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十二話 真実に近づく時

才明の告白

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 口づけられそうな距離で才明の本心を聞き、俺は密かに息を詰める。

 ずっと才明は――プレイヤーである仲林アナは、完全に割り切っていると思っていた。まさかそんなことを考えていただなんて。

 俺の懐に入り、現実で正体を明かしてもいい相手かを見極め、手の内と正体を見せてくれた才明。身体の関係は俺を知り、近づくための手段であり、ゲームを有利に進めるための裏技。

 信頼や仲間意識はあっても、そこに恋情はないと思っていたのに。

 何を言えばいいか分からずにいると、そっと才明が唇を重ねてくる。

 押し当て、すぐに離れるキス。
 呆然となっている俺に、才明がフッと悲しげな笑みを浮かべた。

「こんなことを言われたら、困ってしまいますよね? 誠人様はもう心を決めておられる。後から手を伸ばした私に、あちらで応えることはできませんよね?」

 ゲームの中なら必要なことだと納得しているから、相手が望むなら俺も応えることはできる。

 だが現実でそれは――できない。
 先に身体を重ねてしまったのは華侯焔で、東郷さんだ。

 俺の無言が、才明の言葉を認めてしまうことになる。それが分かっているのに、話す言葉が見つからなかった。

 ふと才明の手が俺の肩を掴み、力をかけてくる。
 ――ドサ、と押し倒されて天井を仰いでいると、才明が俺を覗き込んできた。

 このまま抱かれるのかと思っていたが、才明は俺を見下ろしたまま動きを止める。

 ぽたり。俺の顔に雫が落ち、頬を濡らす。
 才明の目から落ちてきたと知った瞬間、胸が握り潰されそうなほど締め付けられた。

「自分の弱さが嫌になりますよ……貴方のように、知らない者たちのために身も心も犠牲にして助けたいだなんて思えない。私のほうが大人で、誠人様を少しでも支えなければいけないのに」

 苦しげな才明の呟きも、思い詰めた姿も、俺に本心を曝け出してくる。

 いつからこんなに苦しんでいたのだろうか?
 目を逸らさずに才名を見つめながら、ふと思う。

 ただのゲームと割り切っていれば、こんな苦悩をすることはなかった。
 つまりそれだけ真剣に俺のことを考えて、想っている証。

 才明の想いに俺は応えられない。
 それでも流す涙が愛おしくて、俺は手を伸ばし、才明の目元に溜まった熱い雫を拭った。

「そんなに思い詰めいていたなんて……気づかなくて悪かった」

「……いえ。絶対に知られまいと隠していましたから」

 俺は才明を見つめてから、少しでも気に病まぬように微笑んだ。

「苦しまなくていい。才明、今まで通りでいてくれ」

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