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八話 本当の仲間は誰?
進化した城下町に出て
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◇ ◇ ◇
結局、俺が抱き潰されてしばらく休む羽目になり、外出できたのは昼過ぎだった。
領主の格が上がって何もかも発展したが、城下町も例外ではなかった。
初めて新しくなった町の中を歩くことになり、俺はその変わりぶりに目を見張る。
当初はさびれた町で彩りがなく、道も地面が剥き出しだったのに。
今は道に煉瓦が敷かれ、建物は大きくなった上にどれも真新しく、屋根や壁に中華らしい模様が入っていた。
高級そうな店と思しき建物には飾り窓もあり、身なりの良い領民たちが出入りしている。大通りは人で賑わっており、前の閑散としていた様相の面影はない。
「一気にここまで変わるものなのか……」
辺りを歩きながら見渡しつつ、俺は思わず呟く。すると両隣を歩いていた華候焔と才明が、ほぼ同時に笑った。
「これくらいで驚いていたら、次に発展したら腰を抜かしそうだな」
からかいながら華候焔が俺の腰に手を回し、顔を近づけて囁く。
「美味い食べ物も酒も手に入りやすくなったし、遊ぶ所も増えた。今度良い所に連れて行ってやろうか? 楽しいことも悪いことも、なんだって教えてやる」
「……気持ちは嬉しいが、そんな暇は――」
「乱入者大歓迎の賭博闘技場なんか面白いぞー。腕試しもできるし、俺が出ればどれだけでも稼げる。誠人様が望むなら、望みの体技を見せて教えることもできるぞ」
く……っ、予想外の中身だ。俺の好みを完全に押さえている。
不覚にも華候焔の誘惑に心をぐらつかせていると、俺の首でタオルをかけるような形になっていた白澤が顔を上げた。
「誠人サマをたぶらかさないで下さいー! ただでさえ悪いこと教えすぎなんですからー!」
「は? ここで勝ち残るために必要なことを教えているだけだぞ? たぶらかすなんて人聞きの悪いことを言うな」
「だったら無償で真っ当なことを教えて下さいよー。誠人サマをどんどん汚して……壊しちゃう気ですかー!」
「ちゃんと加減はしてるぞ。壊したら楽しめなくなるだろうが。これでもちょっとずつ慣らして――」
いつもの言い合いに頭痛を覚えていると、才明が白澤の頭――タオルの端が勝手に浮かんでいるようにしか見えないが――を宥めるように撫でた。
「城内ならともかく、外で言い合うのは抑えましょう。領主様を辱めるだけですから」
にこやかな糸目を向ければ、華候焔が少し不快そうに顔をしかめて舌打ちをする。
「そうだな。コイツに突っかかられると、どうしても口が過ぎてしまう」
「後でたっぷりと言い合って下さい。その間に私が領主様の褒美をたっぷりと堪能致しますから」
「この抜け駆け野郎が。朝の褒美が欲しいならコソコソするな。もう俺とお前の仲だ。堂々と共に強請ればいいだろうが」
……才明。お前も俺を十分に辱めているぞ。
それと華候焔。才明と二人がかりで俺を攻めるのを常習化しようとしないでくれ。
今すぐどこかに座って、何も考えずに休みたい。
体は白澤の術で回復しても、心の疲れは消えずに積もり続けていた。
結局、俺が抱き潰されてしばらく休む羽目になり、外出できたのは昼過ぎだった。
領主の格が上がって何もかも発展したが、城下町も例外ではなかった。
初めて新しくなった町の中を歩くことになり、俺はその変わりぶりに目を見張る。
当初はさびれた町で彩りがなく、道も地面が剥き出しだったのに。
今は道に煉瓦が敷かれ、建物は大きくなった上にどれも真新しく、屋根や壁に中華らしい模様が入っていた。
高級そうな店と思しき建物には飾り窓もあり、身なりの良い領民たちが出入りしている。大通りは人で賑わっており、前の閑散としていた様相の面影はない。
「一気にここまで変わるものなのか……」
辺りを歩きながら見渡しつつ、俺は思わず呟く。すると両隣を歩いていた華候焔と才明が、ほぼ同時に笑った。
「これくらいで驚いていたら、次に発展したら腰を抜かしそうだな」
からかいながら華候焔が俺の腰に手を回し、顔を近づけて囁く。
「美味い食べ物も酒も手に入りやすくなったし、遊ぶ所も増えた。今度良い所に連れて行ってやろうか? 楽しいことも悪いことも、なんだって教えてやる」
「……気持ちは嬉しいが、そんな暇は――」
「乱入者大歓迎の賭博闘技場なんか面白いぞー。腕試しもできるし、俺が出ればどれだけでも稼げる。誠人様が望むなら、望みの体技を見せて教えることもできるぞ」
く……っ、予想外の中身だ。俺の好みを完全に押さえている。
不覚にも華候焔の誘惑に心をぐらつかせていると、俺の首でタオルをかけるような形になっていた白澤が顔を上げた。
「誠人サマをたぶらかさないで下さいー! ただでさえ悪いこと教えすぎなんですからー!」
「は? ここで勝ち残るために必要なことを教えているだけだぞ? たぶらかすなんて人聞きの悪いことを言うな」
「だったら無償で真っ当なことを教えて下さいよー。誠人サマをどんどん汚して……壊しちゃう気ですかー!」
「ちゃんと加減はしてるぞ。壊したら楽しめなくなるだろうが。これでもちょっとずつ慣らして――」
いつもの言い合いに頭痛を覚えていると、才明が白澤の頭――タオルの端が勝手に浮かんでいるようにしか見えないが――を宥めるように撫でた。
「城内ならともかく、外で言い合うのは抑えましょう。領主様を辱めるだけですから」
にこやかな糸目を向ければ、華候焔が少し不快そうに顔をしかめて舌打ちをする。
「そうだな。コイツに突っかかられると、どうしても口が過ぎてしまう」
「後でたっぷりと言い合って下さい。その間に私が領主様の褒美をたっぷりと堪能致しますから」
「この抜け駆け野郎が。朝の褒美が欲しいならコソコソするな。もう俺とお前の仲だ。堂々と共に強請ればいいだろうが」
……才明。お前も俺を十分に辱めているぞ。
それと華候焔。才明と二人がかりで俺を攻めるのを常習化しようとしないでくれ。
今すぐどこかに座って、何も考えずに休みたい。
体は白澤の術で回復しても、心の疲れは消えずに積もり続けていた。
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