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十四話 決戦に向けて
●名残りを振り払うために
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思わず俺は英正の背に指を立て、ギュッと服を掴む。
昂命と初めて遭遇し、華侯焔と英正が攻撃した時。
明らかに英正は剣に殺気を乗せ、殺す気で突きを繰り出していた。
あの時は気迫のある攻撃だと感じるだけだったが、ずっと頭の中に引っかかり続けていた。
英正は領主と臣下だけでなく、ともに強くなりたいと腕を磨き合う相手。俺にとって華侯焔とはまた違った、特別な存在。
一番手合わせをしている相手だからこそ、あの時の一撃が頭に残り、違和感を強めていった。
この世界の真実と英正の心が見えたことで、あの日の真実も見えてくる。
確信を持って尋ねた言葉に、英正はしばらく固まった後、わずかに頷いた。
「……はい。早かれ遅かれ失う命ならば、誠人様が楽になる道を選んだほうがいいと――」
「二度としないでくれ。英正を失いたくない」
「しかし、私は……」
「俺は最後まで足掻きたいんだ。英正も、表涼も、侶普も消えぬ道を探りたい。だからヤケにならないでくれ。諦めずに、俺と一緒に手を尽くして欲しい」
必ず助ける、とは言えない。
足掻いた先に待っているのは、変わらぬ運命かもしれない。
確約などできない。これは、俺がそれは嫌だと暴れるだけのワガママ。
希望を見続けさせて、結局『至高英雄』とともに消失の運命を辿ることになれば、どれだけの絶望を与えることになるだろうか?
あまりに身勝手なことを言っていると分かっていても、英正には生き抜いて欲しかった。
重たい沈黙が流れた後、掠れた声で英正が答えた。
「分かり、ました。誠人様がそれだけ切に私の存命を望むなら、最期まで足掻いてみせます」
「英正……ありがとう」
頭を上げて英正の顔を見れば、より覚悟を深めて重くなった眼差しと目が合う。
ゆっくりと近づいてくる唇から逃げることなどできず、柔らかな感触に意識をすべて持っていかれる。
わずかに離し、少し角度を変えて唇を押し当ててくるキスを英正は繰り返し、徐々に舌の戯れも交えてくる。
背筋が甘く痺れ、理性が溶かされていく。
体格も、抱き締められる感触や身体の匂いも、口づけの仕方も、何もかも違うのに、昨夜に延々と刻まれ続けた華侯焔とのまぐわいの記憶がよみがえってしまう。
ここには英正だけしかいないのに、三人を相手にしてきた記憶が、俺たちを二人きりにしてくれない。
「ん……ン、ぅ……っ……」
今は忘れなければ。俺に生き足掻くことを約束してくれた英正に、褒美を与えていかないと――。
強引に華侯焔の名残りを振り払おうと、俺は自ら英正と舌を絡め、身体を押し付ける。
英正の下半身から、熱く硬い感触が当たる。
喜んでもらいたくて手を伸ばし、撫でてやれば、英正の舌の動きが激しさを増した。
昂命と初めて遭遇し、華侯焔と英正が攻撃した時。
明らかに英正は剣に殺気を乗せ、殺す気で突きを繰り出していた。
あの時は気迫のある攻撃だと感じるだけだったが、ずっと頭の中に引っかかり続けていた。
英正は領主と臣下だけでなく、ともに強くなりたいと腕を磨き合う相手。俺にとって華侯焔とはまた違った、特別な存在。
一番手合わせをしている相手だからこそ、あの時の一撃が頭に残り、違和感を強めていった。
この世界の真実と英正の心が見えたことで、あの日の真実も見えてくる。
確信を持って尋ねた言葉に、英正はしばらく固まった後、わずかに頷いた。
「……はい。早かれ遅かれ失う命ならば、誠人様が楽になる道を選んだほうがいいと――」
「二度としないでくれ。英正を失いたくない」
「しかし、私は……」
「俺は最後まで足掻きたいんだ。英正も、表涼も、侶普も消えぬ道を探りたい。だからヤケにならないでくれ。諦めずに、俺と一緒に手を尽くして欲しい」
必ず助ける、とは言えない。
足掻いた先に待っているのは、変わらぬ運命かもしれない。
確約などできない。これは、俺がそれは嫌だと暴れるだけのワガママ。
希望を見続けさせて、結局『至高英雄』とともに消失の運命を辿ることになれば、どれだけの絶望を与えることになるだろうか?
あまりに身勝手なことを言っていると分かっていても、英正には生き抜いて欲しかった。
重たい沈黙が流れた後、掠れた声で英正が答えた。
「分かり、ました。誠人様がそれだけ切に私の存命を望むなら、最期まで足掻いてみせます」
「英正……ありがとう」
頭を上げて英正の顔を見れば、より覚悟を深めて重くなった眼差しと目が合う。
ゆっくりと近づいてくる唇から逃げることなどできず、柔らかな感触に意識をすべて持っていかれる。
わずかに離し、少し角度を変えて唇を押し当ててくるキスを英正は繰り返し、徐々に舌の戯れも交えてくる。
背筋が甘く痺れ、理性が溶かされていく。
体格も、抱き締められる感触や身体の匂いも、口づけの仕方も、何もかも違うのに、昨夜に延々と刻まれ続けた華侯焔とのまぐわいの記憶がよみがえってしまう。
ここには英正だけしかいないのに、三人を相手にしてきた記憶が、俺たちを二人きりにしてくれない。
「ん……ン、ぅ……っ……」
今は忘れなければ。俺に生き足掻くことを約束してくれた英正に、褒美を与えていかないと――。
強引に華侯焔の名残りを振り払おうと、俺は自ら英正と舌を絡め、身体を押し付ける。
英正の下半身から、熱く硬い感触が当たる。
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