それを愛と呼ぶのだろう

稲葉鈴

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1. パーヴァリはメラルティン伯爵家の次男である

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 クイスマには王領地があり、そこには王立の学院がある。全寮制で、貴族の男子は侯爵家の嫡男だろうが子爵家の五男だろうが全員入学の義務がある。

 その、レヘコスオ学院には、十歳から二十歳までの男子が暮らしている。途中、十五歳になった時に、隣にある士官学校への編入を許された。騎士に連なる家系のものと、勉学に自信がない次男以降がこちらへ移籍する。自分はありがたいことに、殿下の将来の側近の一人、ケルッコ・マーサロとクラスが同じであり、取り立ててもらえる事になったのでそのままレヘコスオ学院にて色々と磨くこととした。

 我がメラルティン伯爵家は代々特に王家との関わりは深くはなかった。王女様が降嫁しているとか、王妃様を輩出しているとか、そういった関わり合いだ。何代かに一人は陛下のお側付きになっていたりはする。

 レヘコスオ学院には、貴族家の子弟だけではなく、裕福な商人の子弟などへの門戸も開かれている。とはいえ、誰でも彼でも入学できるわけではない。一定以下の者の足きりをするための入学試験もあるし、何より貴族家からの推薦状が必要である。

 すなわち、貴族家の子弟以外のものが入学している場合、それはどこかの家の息がかかっているという具合だ。領地に住まう優秀な子供を入学させて学ばせ、後々当主の側仕えにする、ということはよくある。気にするほどでもない。

 実家のメラルティン伯爵家は兄が継ぐ。姉のリューディアはキュラコスキ伯爵家に嫁いでいった。自分に残された道は騎士になって身を立てるか、兄の補佐官になるか、と言ったところだった。仲良くなったケルッコが、殿下の側近の一人、という口を持ってくるまでは。

 殿下は、五つほど年上だ。カリキュラムの都合上ご尊顔を拝することはないし、遠目にお見かけしたことがある程度だ。それも、あの人だかりが恐らくそう、といった程度の。

 兄がその近くにいるのであれば寄っていくことも出来たであろうが、我が兄はもう少し年嵩であり、在学期間が兄と殿下は被っているので親しくさせて貰った、と聞いたことはあるが、そこに自分を呼ぶほどの親しさではないようであった。

 わざわざそのお側近くまで行って、アピールするほどのものを自分は持ち合わせていないから、遠目に見ているのみであった、というのはある。

 ケルッコの兄も、殿下を取り巻くあの中の一人だという。主席次席第三席、第四席、第五席。この辺りまでの者と切磋琢磨し、良いと思う者を殿下の側近として召し上げよ。と、ケルッコは兄より命を受けているそうだ。実家の父ではなく兄というところに、ケルッコはよくぼやいていた。

 殿下の側近となって王城に上がるようになれば一代限りかつ領地はないとはいえ子爵位を頂けるし、そこから何か良い働きをすればその子爵位は子孫にも継がせることが出来るようになる、ともいう。領地についてはそれこそ働き次第、だ。

 殿下の手足となって働けるものは、何人いても困らない。

 そういう訳で、自分はそのために勉学などに励んだ学生生活を謳歌したのだ。
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