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十二話 真実に近づく時

胸のざわつき

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   ◇ ◇ ◇

 食事を終え、湯殿で身を清めた後。俺は白鐸とともに部屋へ向かう。

 中へ入る直前、白鐸は不満げに唸りながら俺に話しかけてきた。

「一応声が聞こえないように防音の術をかけておきますけど、何かあれば助けてと念じて下さいー。この白鐸、すぐに扉を破ってお守りしに参りますからー」

「ありがとう白鐸……才明と込み入った話をするかもしれないから、そうしてくれて助かる」

「きっと話だけで済まないと思いますしー。みんながムラムラして一睡もできない、なんてなったら困りますしねー。あと華侯焔が乱入して、寝台がめちゃくちゃになってお家の人に迷惑かけるのもイヤですしー」

 ……確かに華侯焔が絡むと大変なことになる。いつもの領主の寝台と違って、客人用の寝台だ。下手すると壊れる。そういった意味でも才明が相部屋で良かったと思う。

 そして別々の部屋に入ると、俺は奥の寝台に腰かけた。

 家人が貸してくれた白い寝間着は、居城の時と同じような滑らかさだが、匂いが違う。どこか甘やかな花の香がする。

 部屋は飾り気がないものの、寝台の敷布も手触りが良く、少しでも心地よい眠りを与えられるようにと気が配られている。細やかな気遣いに感謝するばかりだ。

 一度大きく深呼吸して、軽く目を閉じ、己の中を見つめる。

 現実では試合前にやるようにしている軽い瞑想。心の乱れは負けに繋がるからと始めたことだ。

 ――胸の奥がざわついている。
 これは決勝で東郷さんと当たるからと意気込み過ぎてしまい、鎮め切れない時と似ている。

 早くどうにかしたいという焦りと、まだ未熟な俺が覇者を成すことができるだろうかという不安。

 華侯焔は問題があるからと、才明を俺と同じ部屋にした。
 ただでさえ未熟さがあるというのに、勝ち上がるための道に綻びがあるとなれば、小さく見える勝機すら消え失せてしまう。

 武の力は俺たちには劣るが、軍師として頼もしい才明。

 俺たちの関係は特に問題ないはずだと思う。
 ゲームで身体の関係を持ちながら、現実では目的を同じとする同志。そのために必要なことだからと、身体を重ねることを互いに受け入れている。

 何が問題なのかが分からない。
 華侯焔には見えている綻びが俺には分からなくて、胸のざわつきを強めていると、

「誠人様、入ってもよろしいでしょうか?」

 扉の向こうから才明が声をかけてくる。
 重くなった唾を飲み込んでから、俺は「入ってくれ」と許可を出す。

 中に入ってきた才明は、入浴で赤く火照った肌を黒い寝間着で包んでいた。
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