って登用するのは構わん。だがアイツにその体を触らせるのは駄目だ。あれは人を壊し、狂わす」
スッ、と華候焔が目から笑みを消してしまう。
顔鐡が距離を詰めて俺たちに告げる。
「もしや華候焔殿は羽勳の噂をご存じで?」
「酒場で耳にしたことはあるな。遊郭で何人もの妓女を相手にして、ほとんどを抱き潰して正気を失わせ、使い物にならなくしてしまったとか……噂なんざ聞かずとも、目の色と気配で分かるがな」
華候焔がここまで言うということは、それだけ厄介な男ということか。ならば尚更、他の人間を犠牲になどできない。
俺は顔鐡に顔を向け、軽く頭を下げた。
「すまない顔鐡。手合わせはここまでにする。また今度付き合って欲しい」
「分かりました誠人様。いつでも声をかけて頂ければ、喜んでお相手致しましょうぞ」
快い返事に顔鐡のありがたみを噛み締めた後、俺は華候焔の手を肩から降ろさせた。
「今から才明の所へ行く。案を考え直してもらわなければ……!」
駆け出してすぐ「待て」と華候焔の声が飛んできたが、犠牲者を出す訳にはいかないという一心で、俺は立ち止まらずに城内へと向かった。
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