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八話 本当の仲間は誰?
鉄工翁への頼み事
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景観が良くなった城下町を目で堪能しながら歩き続け、俺たちは目的の場所へ辿り着く。
他が変わっても、ここだけは以前と変わらないこじんまりとした建物。煙が立ち昇る煙突。
この人数で押しかけても大丈夫だろうかと思いながら中へ入ると、俺の武器である竹砕棍を作ってくれた鉄工翁が鉄を打っている最中だった。
「おーい、鉄工翁。元気でやってるか? ちょっと手を止めて誠人様の所に来てくれ」
華候焔が声を張り上げて呼びかけると、鉄工翁はすぐに手を止めて俺を振り返る。
とても小柄なずんぐりむっくりの老鍛冶師。相変わらずドワーフっぽい人だ。
俺と目が合うと嬉しそうに顔を綻ばせ、こちらへ歩み寄ってくれた。
「ようこそ領主様! また新たな武器をお探しですかな?」
「いや、今日は鉄工翁殿に相談があって来たんだ」
「ほうほう、どのようなご相談を?」
興味深そうに鉄工翁が目を輝かせる。この中で一番年齢を重ねているはずなのに、背の低さと瞳の輝きで無垢な子供に見えそうになる。
俺の後ろに控えていた才明が隣に並び、鉄工翁へ一礼する。
「初めまして鉄工翁殿。私は才明と申します。誠人様にお仕えする軍師にございます。どうかお見知りおきを」
「わざわざ軍師殿と領主殿に足を運んで頂けるとは、身に余る光栄ですのう!」
「実は華候焔殿から鉄工翁殿が非常に素晴らしい職人だとお聞きして、私が考える武器を作って頂けるのでは? と思い、ご相談しに参りました」
「ほほう……どのような武器ですかな?」
「口で言うよりも絵でお伝えしたほうが早いですから、あちらの作業台をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんですとも。散らかっておりますが――」
才明と鉄工翁が工場の奥にある木製の机へと向かっていく。
俺も向かおうとした時、ガッ、と華候焔に肩を掴まれた。
「どうしたんだ、華候焔?」
「随分と才明のことを受け入れているようだが、大丈夫なのか?」
顔を近づけ、声を潜めて華候焔が尋ねてくる。
ふざけた色がない真面目な気配。こういう時は本気で話をしている時だ。
俺は一瞬考えて小さく頷く。
「完全に受け入れた訳ではないが、今は問題ないと思う。恐らくは俺の目的や方針が変われば、俺を見限るかもしれないが……」
「その根拠は?」
「……この世界を色々と知りたいそうだ。俺も知りたいと考えているから、目的が一致しているんだ。だから――」
口に出しても許されそうな真実を華候焔に告げる。
嘘ではない。しかし、本当の狙いは違う。真実を言えば華候焔がどう出るか読めない以上、俺は不必要に言わないに限る。
他が変わっても、ここだけは以前と変わらないこじんまりとした建物。煙が立ち昇る煙突。
この人数で押しかけても大丈夫だろうかと思いながら中へ入ると、俺の武器である竹砕棍を作ってくれた鉄工翁が鉄を打っている最中だった。
「おーい、鉄工翁。元気でやってるか? ちょっと手を止めて誠人様の所に来てくれ」
華候焔が声を張り上げて呼びかけると、鉄工翁はすぐに手を止めて俺を振り返る。
とても小柄なずんぐりむっくりの老鍛冶師。相変わらずドワーフっぽい人だ。
俺と目が合うと嬉しそうに顔を綻ばせ、こちらへ歩み寄ってくれた。
「ようこそ領主様! また新たな武器をお探しですかな?」
「いや、今日は鉄工翁殿に相談があって来たんだ」
「ほうほう、どのようなご相談を?」
興味深そうに鉄工翁が目を輝かせる。この中で一番年齢を重ねているはずなのに、背の低さと瞳の輝きで無垢な子供に見えそうになる。
俺の後ろに控えていた才明が隣に並び、鉄工翁へ一礼する。
「初めまして鉄工翁殿。私は才明と申します。誠人様にお仕えする軍師にございます。どうかお見知りおきを」
「わざわざ軍師殿と領主殿に足を運んで頂けるとは、身に余る光栄ですのう!」
「実は華候焔殿から鉄工翁殿が非常に素晴らしい職人だとお聞きして、私が考える武器を作って頂けるのでは? と思い、ご相談しに参りました」
「ほほう……どのような武器ですかな?」
「口で言うよりも絵でお伝えしたほうが早いですから、あちらの作業台をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんですとも。散らかっておりますが――」
才明と鉄工翁が工場の奥にある木製の机へと向かっていく。
俺も向かおうとした時、ガッ、と華候焔に肩を掴まれた。
「どうしたんだ、華候焔?」
「随分と才明のことを受け入れているようだが、大丈夫なのか?」
顔を近づけ、声を潜めて華候焔が尋ねてくる。
ふざけた色がない真面目な気配。こういう時は本気で話をしている時だ。
俺は一瞬考えて小さく頷く。
「完全に受け入れた訳ではないが、今は問題ないと思う。恐らくは俺の目的や方針が変われば、俺を見限るかもしれないが……」
「その根拠は?」
「……この世界を色々と知りたいそうだ。俺も知りたいと考えているから、目的が一致しているんだ。だから――」
口に出しても許されそうな真実を華候焔に告げる。
嘘ではない。しかし、本当の狙いは違う。真実を言えば華候焔がどう出るか読めない以上、俺は不必要に言わないに限る。
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