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十一話 大きな前進
出立の準備
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頭を抱えるしかない俺をよそに、才明が場を仕切り始める。
「これより出立の準備を行います。明日には向かいますので、各自、準備をお願いします。白鐸には尊朔攻略のための拠点強化や、羽勳たちに授ける計略の準備を手伝って頂きたいので、私と一緒に軍議室へ来て下さい」
「分かりましたー。力が強くなって遠距離支援も出来るようになりましたから、前よりも打てる手が増えましたからー」
白鐸の身体が軽く反る。どうやら胸を張っているらしい。本当に特大の毛玉で奇妙な動きになっているが頼もしい。
それから才明は華侯焔に視線を移し、ニコリと微笑む。
「華侯焔殿には羽勳を始めとする武将たちに、技を授けてもらいます」
「は? 今日だけで覚えさせろってことか? 前から計画していたなら、もっと早くに言えよ」
「登用武将の情報はどの領主でも見ることができますから、前から準備していたら警戒される可能性がありましたから。電光石火ということで……貴方ならできますよね、華侯焔?」
詳細を知らない俺でも、一日で技を教えるというのが大変なのは分かる。華侯焔が顔をしかめていることからも伺い知れる。
ハァ、と大きな息をついてから、華侯焔は短く頷いた。
「分かった。それが必要なことなら、今から本気でアイツらに教え込んでやる」
面倒そうに了承した後、華侯焔の目が俺に向く。
口端が引き上がり、不敵な笑みが浮かぶ。
「俺の指導は高くつくぞ。夜に追加で褒美はもらうからな」
……堂々と夜に抱く宣言はしないで欲しい。
俺に複数人を相手にさせるよう仕向けながら、自分が特別であると才明や英正に牽制するあたり、独占欲が溢れ出ている。
この大事でヘソを曲げられても困る。俺は「分かった」と頷くしかなかった。
話はこれで終わりだと解散する流れになった時、俺は英正を呼び止めた。
「英正、今から手合わせをしたいんだが、時間は取れるか?」
「はいっ、大丈夫です! 相手に選んで頂き光栄です」
ずっと険しい顔だったのに、俺に話しかけられた途端に英正の表情が晴れやかになる。
留守番をしていた番犬が、帰宅した飼い主に構ってもらって喜びを露わにする姿と英正が重なってしまう。思わず吹き出しそうになっていると、才明の声が飛んできた。
「手合わせをされるのでしたら、お二人の合わせ技の確認をされてはいかがですか?」
英正との合わせ技。華侯焔と放ったもののような大技を、英正とも――。
思わず俺の胸が期待で熱くなってしまう。
そんな俺を見て、英正は目が柔らかな弧を描く。
俺と同世代で青さを感じさせていた英正から、大人びいた落ち着きと優しさが覗く。
成長したを嬉しく思いながらも、俺を置いて遥かな成長を遂げてしまった英正が気になって仕方がなかった。
「これより出立の準備を行います。明日には向かいますので、各自、準備をお願いします。白鐸には尊朔攻略のための拠点強化や、羽勳たちに授ける計略の準備を手伝って頂きたいので、私と一緒に軍議室へ来て下さい」
「分かりましたー。力が強くなって遠距離支援も出来るようになりましたから、前よりも打てる手が増えましたからー」
白鐸の身体が軽く反る。どうやら胸を張っているらしい。本当に特大の毛玉で奇妙な動きになっているが頼もしい。
それから才明は華侯焔に視線を移し、ニコリと微笑む。
「華侯焔殿には羽勳を始めとする武将たちに、技を授けてもらいます」
「は? 今日だけで覚えさせろってことか? 前から計画していたなら、もっと早くに言えよ」
「登用武将の情報はどの領主でも見ることができますから、前から準備していたら警戒される可能性がありましたから。電光石火ということで……貴方ならできますよね、華侯焔?」
詳細を知らない俺でも、一日で技を教えるというのが大変なのは分かる。華侯焔が顔をしかめていることからも伺い知れる。
ハァ、と大きな息をついてから、華侯焔は短く頷いた。
「分かった。それが必要なことなら、今から本気でアイツらに教え込んでやる」
面倒そうに了承した後、華侯焔の目が俺に向く。
口端が引き上がり、不敵な笑みが浮かぶ。
「俺の指導は高くつくぞ。夜に追加で褒美はもらうからな」
……堂々と夜に抱く宣言はしないで欲しい。
俺に複数人を相手にさせるよう仕向けながら、自分が特別であると才明や英正に牽制するあたり、独占欲が溢れ出ている。
この大事でヘソを曲げられても困る。俺は「分かった」と頷くしかなかった。
話はこれで終わりだと解散する流れになった時、俺は英正を呼び止めた。
「英正、今から手合わせをしたいんだが、時間は取れるか?」
「はいっ、大丈夫です! 相手に選んで頂き光栄です」
ずっと険しい顔だったのに、俺に話しかけられた途端に英正の表情が晴れやかになる。
留守番をしていた番犬が、帰宅した飼い主に構ってもらって喜びを露わにする姿と英正が重なってしまう。思わず吹き出しそうになっていると、才明の声が飛んできた。
「手合わせをされるのでしたら、お二人の合わせ技の確認をされてはいかがですか?」
英正との合わせ技。華侯焔と放ったもののような大技を、英正とも――。
思わず俺の胸が期待で熱くなってしまう。
そんな俺を見て、英正は目が柔らかな弧を描く。
俺と同世代で青さを感じさせていた英正から、大人びいた落ち着きと優しさが覗く。
成長したを嬉しく思いながらも、俺を置いて遥かな成長を遂げてしまった英正が気になって仕方がなかった。
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