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第一章
episode_7 テオドール・ロチルド伯爵という男 その2
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とは言え、ムーア子爵家の後継者問題はまだ棚上げになったままだ。マティルダは総領娘として責任感の強い女性だったこと、また弟のアルフレッドが亡くなった時の気も狂わんばかりに嘆き悲しむ両親の姿をおぼろげに覚えていたので、周囲の反対を押し切って、あえてもう一人、子供を産むことを望んだ。絶対に男子を産んでみせる……その執念を神が聞き届けたのか、産まれたのは男児だった。その報せを受け取ったウォレスは大声を上げて泣き崩れた。
だが、そのためにマティルダが払った代償は大きかった。元々、もう出産に耐えらえるほどの体力が残っていなかったマティルダの体調は決定的に悪化し、回復の見込みがなさそうなのは誰の目にも明らかだった。リュシアンと名付けられた息子の洗礼式が行われるのとほぼ時を同じくして、ロチルド伯爵家の侍医はテオドールに告げた。
もう奥様との閨はお止め下さい、と。
テオドールが義妹のロザリンデのことを、ねちっこく絡みつくような目つきで見るようになったのは、その直後からだ。そしてリュシアンが一歳の誕生日を迎えた頃、ついに彼は長年あたためてきた企てを実行に移した。伯爵家の領地経営を手伝ってもらうという名目でロザリンデを毎夜、書斎に呼び出し、ある日後ろから羽交い絞めにして、コルセットの中に手を差し込んで乳房を揉みしだきながら、耳元でこう囁いた。
君たち姉妹の平穏な生活と、ムーア子爵家の家名を守りたいのなら、私の言う通りにしなさい。純潔は守ってやるから、結婚するまで私の慰み者になれ。君の身体は仕込み甲斐がある、と……。
当然ロザリンデにとっては、承服しがたい話だった。だが子供達と庭で遊ぶことすらままならないほど弱ってしまった姉と、母代わりに慕ってくる甥と姪、そして故郷で爵位を守っている年老いた両親のことを思うと、テオドールの毒牙にかかることを受け入れる以外の選択肢はなかった。結婚するまで、この家を出てゆくまで、わたくしが耐えればすべて丸くおさまる、と歯を食いしばって耐えてはいたが、ほぼ毎日繰り返されるテオドールの執拗で容赦のない責めと、自らの意思に反して感じてしまうようになった身体の変化がさらにロザリンデを苦しめた。テオドールはその筋の相当な手練れだったらしく、一年が過ぎる頃にはロザリンデの身体は無垢な処女には似つかわしくないほど敏感になっていて、昼日中でも何かのきっかけで子宮の奥がずくりと疼いてしまうことがあり、そのたびにロザリンデは教会に駆け込んで、懺悔にひとときの救いを求めた。
やがてロザリンデは十九歳になったが、縁談は一つも来ていなかった。いや、来ていなかったのではない、実のところは国中の名門貴族から縁談の申し込みが山ほど来ていた。それをテオドールが陰で手を回してことごとく潰していたことを、ロザリンデは知る由もなかった。
だが、そのためにマティルダが払った代償は大きかった。元々、もう出産に耐えらえるほどの体力が残っていなかったマティルダの体調は決定的に悪化し、回復の見込みがなさそうなのは誰の目にも明らかだった。リュシアンと名付けられた息子の洗礼式が行われるのとほぼ時を同じくして、ロチルド伯爵家の侍医はテオドールに告げた。
もう奥様との閨はお止め下さい、と。
テオドールが義妹のロザリンデのことを、ねちっこく絡みつくような目つきで見るようになったのは、その直後からだ。そしてリュシアンが一歳の誕生日を迎えた頃、ついに彼は長年あたためてきた企てを実行に移した。伯爵家の領地経営を手伝ってもらうという名目でロザリンデを毎夜、書斎に呼び出し、ある日後ろから羽交い絞めにして、コルセットの中に手を差し込んで乳房を揉みしだきながら、耳元でこう囁いた。
君たち姉妹の平穏な生活と、ムーア子爵家の家名を守りたいのなら、私の言う通りにしなさい。純潔は守ってやるから、結婚するまで私の慰み者になれ。君の身体は仕込み甲斐がある、と……。
当然ロザリンデにとっては、承服しがたい話だった。だが子供達と庭で遊ぶことすらままならないほど弱ってしまった姉と、母代わりに慕ってくる甥と姪、そして故郷で爵位を守っている年老いた両親のことを思うと、テオドールの毒牙にかかることを受け入れる以外の選択肢はなかった。結婚するまで、この家を出てゆくまで、わたくしが耐えればすべて丸くおさまる、と歯を食いしばって耐えてはいたが、ほぼ毎日繰り返されるテオドールの執拗で容赦のない責めと、自らの意思に反して感じてしまうようになった身体の変化がさらにロザリンデを苦しめた。テオドールはその筋の相当な手練れだったらしく、一年が過ぎる頃にはロザリンデの身体は無垢な処女には似つかわしくないほど敏感になっていて、昼日中でも何かのきっかけで子宮の奥がずくりと疼いてしまうことがあり、そのたびにロザリンデは教会に駆け込んで、懺悔にひとときの救いを求めた。
やがてロザリンデは十九歳になったが、縁談は一つも来ていなかった。いや、来ていなかったのではない、実のところは国中の名門貴族から縁談の申し込みが山ほど来ていた。それをテオドールが陰で手を回してことごとく潰していたことを、ロザリンデは知る由もなかった。
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