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十二話 真実に近づく時

捕獲

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 昨夜、才明は澗宇たちと打ち合わせをしていた。華侯焔も砦に残って澗宇と話をしている。そこで昂命を捕らえたいことや、どうするといいかの話はしているはず。

 あくまで捕獲。倒すことが目的じゃない。
 ならばこの攻撃は――。

 俺は地を蹴り、手を伸ばしながら昂命に向かう。

「何を――うわっ」

 妙な動きを取られる前に俺が昂命に体当たりし、地面に押さえ込む。それと同時に、才明の仕掛けたものが俺たちに降りかかった。

 ばさり。
 微光を帯びた網。肌に触れた瞬間、わずかにピリッと痺れが走る。俺が感じるのはその程度だが、

「ウウ……ッ!」

 昂命は身体を大きく跳ねさせ、硬直し、小刻みに震え出す。
 どうやら網には痺れる術が施されているらしい。俺にほぼ効かないのは、白鐸の加護があるからだろう。

 すぐに皆が俺の所に駆けつけた。

「誠人様、大丈夫か? ……おい才明、巻き込む前提で仕掛けるな!」

 華侯焔の非難を浴びながら、才明は白鐸から降りて微笑む。

「仕方ありません。誠人様に押さえてもらわなければ、魔法で逃げてしまいますから。白鐸の加護を強くかけてもらっていますので、どうかご安心を」

「お前な……誠人様に何も言ってないだろ?」

「動きを読まれないための策ですよ。誠人様なら自ずと気づいて動いて下さると信じておりました」

 才明に言われて、チラリと華侯焔がこちらを見る。昂命を押さえ込み続ける俺に、フッと嬉しげな笑みを浮かべる。

 言葉にしないだけで、どうやら華侯焔の期待に応えられたらしい。
 内心そのことを密かに嬉しく思っていると、英正がしゃがみ込み、俺を覗き込む。

「私が代わって差し上げたいのですが、白鐸様の術は誠人様のみにしか効きません。これから砦まで戻りますので、どうかこのまま昂命を押さえて頂けますか?」

 短く「分かった」と頷いてから、俺はふと気になったことを英正に尋ねる。

「英正、さっきの攻撃は本気で討つものだったが、それも才明に指示されていたのか? 魔法で避けられることを見越して」

 捕らえる目的なのに、英正の攻撃は明らかに加減がなかった。当たれば確実に昂命の命を絶つ攻撃だった。

 英正の瞳が、ほの暗く翳る。

「……いえ、私の独断です」

 多くを語ろうとしない英正にもどかしさを覚えたが、苦しげな顔を見せられると何も言えなくなる。

 これ以上は追い詰めてはいけないと考えている最中、俺と昂命の身体が網に包まれたままフワリと浮かんだ。

「ではこのまま砦に戻りますよー。誠人様はソイツをしっかり抱えていて下さいねー。そうしないと、無駄に痺れて壊れちゃうかもしれないのでー」

 そんな術をいつの間に使えるようになったんだ、白鐸……。

 成長して白鐸が強くなった片鱗を見つつ、壊れてしまっては困るからと、俺は昂命になるべく網が触れないよう、空中で抱え込んだ。
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