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十一話 大きな前進

領主の護衛は

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 羽勳たちと入れ替わるように華侯焔たちを呼んだあたり、これまでの流れは才明が思い描いたものなのだと実感する。

「じゃれ合いはそれぐらいにして、こちらに来て下さい」

 才明の呼びかけに、華侯焔と白鐸が同時に振り向く――白鐸は目も口も見えないが、クルッとこちらを向いたそこが顔らしい。お互いにまだ言い足りなさそうにしながら、こちらへ歩き出す。

 少し遅れて英正が二人の後ろについて来るが、表情が硬いままだ。何かあるのだろうかと視線を送っていると、俺の視線に気がついて目を合わせてくる。

 一瞬、瞳から力みが消える。そして表情を引き締め、激戦に赴くような険しくも凛々しい顔つきで近づいてきた。

 華侯焔たちが俺の前に横並びしたのを見計らい、才明が説明を始めた。

「皆さんに来て頂いたのは、誠人様が潤宇の元へ向かう件についてです」

「わざわざ誠人様が向かうということは、いよいよ大きく動くということか」

 腕を組みながら華侯焔が才明を見る。
 説明せずとも、この情報だけで察することができるだけのことを華侯焔は知っている。才明への視線で、潤宇に会う口実を上手く作ったな、という心の声が聞こえてくる気がした。

 フッと笑い、華侯焔への視線に応えると、才明は話を続ける。

「ええ。領主が他国へ赴きますので、護衛は必要になります。誠人様に何かあっては一大事。ここにいる全員で護衛し、誠人様とともに潤宇の元へ向かいます」

 俺だけでなく、ここにいる全員――大丈夫なのか、それは!?

 領主が本城を空けるということだけでもリスクが出てくるのに、第二位の尊朔を同時攻略しながらとなれば、大きな被害が出た時の対処が遅れ、領土をごっそりと奪われかねない。

 心配する俺を察し、才明がにこやかに教えてくれる。

「ご安心を。守りに顔鐡を置いていきますから。彼は熟練の武将で、本来は攻めよりも守りに長けています。面倒見も良く、他の武将たちからも慕われていますし、誠人様への忠誠度も高い。うってつけの人材ですよ」

 顔鐡は俺が最初の戦で一騎討ちをした猛将で、侠気ある性格だ。褒美は俺との手合わせという、純粋に強さを求める姿勢に俺は好感を覚えている。

 ……淫らな褒美ではなくていいから、心から安心できる将だ。確かに彼なら城を任せても良いと思う。

「そうだな。顔鐡が受け入れてくれるなら、そうしたいところだ」

「既に打診してあります。褒美については、誠人様に技の特訓を手伝ってもらえるなら、それで良いそうです」

 本当に忠臣の鏡のような人だと思っていると、この場の全員の視線が俺に突き刺さる。熱を孕んだ棘のある視線。

 頼むから顔鐡に妬かないでくれ……。
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