神々の依頼、面倒なんですけどっ!

はなを

文字の大きさ
26 / 173
閑話 第1章

25.閑話:ベスパとの出会い

しおりを挟む
私はエルフでしたが精霊との契約はできませんでした。何度か試みましたが精霊と出会うことは出来ず、5回目の契約が失敗に終わった時、エルフの国から追放されてしまいました。幸い戦う事は得意でしたので冒険者として暮らしていましたが、どうしても血の匂いに慣れることが出来なかったことと、チームと言う枠組みに慣れることが出来ずにいました。でも生きるために仕事は必要ですので、時々臨時にチームに参加していました。

ある日冒険者ギルドよりダンジョンに潜るチームがあるが、前衛が1人欲しいと言っているので臨時でお願いできないかと言われ入りました。その時たまたまダンジョンにいた高ランクの魔物を幸運が重なって倒すことができ、報奨金と素材代で1人白金貨5枚を手に入れることが出来たのです。

私は冒険者に飽きていていましたが世界を渡り歩くことは割と好きでした。知らない場所、知らない食事、知らない物など興味をそそられていましたので、冒険者を辞め、行商人として活動することにしました。この大陸のほとんどの場所に行きました。そして他国では珍しい物けど、その国では簡単に手に入る物を見つけ出し行商を続けました。それなりに儲けはありました。

エヴァ様がイブの街に到着した頃私もこの街に流れ着いたのですが、他国の知識を活かして活動していたことで、正確な情報収集能力を買われて商業ギルドで働くこととなったのです。それから数年後、前ギルド長のオースティン様がその地位をエヴァ様に渡したとき、私も副ギルド長となり、エヴァ様の補佐をすることになったのです。この頃はエルフ国から魔力ポーションの値上げを言われており、オースティン様はそれに激しく抵抗していました。しかしエルフ国王からそれならば品物を提供しないと言われてしまい、その責任を取る形で商業ギルド長という地位をエヴァ様に譲ることになったのです。国からもエルフであるエヴァ様をギルド長に据えれば優先的に魔力ポーションを卸して貰えるという思惑もあったようですが、あいにくとエヴァ様と私は追放された身でしたので、そのようなことはなかったのですけどね。
そうして数年が経ったとき、現れたのがあの人でした。その日も行商人がギルドを訪れ、それぞれが自分が向かう国の現状を知るための重要な情報交換をロビーで行っており、がやがやしていましたがそれは日常的な事でした。私はそれを暫く眺めて自分の執務室へと向かい階段を上がって行きました。そして夕刻が近い頃、執務室の扉がノックされたのです。ドアを開けると受付係の男性が立っていて、オースティン様がエヴァ様に話があると言っていると要件を告げました。私は自分の執務室の隣にあるギルド長室のエヴァ様にオースティン様が来ているので案内することになることを告げました。その時部屋はかなり散らかっていたので、片付けの魔法でそれらを全て整頓しました。この魔法結構魔力使うので片付けくらい自分で出来るようになって欲しいところです。そしてその後呼びに来た受付の男性と一緒に1階の受付へ降りていきました。そこにはオースティン様とその横に黒髪の成人したてとった雰囲気をした男の子が立っていました。私に気づいたオースティン様は

「ベスパさん。ちょっと話があるのです。エヴァさんと4人で。会議室お借りできませんか?」

とやや焦ったような口調で言われたのです。あの冷静沈着な元ギルド長にしては珍しいことです。私は

「かまいませんよ。オースティンさんが来るくらいですからよっぽどでしょう。ギルド長室にエヴァが待機してますよ・・・・。ところでこちらの方は?」

と私は男の子の顔を見ました。ハンサムという感じではなく、普通な感じがしました。商人ではなく、職人という感じもなく、本当に普通の男の子という印象でした。ですからその子がオースティン様と連れ立ってくるというのはなんとも奇妙に感じました。オースティン様は

「これからお話することのと言いますか・・・・」

と言われました。元凶?私は意味が分かりませんでしたが、オースティン様が慌てるくらいのことなのでしょう。それにこの男の子が関わっているのでしょうか?しかもこの受付では言えない事なのでしょう。奇妙な感じを受けましたが取りあえずエヴァ様の所に案内することにしましょう。

「・・・そうですか・・・では私の後についてきてください」

と言い、階段を上り始めました。その後ろにオースティン様と男の子はついてきていました。オースティン様は男の子に

「あの大勢の目がある中で、ギルド長に会いたいと希望し許可されるという状況は基本的にはないことなんです。それでハジメさんが名乗ってしまうと周囲の商人にハジメさんの名前が知れ渡りリスクが高まることが想像されるんです」

と男の子に言った。彼の名前はハジメさんと言うことをその時知りました。オースティン様がそう言うということはよほどの事かもしれません。

私たちは2階へと進み、一番奥の部屋に案内しました。扉を開けるとそこにエヴァ様が座っていましたが、立ち上がり椅子をオースティン様とハジメさんに勧めました。私はエヴァ様の横に立ちます。何かあっとき対応できるようにこの位置が私にとっては動きやすいのです。

「私がギルド長のエヴァと申します」

とハジメさんに向かいエヴァ様が挨拶をしまして、オースティンに向かい、

「何か話があるとか、あなたの事ですからのことなのでしょう?何があったのですか?」

問いました。オースティン様はギルド長を退いた後、商業ギルドには来ることはありませんでした。元ギルド長がギルドに来るということは職員にとっては苦痛であると思った為だと私は思いました。そんなオースティン様がギルドに来るというのは

「こちらのハジメさんが魔力ポーションをました。恐らく彼の事ですから定期的な供給が可能だと思われます」

と言いエヴァ様の顔を見つめました。大きな事を言わず、地道に行動するオースティン様の興奮した声が部屋に響きました。私の耳には魔力ポーションを作ったと聞こえたのですが何かの間違いではないでしょうか?とエヴァ様の顔を見ると驚愕の表情を浮かべ

「本当なのですか?魔力ポーションは私たちエルフの秘薬的な扱いでその製造方法を知るのは人間では極々一部のみと聞いているのですが。製造方法を知っていても薬草自体が人間が住む土地には少なんですが・・・」

と疑うような口調で言いました。そうなのです。魔力ポーションは王宮付きの調剤師にならないと習得できないのです。街には引退した者が生涯口外しなように言われるのです。そして口外しようとしても言葉にし体が硬直してしまう呪いのようなものを掛けられるのです。そのような状況ですので外部に漏れることはエルフ国が誕生してから漏れることはなかったのです。
オースティン様がハジメさんに視線を移すと彼は魔力ポーションの入った調剤瓶を出した。エヴァ様はその調剤瓶を手に取り観察している。

「・・・・舐めてもいいですか?」

とエヴァ様が言うので

「私が舐めます。貴方はギルド長なのですよ」

と瓶を取り上げる。ハジメさんが頷くのを確認して戸棚から出した小皿に魔力ポーションと言うものを注ぎました。それを口に入れると確かに片付けの魔法でかなり減っていた魔力放出の疲れが一気に取れたのです。これは間違いなく魔力ポーションでしょう。でもどうやってこれを?という疑問が湧きました。そのためギルド長へ投げることにしたのです。私はエヴァ様にその皿を渡しました。彼女はそれを一口飲み、

「こ、これは本当に魔力ポーションですね。品質も申し分ないです。魔素草はどうやって確保したんでしょうか?」

と言い、ハジメさんをまじまじと見つめていました。ハジメさんは

「魔素草はこの街の近くに森の中にある池のほとりやしろの周りに生えていましたよ。8株残していますのでそのうちまた増えるのではないかと」

「ナハル様の祠の周囲ですか。ベスパ、調査の人材を冒険者ギルドに依頼して確認をしてもらうようにして。絶対採取しないように厳命して。信頼できる冒険者がいいわ。出来れば指名依頼がいいかしら。≪暁の騎士≫が居ればいいのだけれど・・・」

とエヴァ様がそう言うので私はすぐに冒険者ギルドに向かったのでした。暁の騎士が居なければ私が直接出向いても
いいとさえ思っていました。この街で魔力ポーションが作れるかもしれないという期待でウキウキしていたのは仕方がないことなのです。えぇ、仕方ないことなのです。

冒険者ギルドに着き受付へ向かおうとするとちょうど食堂から出てきた2人の女性に気づきました。私は

「あぁ、リアンさん。セリーヌさん、丁度良かったです。カリムさんとメルさんも御一緒ですか?」

と声をかけ2人近づきながら聞きました。

「あれ?ベスパさん珍しいですね冒険者ギルドへ来るなんて。2人は今支払いしているのですぐきますよ」

と回復魔法使いのセリーヌさんが朗らかに微笑む。盗賊のリアンさんも右手を挙げて振ってくれました。私はお辞儀で答えておきました。

「あれ?ベスパさんじゃん。どしたの?」

と戦士のカリムさんと魔術師のメルさんも現れました。本当に丁度いいタイミングでした。

「丁度良かった。商業ギルドからの指名依頼を暁の騎士のみなさんに受けて頂きたいのです」

暁の騎士の皆さんはランクはまだ低いものの丁寧な仕事をこなすことで名を知られているのです。特に研究者から多くの指名依頼をされるということでも仕事の丁寧さが伺えるのです。冒険者ギルドを通して彼らに依頼することに成功したのです。

その次の日には確かに言われた姿の薬草があったという報告を受けることが出来ました。その日のうちに冒険者ギルドと町長のウォールと相談し、ナハル様のやしろの周囲を柵で囲み、柵内の植物採取不可の看板を立てることになったのです。勿論参拝者は通れるようになっていますよ。

それがハジメさんが起こす多くのトラブルの始まりだったのを魔力ポーションが作れるという幸せな感情に支配されたこの時の私はまだ知らなかったのです。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

処理中です...