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第一章
episode_8 謎めいた幼馴染 その1
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「どうしたの、ロザリンデ? 冷めるわよ」
「え?……あ、な、何でもないわお姉様。いただきます」
物思いにふけっていたロザリンデは、マティルダから声をかけられて我に返った。慌ててフォークを手に取ってオムレツを口に運ぶ。ふと見ると、マティルダの結い上げた栗色の髪に見覚えのない象牙の櫛が刺さっていることに気づいた。
「お姉様、その櫛、素敵ね」
マティルダの顔がぱあっと明るくなった。
「でしょう? これ、この前の結婚記念日にテオドールが贈ってくれたのよ。毎年そんなに高価なものを贈ってくれなくてもいいって言うんだけど、お金なら有り余るほどあるから、って」
そう答えて、愛おしげな手つきで櫛を撫でる。ロザリンデの心がまたきゅうっと痛くなった。お姉様は、本当に気づいていらっしゃらないのね。お義兄様は、お姉様のことを愛しているのかしら。愛しているから贈り物をするのか、カモフラージュのためなのか、どちらなの……?
「そう。愛されていらっしゃるのね、お姉様は。……うらやましいわ」
胸の中に広がる何とも言えない嫌悪感を押し殺して、明るく姉に答える。テオドールの本心がどうであれ、マティルダは四人の子の母親となった今でも、心の底から夫を愛している。その夫が、同じ屋根の下で、毎夜、義妹のわたくしの身体をいいように弄んでいることを知ったら、お姉様はどうなるだろう。もしかしたらショックのあまり死んでしまうかもしれない。そしたら、まだ幼い子供達は……それに、考えたくはないけれど、お義兄様がわたくしを後妻にと望まれるかもしれない……嫌、嫌よそんなの。いけない、あのことは絶対に、お姉様に知られてはいけないわ。
「でもわたくしは身体もこんなふうになってしまって、テオドールの妻としての務めが何もできなくなってしまったわ。それに……せめてわたくしもあなたのように美しく生まれていれば良かったのだけど……」
「な……っ、何てことを仰るの、お姉様? 子供達の母親はお姉様しかいらっしゃらないのよ? それにお義兄様だって、ずっと変わらずお姉様を愛していらっしゃるわ。お姉様はいて下さるだけでいいのよ。わたくしには到底できないことをやり遂げられたのだから、もっと自信をお持ちになって?」
思わずマティルダの手を握り締めて力強く答えると、マティルダはどこかさみしそうにふっと笑った。
「そうね……ありがとうロザリンデ。わたくしもあなたには幸せになってもらいたいわ。それにしても、どうしてあなたには縁談が来ないのかしらね。どこへ出しても恥ずかしくないムーア家の令嬢なのに。皆、昨今の殿方は見る目がないのだわ」
「わたくしは今でも十分幸せよ。それに、リュシアンが立派に成人して爵位を継いでくれるまでここでちゃんと見届けなくちゃ。お嫁に行く気になんてなれないわ」
「もう、またそんなことを言って……て、あら、ヘルマン、今から学校?」
「え?……あ、な、何でもないわお姉様。いただきます」
物思いにふけっていたロザリンデは、マティルダから声をかけられて我に返った。慌ててフォークを手に取ってオムレツを口に運ぶ。ふと見ると、マティルダの結い上げた栗色の髪に見覚えのない象牙の櫛が刺さっていることに気づいた。
「お姉様、その櫛、素敵ね」
マティルダの顔がぱあっと明るくなった。
「でしょう? これ、この前の結婚記念日にテオドールが贈ってくれたのよ。毎年そんなに高価なものを贈ってくれなくてもいいって言うんだけど、お金なら有り余るほどあるから、って」
そう答えて、愛おしげな手つきで櫛を撫でる。ロザリンデの心がまたきゅうっと痛くなった。お姉様は、本当に気づいていらっしゃらないのね。お義兄様は、お姉様のことを愛しているのかしら。愛しているから贈り物をするのか、カモフラージュのためなのか、どちらなの……?
「そう。愛されていらっしゃるのね、お姉様は。……うらやましいわ」
胸の中に広がる何とも言えない嫌悪感を押し殺して、明るく姉に答える。テオドールの本心がどうであれ、マティルダは四人の子の母親となった今でも、心の底から夫を愛している。その夫が、同じ屋根の下で、毎夜、義妹のわたくしの身体をいいように弄んでいることを知ったら、お姉様はどうなるだろう。もしかしたらショックのあまり死んでしまうかもしれない。そしたら、まだ幼い子供達は……それに、考えたくはないけれど、お義兄様がわたくしを後妻にと望まれるかもしれない……嫌、嫌よそんなの。いけない、あのことは絶対に、お姉様に知られてはいけないわ。
「でもわたくしは身体もこんなふうになってしまって、テオドールの妻としての務めが何もできなくなってしまったわ。それに……せめてわたくしもあなたのように美しく生まれていれば良かったのだけど……」
「な……っ、何てことを仰るの、お姉様? 子供達の母親はお姉様しかいらっしゃらないのよ? それにお義兄様だって、ずっと変わらずお姉様を愛していらっしゃるわ。お姉様はいて下さるだけでいいのよ。わたくしには到底できないことをやり遂げられたのだから、もっと自信をお持ちになって?」
思わずマティルダの手を握り締めて力強く答えると、マティルダはどこかさみしそうにふっと笑った。
「そうね……ありがとうロザリンデ。わたくしもあなたには幸せになってもらいたいわ。それにしても、どうしてあなたには縁談が来ないのかしらね。どこへ出しても恥ずかしくないムーア家の令嬢なのに。皆、昨今の殿方は見る目がないのだわ」
「わたくしは今でも十分幸せよ。それに、リュシアンが立派に成人して爵位を継いでくれるまでここでちゃんと見届けなくちゃ。お嫁に行く気になんてなれないわ」
「もう、またそんなことを言って……て、あら、ヘルマン、今から学校?」
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