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七話 現実が繋がる時

狙われた誠人

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「はい。どれも美味しくて食べ過ぎそうです」

 本当は東郷さんやゲームのことで頭が混乱気味で、思うように食事が喉を通らないが、差し障りのない内容で留めておく。

 俺の言葉に男性はうんうんと頷きながら距離を縮めてくる。

「俺も大学時代は食べるだけ食べないともったいない精神でがっついてたなあ。もう三十過ぎたから、胃が無理できなくなってきたけど」

「はあ……」

「食べたい時にはしっかり食べるんだぞ。後で体がついていかなくなった時、後悔しないように」

 ポン、と肩を叩かれながら笑いかけられ、俺もつられて笑ってしまう。
 どうやら気の良い人らしいと警戒を緩めていると、男性はグレープジュースをコップに注ぎ、俺に差し出した。

「いっぱい食べたい時は、これを飲むといいよ。胃酸が出てより多く食べられるから……あ、でもたくさん食べ過ぎた後なら焼け石に水だろうけど」

「頂きます。まだ食べている途中ですから」

 俺はなんの疑いもせずにグラスを受け取る。フリーになった手で男性は新たに同じものをコップに入れ、縁を持って軽く揺らした。

「せっかくだから、正代選手のこれからの活躍を願って乾杯」

「ありがとうございます」

 カチン、とグラス同士を軽く当て、各々に口付ける。
 グレープフルーツのジュースにしては甘いような、しかし風味は変わらない。飲みやすくて一気に二口、三口と喉へ通してしまう。

 ――じんわり、と体の芯が熱くなる。
 酒ではないはずなのに、体が火照ってフラつきそうになってしまう。

 すぐにコップを近くのテーブルに置き、体勢を直そうとするが膝に力が入らない。
 その場に崩れ落ちかけた瞬間、男性が俺の横に回り、すぐさま肩を貸してくれた。

「大丈夫? ちょっと休んだほうがいいから、ここを出ようか」

 ……駄目だ、東郷さんに怒られる……。
 でも……体が、言うことを利かない……。

 意識が朦朧としてきて、立っているのが辛くなっていく。
 踏ん張りの利かない俺の腰へ、男性が腕をしっかりと絡めてくる。

 そうして男性に連れて行かれるまま懇親会の会場を出て、エレベーターの前で待たされる。

 フッ、と男性から耳に熱い息を吹きかけられる。
 淫らな世界に染まり切ってしまった体は、それだけで腰の奥を大きく疼かせてしまった。

 もしかしてこれは……。
 潤んでしまう瞳で男性を見やれば、人の良い顔はなりを潜め、口元をいやらしく緩ませた顔で俺を見つめていた。

 ……逃げないと。しかし体が……。

 立つのがやっとの状態になって、ようやく俺は気づいてしまう。
 このままでは男性の部屋に連れ込まれて好き勝手されてしまう。

 チン、と下りのエレベーターが到着する音が鳴る。
 ドアが開きかけたその時だった。

「正代君は私のゲストです。勝手にしないで頂きたい」

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