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十二話 真実に近づく時

新たな仲間を迎えに

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   ◇ ◇ ◇

 食事を終えてから、俺たちは芭張を伴って昨夜訪れた境界の壁に向かった。

 侶普は澗宇を守るために砦に残った。どうやら昨夜は華侯焔がいたから、侶普は離れることができたのだろう。些細なことで衝突する二人だが、こういう所で互いの強さを認め合っていることがうかがえる。

 森の中を進みながら、才明がこれからのことを話してくれる。

「また誠人様だけで行って頂くのは心苦しいのですが、あちらの世界で有力な者を見つけて、部下として引き込んで下さい。本当は彼が好ましいと思うのですが――」

「すまんな。話の流れとはいえ、澗宇様の食客になってしまったからな」

 先頭を進む芭張が笑うと、才明があからさまなため息をつく。

「澗宇様はああ見えて抜け目がありませんからね。しっかりしていらっしゃる……芭張殿、どうか良き者を紹介して下さい」

「俺の一族に、まだ若いが優秀な者たちがいる。魔王様の捜索を優先すると思うが、戦場に出れば疲れ知らずで数多の兵を相手にできる」

「頼もしい限りですね。英正ほどの強さが期待できるならば、より強硬な手も打てるようになりますし」

 軍師として魔物の登用を歓迎している才明とは違い、英正は俺の前を歩きつつ、警戒するように芭張の背から目を逸らさずにいる。

 少し肩に力が入り過ぎている気がする。
 俺は「英正」と名を呼び、軽く肩を叩いた。

「しっかり相手を見極めて、仲間に迎えたいと考えている。魔物なら誰でもいい訳じゃない。連れてくることができたら、仲間として受け入れて欲しい」

「は、はい。誠人様の選択であれば、私は従うだけ……心得ております」

 わずかに振り向きながら答える英正の歯切れが悪い。やはり人と魔物で割り切れないものがあるのだろうかと思っていたが、

「特別な配下が増えて、また誠人様の褒美を与える羽目になったら嫌だ、とか考えてたんだろ? 独り占めできる機会が減るもんな」

 最後尾の華侯焔が、からかい気味の声を投げかけてくる。英正の顔が一瞬で赤くなり、「そ、そういう訳では……っ」と動揺を見せながら前に向き直る。

 動揺が答え、か。新しい者を迎えた後は、なるべく英正との時間も作るようにしたほうが良さそうだ。

 多くの者が不満を溜めないように召し抱えるのは、なんとも大変なことなんだな。
 歴史上の名将たちも、このような苦労を覚えていたのかと思っていると、華侯焔が話を続けてきた。

「俺は我慢しないからな。ちゃんと構ってくれないと、動く気力がなくなって何もできなくなるぞ」

 この世界の決まりなのか、ただのワガママなのか分からないが、多分そうなるのだろう。

 俺は受け入れるしかないと覚悟を決めるが、木の上を飛び続ける白鐸は違った。

「まったくワガママなんですからー! 武将の数も増えて、有力な将も来てますから、華侯焔なんかに頼らなくてもいいと思いますー!」

「お前よりも役に立っているだろうが、デカ毛玉! これだけ仕事熱心で有能な俺を使わないなんて選択、あり得んだろ」

「ワタシのほうが役立ってますからー! そもそも貴方は――」

 いつもの賑やかな言い合いが始まる。もう慣れてしまった俺たちは聞き流すが、初めて耳にする芭張は吹き出した。

「誠人殿のところは楽しそうですな! 少々判断を早まったかもな」

 この二人の言い合いを聞いて、なんて好意的に考えられるんだ。
 新たに迎える者も、同じような考えができるといい……と心から思わずにいられなかった。
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