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第三話 特訓!バスケは格闘技に含まれないが、例外あり

司書の舞野先生

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 ……どうしてお前は、そんなに俺を落としたがるんだ……?!
 いっそ胸ぐらを掴んで思いっきり揺さぶりながらケイロに聞いてしまいたい。

 でも、コイツに触られてしまうと脱力して、そんな気概も気力も奪われて骨抜きになってしまう。
 熱く溶けてしまった目でケイロを見つめながら、薄く開いた唇を持ち上げ、俺は新たなキスを強請る。

 もうこれが答えだと言いたげに、ケイロの目が笑う。そして俺の体が望んだままに唇を近づけて――。

「古角、そこにいるのか?」

 若い男の声が聞こえてきて、俺たちはハッと我に返る。
 小さく舌打ちしながらケイロが離れ、俺はかろうじて戻ってきた力を振り絞って、崩れ落ちないように膝へ力を入れた。

 俺が本棚から顔を覗かせて声の主を見ると、そこにはボサボサ髪の冴えない男――司書の舞野先生がいた。

「こっちにはいませんよ。古角なら、さっき俺たちと入れ違いで図書室を出て行きました」

 古角というのは悠の名字だ。俺の話を聞いて、舞野先生は額を押さえながら大きく息を吐き出した。

「しまった、入れ違いになっちゃったか……古角が探していた本が見つかったから、渡したかったんだが……」

「良かったら俺が明日渡しますか? 同じクラスですし」

「いや、僕が自分で渡すよ。ありがとう……えっと……坂宮君」

 俺の制服の胸元についている名札を見てやっと俺の名前を言うと、舞野先生は踵を返して離れていく。

 行ってくれた……怒られなかったってことは、俺たちが何をしていたかには気づかなかったのか。良かった……。

 あからさまに俺が安堵していると、ケイロはもう見えなくなった舞野先生の背を追うように、さっきまで居た場所を睨んだ。

「……あの男と古角は仲が良いのか?」

「悠は昔から本をよく読んでるから、図書室にも頻繁に出入りしているんだよ。だから司書の舞野先生と雑談することもあるらしいし、好きな作家のことで話が盛り上がる時もあるって聞いたことあるぞ」

 素直に俺の知っていることを言ってから、警戒したままのケイロを見て疑心を感じ取る。

 舞野先生と悠を疑っている――先生はともかく、悠は問題ないだろ。俺にとって一番付き合いが長くて、この校内の中でお互いに気心が知れた相手。その悠の様子がおかしくなることなんて、今までなかったし。

 ちゃんとそこのところを訴えようと思っていたら、ケイロは放っていた光球たちを手元に集め、スゥ……と消した後に息をついた。

「魔力の痕跡はあったが、それ以外の収穫はなし、か……あの二人が魔法を使った形跡はないから、関係はなさそうだな」

「そ、そうか……良かったぁ……」

「長居は無用だ、さっさと体育館へ行ってバスケをするぞ。今日は線外にボールが出た際、それを取りに行きながら近くの年長者に『バスケがしたいです……』と言う練習を――」

「それは試合に関係ないから! ってかお前、それやっちまったら目立つどころじゃないからな? 悪ノリ通り越して、重度のオタク認定されて変人街道まっしぐらになるからな!」

 冗談のような本気の台詞に、俺は全力でツッコむ。
 理解力高いハズなのに、色々真に受け過ぎて俺の世界の常識からズレてしまっているコイツが本気で放っておけない。

 ちゃんと俺がついてやらないと……と考えかけて、女房役がマジで板についてきている自分に泣きたくなった。
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