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十二話 真実に近づく時

才明の矢

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「目的は結界の修復だけなのか?」

 俺の問いに昂命が肩をすくめ、首を横に振る。

「まさか。本当はこんな小さな穴、わざわざ直すほどじゃないんだけどね。ただ、君が何度も出入りしそうだったから、忠告ついでに穴を塞いだんだよ」

 勝ち誇った笑みを浮かべながら、昂命は杖の先を俺に向けた。

「君は『至高英雄』で腕を試し、強さを求めるためにゲームをしたんでしょ? ズルは止めようよ。じゃないとオレの権限で、君をゲームから強制排除させる」

「……二度と外には出ないと約束すればいいのか?」

「素直だねえ。うん、約束を守ってくれるならいいよ。ゲーム続行だ」

 この世界の管理者なら、俺をここから消すことなど容易いことだろう。一度でも外に出て、世界の真実に触れることができただけでも収穫は大きい。

 魔物の武将を仲間に誘えないことは痛手だが、無闇に争う必要はない。
 俺が頷いて見せると、昂命は杖を下げ、小刻みに頷いた。

「うんうん、良いねえ君。馬鹿正直な人間は好きだな。考えなくてもやり取りできて、扱いやすいもの。疲れない人って好きだよ」

 小馬鹿にされているのは分かったが、俺は黙して反論しない。こういう相手の話は聞き流すに限る。

 昂命を捕らえることができればいいのかもしれないが、奇襲でもしなければ捕らえられない。今日は退き、別の方法を考えたほうが良いと思ったが――才明と白鐸の姿がない。

 どこへ行ったんだと探そうとした時、昂命は俺の後ろにいた芭張との距離を一瞬で詰めた。

「正規の領主は大目に見られるけど、魔物は別。ゲームのバランスが崩れるから、排除させてもらう」

 咄嗟に俺は芭張を庇って突き飛ばすと、竹砕棍を前に構えて防御の姿勢を取る。

 昂命の目が怪しく光り、杖の先端が炎で揺らめいた。

「聞き分けが良くても、オレに逆らうなら容赦しないよ」

 俺たちの行動についていけず、華侯焔と英正が血相を変える。

 そして俺からも血の気が引く。
 至近距離の攻撃は避けられない。どうにか耐えなければと覚悟していると、

「誠人様から離れて頂きましょうか!」

 上空から才明の声が響き渡る。
 見上げると白鐸の上に乗った才明が、矢を構え、昂命に狙いを定めていた。

「そんなもの、オレには効かない――」

 昂命は余裕を持ちながら振り向く。しかし才明を見た途端、動きが固まった。

 矢の先はやけに光り、才明の姿が逆行で見えない。
 だから才明が矢を放ったことに、俺も昂命もすぐには気づかなかった。

 ビュッ、と風切り音がしたと思った途端、格子状の黒い影が虚空に広がったのが見えた。
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