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第一話 気になるお隣さんをウォッチング
事情は分かったから離縁して
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「お前も薄々は察していると思うが、俺たちはこの世界の者ではない。こことは違う世界から来た……我がウォルディア王国の秘宝を盗み、この世界へ逃げてきた裏切者を見つけにな」
「裏切り者……?」
「王宮の近衛隊長マイラット……優秀で忠実な男だと思っていたんだがな、半年ほど前に宝物庫の最深部で厳重に保管していた百彩の輝石を盗み出し姿を消した。そして奴の行方を探っていたら、お前が通う高校に紛れ込んでいることがようやく分かって、俺たちはここへ来たんだ」
異世界からこの広い世界の中で、よく俺の高校にいるってところまで絞り込めたなあ。
圭次郎……じゃなくて、ケイロたちの世界や国がどんな所なのかさっぱり見えてこないが、違う世界を行き来できて、詳細に調べることができるほど凄いし優秀なんだということは分かる。
だからこそ俺は首を傾げてしまう。
「そこまで分かったんなら、すぐに見つかりそうな気がするんだけど。半年前ぐらいに転校なり転職なりしてきた人間がいないか調べたら、一発で分かりそうな……」
「厄介なことに奴はこの世界の人間と同化し、何食わぬ顔で生活している……違う世界のものには魔法の影響力が激減してしまうせいで、索敵の魔法がほぼ効かない。だからわざわざここまで足を運び、直接捜しに来たという訳だ」
「ふーん……つまりソイツを見つけ出してお宝を取り返せば、もうここには用なしってことで帰っちゃうのか?」
「そういうことだな。もちろんお前も連れて帰るからな、太智」
唐突に俺のことを言われて、思わず「はぁ?!」と大きな声を上げてしまった。
「どうして俺までお前の世界へ行かなくちゃならないんだよ?!」
「俺の伴侶になったんだぞ? 連れて行くに決まっているだろうが。式は国を挙げて行われるから準備に時間はかかってしまうが、その間に徹底して王族のしきたりや我が世界や国のこと、礼儀作法など教養全般を学んでもらう」
お、おい、なんだよその本格的な内容は。あんな簡単でふざけた理由の強制結婚なのに……マジ過ぎて引く。
このまま呆然としていたら、あっという間にその時が来てしまいそうな気がして、俺は考えがまとまる前に口を開いていた。
「俺、嫌だからな! ケイロたちの事情はよく分かったから、もう離婚してくれ。頼む。ってかお前だって俺が相手なんて嫌だろ? 本気で一生添い遂げる気なんてないだろ? ほら、あんなに簡単に結婚できちまったんだから、実は離婚だって同じように――」
「昼間も言ったが、この婚姻はどちらかが死ぬまで解消されない。お前との婚姻は不本意ではあるが、当然俺は死ぬ気はない。となればお前を殺すことになってしまうが、それが望みか?」
「そんな訳ねぇだろ……っ!」
「ならば俺を殺すか?」
「くっ……そんな理由で殺せるかよ」
「奇遇だな、俺も同意見だ。となれば、この婚姻を受け入れて、面倒で大仰な約束事をさっさと進めてしまって、新婚生活を楽しんだほうが有意義だろ」
殺せないから受け入れるって……なんだよその究極の選択は。あと割り切り過ぎ。ケイロ、お前には好きでもない男を娶るっていう葛藤とかないのかよ?!
異世界の人間だからか、ケイロだからなのか、価値観が違い過ぎて理解し合える気がまったくしない。
どうにかして離婚できないのかと必死に頭を動かしている俺へ、ケイロが追い打ちをかけてきた。
「さあ、今日は初夜だ……俺に身を委ねてもらおうか」
立ち上がったケイロが躊躇ない足取りで俺に近づき、肩を掴んで押し倒してくる。
嫌味なほどきれいな顔が俺を見下ろし、今からどう苛めてやろうかと企んでいるような悪戯めいた笑みを唇に浮かべていた。
「裏切り者……?」
「王宮の近衛隊長マイラット……優秀で忠実な男だと思っていたんだがな、半年ほど前に宝物庫の最深部で厳重に保管していた百彩の輝石を盗み出し姿を消した。そして奴の行方を探っていたら、お前が通う高校に紛れ込んでいることがようやく分かって、俺たちはここへ来たんだ」
異世界からこの広い世界の中で、よく俺の高校にいるってところまで絞り込めたなあ。
圭次郎……じゃなくて、ケイロたちの世界や国がどんな所なのかさっぱり見えてこないが、違う世界を行き来できて、詳細に調べることができるほど凄いし優秀なんだということは分かる。
だからこそ俺は首を傾げてしまう。
「そこまで分かったんなら、すぐに見つかりそうな気がするんだけど。半年前ぐらいに転校なり転職なりしてきた人間がいないか調べたら、一発で分かりそうな……」
「厄介なことに奴はこの世界の人間と同化し、何食わぬ顔で生活している……違う世界のものには魔法の影響力が激減してしまうせいで、索敵の魔法がほぼ効かない。だからわざわざここまで足を運び、直接捜しに来たという訳だ」
「ふーん……つまりソイツを見つけ出してお宝を取り返せば、もうここには用なしってことで帰っちゃうのか?」
「そういうことだな。もちろんお前も連れて帰るからな、太智」
唐突に俺のことを言われて、思わず「はぁ?!」と大きな声を上げてしまった。
「どうして俺までお前の世界へ行かなくちゃならないんだよ?!」
「俺の伴侶になったんだぞ? 連れて行くに決まっているだろうが。式は国を挙げて行われるから準備に時間はかかってしまうが、その間に徹底して王族のしきたりや我が世界や国のこと、礼儀作法など教養全般を学んでもらう」
お、おい、なんだよその本格的な内容は。あんな簡単でふざけた理由の強制結婚なのに……マジ過ぎて引く。
このまま呆然としていたら、あっという間にその時が来てしまいそうな気がして、俺は考えがまとまる前に口を開いていた。
「俺、嫌だからな! ケイロたちの事情はよく分かったから、もう離婚してくれ。頼む。ってかお前だって俺が相手なんて嫌だろ? 本気で一生添い遂げる気なんてないだろ? ほら、あんなに簡単に結婚できちまったんだから、実は離婚だって同じように――」
「昼間も言ったが、この婚姻はどちらかが死ぬまで解消されない。お前との婚姻は不本意ではあるが、当然俺は死ぬ気はない。となればお前を殺すことになってしまうが、それが望みか?」
「そんな訳ねぇだろ……っ!」
「ならば俺を殺すか?」
「くっ……そんな理由で殺せるかよ」
「奇遇だな、俺も同意見だ。となれば、この婚姻を受け入れて、面倒で大仰な約束事をさっさと進めてしまって、新婚生活を楽しんだほうが有意義だろ」
殺せないから受け入れるって……なんだよその究極の選択は。あと割り切り過ぎ。ケイロ、お前には好きでもない男を娶るっていう葛藤とかないのかよ?!
異世界の人間だからか、ケイロだからなのか、価値観が違い過ぎて理解し合える気がまったくしない。
どうにかして離婚できないのかと必死に頭を動かしている俺へ、ケイロが追い打ちをかけてきた。
「さあ、今日は初夜だ……俺に身を委ねてもらおうか」
立ち上がったケイロが躊躇ない足取りで俺に近づき、肩を掴んで押し倒してくる。
嫌味なほどきれいな顔が俺を見下ろし、今からどう苛めてやろうかと企んでいるような悪戯めいた笑みを唇に浮かべていた。
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