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十一話 大きな前進

思いがけない陳情

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「みなさーん、誠人サマをお連れしましたよー!」

 ざわつきの中、白鐸の間延びした声が大広間に響く。
 すると話し声がぴたりと止み、集まっていた武将たちや才明が一斉に俺を見た。

 どこか困ったような、苦笑いしたような表情の才明と、いずれも必死さを滲ませた武将たち。特に才明の前にいる羽勳は、初めて会った軽薄さは鳴りを潜め、確かな信念を持った男の顔をしていた。

「待たせたようで済まなかった。今、話を聞かせてもらう」

 俺は領主の椅子に向かいながら、武将たちを見回して声をかける。彼らの顔が一様に輝き、期待を覗かせながら跪く。

 恭しく会釈する才明に目配せして、彼らの話を聞かせて欲しい旨を滲ませる。すると俺が椅子に座って息をついた後、口を開いた。

「誠人様、羽勳をはじめとする武将たちから陳情が出ています」

「内容は?」

「それが……格付け第二位の尊朔を、羽勳たちで討ちたいとのことです」

 一瞬、自分の耳を疑う。
 第二位の領主を羽勳たちだけで討つ? 主力の華侯焔や領主の俺を抜きにして、なぜそんなことを?

 内心首を傾げながら、俺は羽勳に目を合わせた。

「羽勳、理由を聞かせてくれないか?」

「はっ。実は……どうしても大きな手柄を立てなくてはいけない事情があるのです」

 羽勳は一度、奥歯を噛み締めながら、作った拳を震わせる。

「誠人様は、我々と表涼の関係はご存知ですね?」

「……ああ、把握している」

 表涼は俺の代わりに、戦果を上げた武将たちの褒美として身を差し出している将だ。俺としてはあんな淫らなことを、俺よりも多い人数を相手にさせていることに申し訳なく思っている。

 しかし、当の本人はむしろ喜んでいる。嬉々として男を身体に招き、数多の快楽を得ることを褒美としているような男。今の俺には非常にありがたい存在だ。

 その表涼と第二位の領主を討つことに、なんの関係があるのだろうか?

 俺が言葉を待っていると、羽勳は話を続けてくれた。

「領土が拡大して、誠人様の勢力が増すことは嬉しいことなのですが、その分、我らが活躍する場が得られにくく……表涼は褒美でなければ身体を許してはくれません。一度あの身体を味わってしまうと、もう……」

 クッ、とうつむいて身を震わす羽勳に続いて、他の武将が訴えてくる。

「どれだけ貢いでも、尽くしても、戦果を上げねば駄目なのです……っ!」

「しかも戯れに誘惑して、我らを煽って……同胞である彼を襲いたくもないのですが、それでもあの肢体をもう一度……っ」
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