俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

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十二話 真実に近づく時

兄弟の対立

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   ◇ ◇ ◇

 砦に戻り、昂命を縛り上げて牢に閉じ込めた後、俺たちは軍議の部屋に集まった。

 この世界を管理する者を捕らえたという朗報は、澗宇の表情をいつになく輝かせた。

「あの魔導士を捕らえて下さって、本当にありがとうございます! 彼が世界の理……この『至高英雄』を生み出した者。言うことを聞かせることができれば、有利に戦うことができます」

「だが、言うことを聞いてくれるかどうかは怪しいな。性格悪いし、人を惑わしてくる男だ。上手く交渉できるか次第だな」

 嬉々とする澗宇とは裏腹に、華侯焔は慎重だ。どんな人物か直接やり取りしたか否かで、反応が違っているのだろう。

 俺も華侯焔側の意見だ。なかなか掴みどころを見せない才明よりも、悪意を持って人の心を振り回そうとする昂命は危険だ。

 才明が澗宇に身体を向けると、頭を深々と下げる。

「どうか私に昂命と話をさせて下さい。何か有益な情報が分かりましたら、必ず報告致しますので」

「ええ、お願いします。何か必要なことがあれば、なんでも言って下さい」

「お心遣い感謝します。では……」

 もう一度頭を下げると、才明は俺にも一礼して「失礼します」と部屋を出て行く。

 早く話をしたくてたまらないのだろうか、才明の動きが焦っているように見える。

 大丈夫だろうかと思っていると、俺の隣で華侯焔が小さくため息をついた。

「しばらくしたら様子を見に行ったほうがいいかもな。今のアイツは揺らぎやすそうだ」

「……俺に行かせて欲しい。才明には負担をかけさせてばかりだ。できる限り支えてやりたい」

 道中で見せた才明の悩みを思い出しながら、俺は華侯焔を見上げる。
 他の誰かに心を配ることを本当は面白く思っていないのだろうが、それでも華侯焔は口元を綻ばせた。

「あの意気地なしに誠人様を向かわせるのはもったいないが、褒美は必要だからな。ちゃんと餌をやって、しっかりさせてくれ」

 軽く笑ってから、華侯焔は表情を引き締めて澗宇に視線を戻す。

「さて……まずは澗宇、お前と交渉しなくちゃな」

「兄様?」

「捕らえた昂命だが、誠人様の領地に連れて行かせてもらう」

 華侯焔に話を切り出された途端、澗宇の表情が強張る。

「いえ、彼は僕の所で預かります。そうしなければ――」

「誠人様に迷惑がかかる、と言いたいんだろ? それはこっちも言いたいことだ。澗宇、俺たちはお前に迷惑をかけたくない」

 領地を離れたといっても、仲の良い兄弟。この二人が対立するのは珍しい。
 俺は華侯焔に顔を向け、尋ねてみる。

「昂命を置いていると、何かが起きるのか?」

「おそらくな。アイツは格付け一位の志馬威の所にいる軍師……間違いなく取り戻そうと真っ先に手を打ってくるはずだ」
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