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八話 本当の仲間は誰?
本気
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戯れの言葉……にしては声が重い。
本気で言っているのかと俺が目を見張っていると、華候焔がうっすらと微笑む。
「才明から色々教えてもらって、誠人も知り始めているのだろ? この世界のことを……本当は俺が先に教えたかったところだが、先を越されてしまった。これ以上後手に回るのは性じゃない」
思いがけず気にかけていたことを言われ、俺は息を飲み込む。
こんな言い方をするということは、やはり華候焔も現実にいる誰かなのか。
知りたい。
華候焔の正体も、この世界の真実も。
自分の心が前のめりになってくのを感じる。だが、すぐには頷けなかった。
心を捧げて欲しいというのは、恋愛する相手として受け入れろということなのか?
華候焔に心まで預けて愛でられろと? この世界でも、現実でも――。
一気に体がカッと熱くなり、俺は華候焔から目を逸らす。
こうして体の関係を持っているのは、勝ち上がるための褒美としてやむを得なく、だ。好きでやっている訳じゃない。
それを褒美目的以外でも関係を持つということになれば、俺は……。
即決できない俺をからかうように、華候焔が小さく吹き出す。
おもむろに華候焔は俺の耳元へ唇を寄せてそっと囁く。
「ずっと俺は、心置きなく本気になれる人間が欲しかったんだ。こっちでも、あっちでも……誠人。俺は本気を出して生きたい」
「焔……」
「頼む。俺に許しをくれ……誠人」
俺よりも遥かに力があり、経験も知識も豊富な、確固たる自分をもっている強者。
なのに今、華候焔が俺に弱さを晒している。
なぜそこまで俺を求めてくれる?
俺が華候焔に勝ることなど何もないのに。
少し考えて、俺は答えを決める。
一度息を大きく吸い込んでから、華候焔のたくましい背中に手を回した。
「焔、俺から提案させてくれ」
「なんだ、誠人?」
「こういうことで取り引きするのは嫌だ。だから澗宇のことも、他のことも、無理に教えてくれなくてもいい」
「……そうか。つまり俺を拒むと――」
「いや。焔の本気を受け止める。だから本気を出してくれ……それについて見返りは求めない」
華候焔の息遣いが止まる。
その刹那――ぎゅう、と。華候焔は俺を力強く抱き締めた。
「許して、くれるのか……ありがとう」
低くかすれた声に、華候焔の心が伝わってくる。
本気を出せば誰もついて来ない。相手の心身が壊れる。だから力を抑え、世を遊んで生きるしかなかった。
ふと華候焔が東郷さんと重なる。
東郷さんは遊びとは無縁だが、あの人も本気を出せず、自分を抑えるしかない人だから。
本気で言っているのかと俺が目を見張っていると、華候焔がうっすらと微笑む。
「才明から色々教えてもらって、誠人も知り始めているのだろ? この世界のことを……本当は俺が先に教えたかったところだが、先を越されてしまった。これ以上後手に回るのは性じゃない」
思いがけず気にかけていたことを言われ、俺は息を飲み込む。
こんな言い方をするということは、やはり華候焔も現実にいる誰かなのか。
知りたい。
華候焔の正体も、この世界の真実も。
自分の心が前のめりになってくのを感じる。だが、すぐには頷けなかった。
心を捧げて欲しいというのは、恋愛する相手として受け入れろということなのか?
華候焔に心まで預けて愛でられろと? この世界でも、現実でも――。
一気に体がカッと熱くなり、俺は華候焔から目を逸らす。
こうして体の関係を持っているのは、勝ち上がるための褒美としてやむを得なく、だ。好きでやっている訳じゃない。
それを褒美目的以外でも関係を持つということになれば、俺は……。
即決できない俺をからかうように、華候焔が小さく吹き出す。
おもむろに華候焔は俺の耳元へ唇を寄せてそっと囁く。
「ずっと俺は、心置きなく本気になれる人間が欲しかったんだ。こっちでも、あっちでも……誠人。俺は本気を出して生きたい」
「焔……」
「頼む。俺に許しをくれ……誠人」
俺よりも遥かに力があり、経験も知識も豊富な、確固たる自分をもっている強者。
なのに今、華候焔が俺に弱さを晒している。
なぜそこまで俺を求めてくれる?
俺が華候焔に勝ることなど何もないのに。
少し考えて、俺は答えを決める。
一度息を大きく吸い込んでから、華候焔のたくましい背中に手を回した。
「焔、俺から提案させてくれ」
「なんだ、誠人?」
「こういうことで取り引きするのは嫌だ。だから澗宇のことも、他のことも、無理に教えてくれなくてもいい」
「……そうか。つまり俺を拒むと――」
「いや。焔の本気を受け止める。だから本気を出してくれ……それについて見返りは求めない」
華候焔の息遣いが止まる。
その刹那――ぎゅう、と。華候焔は俺を力強く抱き締めた。
「許して、くれるのか……ありがとう」
低くかすれた声に、華候焔の心が伝わってくる。
本気を出せば誰もついて来ない。相手の心身が壊れる。だから力を抑え、世を遊んで生きるしかなかった。
ふと華候焔が東郷さんと重なる。
東郷さんは遊びとは無縁だが、あの人も本気を出せず、自分を抑えるしかない人だから。
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