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16.母の愛
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「パーヴァリ」
さて翌朝。書き上げた招待状を配布しにいざ行かん、としたところで、母に呼び止められる。
「どうしました」
「お前、今日出仕後は戻ってくるのよね?」
「そうですね。流石にこのまま夜会には参れませんから」
通常の、殿下方の代理の参加であれば、そのままでもよいかもしれないが。流石に自分の婚約を発表する場に、仕事着のまま、というのは、よろしくないだろうことは分かる。一度戻って、準備をする予定だ。
「ではその時に、母の部屋までおいでなさい」
「承知いたしました。行ってまいります」
どんなお小言を言われるのやら。
それは帰ってきてからにすることにして、出仕する。本日仕事は元々入れていなかったため、出仕したら侍従のヘイケラと執事のラッセに驚かれた。
「殿下かフィルップラ卿、ヒエッカランタ卿はいらっしゃるだろうか」
「皆様おいでです」
「それは幸先がいい」
これ幸いと皆々様のご予定を確認したら、皆様おられるとの事。まずは直属の上司にあたる、ヒエッカランタ卿に招待状をお渡ししよう。
「ありがとう」
二人に礼を言って、ヒエッカランタ卿の執務室のドアをノックする。ここは執政棟の一部ではあるが、外部の人間が来るような場所ではない。そのため、重厚ではあるが装飾のほとんどない木の扉である。
「入れ」
「失礼します」
「メラルティンか。どうした」
お前今日は休みだったろうと言われると、そうであるとしか答えようがない。夜会三連打なので今日からお休みをいただいている。
「実は、婚約がまとまりまして」
「わざわざ言いに来たのか……! ああ、あー。いや出席はしないぞ」
「それでもやはり、招待状を出した、というのが必要なのです」
「なんか面倒な事でもあるのか」
ヒエッカランタ卿が、それまで目を通していた書類を置いて、こちらを見た。まあ、言うほど面倒でもないのだけれど。
「彼女が、クラミ子爵令息もご紹介されていた、との事で」
「ああ、かっさらった形になったのか」
「一応紹介自体は、自分の方が先ではあったのですが」
あれを紹介、としていいのかどうか、というのはまた別の話になってしまうのだ。駄目な気がするんだが。あれから二年も経っていることだし。
「一応メルヴィ嬢を婚約者として紹介するために、いくつかの夜会には出席する予定でいます」
「それで、我々の祝福がある、と話を持って行きたいわけだな」
「それもありますが、本題はしばらく忙しくなります。ですね」
「お前そういうところあるよな。分かった。何か手配しておこう」
そう言って、ヒエッカランタ卿は席を立った。フィルップラ卿のところと、殿下の所に、共に出向いてくれるつもりらしい。部下に対して手厚いなと思うが、多分、仕事に疲れていて一休みしたかったのもあったのだろう。
フィルップラ卿もクラウス殿下も、当日にはちょっとしたものを贈ると言って下さった。おそらくは花の類だろう。とてもありがたい。それよりも、相談に乗ってほしい。
「婚約者には、何を贈ればよろしいでしょう」
「お前は何を言っているんだ」
ドレスに靴に宝飾品に装飾品と、いくらでも思いつくだろう。殿下のそのお言葉は、確かにその通りなのだけれど。
「本日のクレーモア子爵家での夜会で、最初の発表をします。決まったのは昨夜です。お披露目式は四日後を予定していますが、今日の夜会前に、何か贈った方が良いものかと」
「ああ、そうだな。それは贈った方がいい」
「俺に聞くのか。いや待て、兄が何を贈ったのかを思い出そう。そうすればいいのか」
ドレスに靴、宝飾品に装飾品。ぱっと浮かぶどれもこれもが、即日用意できるようなものではない。そこまでは、自分だってわかるのだ。
「おいラッセ。誰かラッセを呼んでこい」
「ただいま」
年の功に頼ることにした殿下が、侍従に執事のラッセを呼ぶようにと命じる。先ほど殿下方の居場所を聞いたので不審に思われていたのだろうか、ラッセは近くで待機していてくれたようであった。
「お母上にお話をされるべきですな」
「そうなりますか」
「そうなります。跡継ぎではなくとも、そういう物をお母上はご用意されていると思われます」
「ありがとうございます。相談してみます」
母に呼ばれているのは、これだとありがたいのだが。
クラウス殿下の場合は婚約がまとまるまでに時間があったので、殿下がご自身でご準備されたという。フィルップラ卿の場合は、ご嫡男であらせられるから、ご実家に伝わるものを。ヒエッカランタ卿は何か考え込んでおられた。
「思い出した。義姉に言われて、ほぼ言われるがままに発注した」
あの頃は忙しくて眠くて眠くて、そういう物かと思っていたそうだという。自分で気が付いた私の方がましじゃなかろうか。不要な事であるから、口には出さないのだが。
「おい、メラルティンの方がましになってるぞ」
「殿下、お口に出されませぬよう」
「そうは言うがな、ラッセ」
「それよりもヨアキム、それは絶対にフローラ嬢に言うなよ」
「多分もう言った」
「お前と、お前という奴は」
とりあえず仲良く喧嘩している殿下と、フィルップラ卿とヒエッカランタ卿をその場において、自分はラッセの助言通りに帰宅することとした。やはりというか、今日の今日で出来ることは、何もないということだ。
あと先人の話を聞いて思ったのは、男と違って女性は婚約のお披露目式を、大切だと思っている、ということだ。ないがしろにしないで済むといいのだが。
「戻りました」
今日は仕事をしに行ったわけではないので、それでもまだ昼前である。母は起きているとメイドから聞いたので、母の部屋を訪れる。
「お帰りなさい」
母は丁度、兄の奥方と夏の終わりのバザーに出すという手仕事をしている所だった。なんでもハンカチに皆で刺繍をして、それを売るのだという。伯爵家が懇意にしている商会で取り寄せた布に糸だから物もよく、よく売れるのだという。買うのは、貴族家に仕える者達であるという。まあ、仕える主の作ったものだから、欲しい者は欲しいだろう。
「お話とは、何でしょう」
こちらの話の前に、あちらからのお話を聞いてしまうこととする。刺繍を刺す母たちからは離れた、一人掛けのソファに腰かけて、手仕事を眺める。あんな細かい作業、よくできるものだ。
「お前、メルヴィさんにあげる装飾品の準備はしてあるの?」
「ああ、丁度その相談もしたかったのです」
「あら、自分で気が付いたの? 偉いじゃない」
「ニコデムスよりよろしいわ」
兄よ。あなたは長らく婚約されていなかったか。いや問うまい。長すぎて気が付かなかったのかもしれぬ。
「良い子には、母からプレゼントをあげましょう」
「助かります」
母付きのメイドが、こちらに箱を二つばかり持ってきた。
「一つは、ラリエット」
それは一本の、ひも状の装身具であった。端と端を首元で交差させてその身を飾るものである。輪にするための留め具がないところが、ネックレスとの違いだろうか。使われているのは緑の石で、これは確か、我が領地から算出されているものだ。宝石ではあるのだけれど、一粒一粒が小さく、なるほどこれなら、自分の給料でも購入が出来る。
「もう一つは、トルク」
こちらもネックレスの一種である。ブロンズで仕立てられたそれは、よく磨かれていてきらきらと輝いている。ラリエットともネックレスとも違って柔軟さがない。胸の前で止めるように、留め具がついている。その留め具に、同じような緑の石がはまっているが。
「ラリエットの方を、いただけますか」
「よろしくてよ。私は彼女を、歓迎しましょう。まだお会いしたことありませんけれど」
「そういえば、そうでしたね」
メルヴィ嬢を伴って、音楽会やお茶会に顔を出したが、そこには母の姿も兄の奥方の姿もそう言えばなかった。まあ、仕事で顔を出している場であるから、それもそうなのだろうけれど。
「あなた今日は早めに準備してあちらにいらしてね」
「はい」
「四日後のお披露目のお式の後、メラルティン家の夜会があることもちゃんと伝えるのですよ」
「ありましたっけ」
「あります」
「しかとお伝えいたします」
それでは、と伝えて席を立つ。
母上のお小言が飛んでくる前に、撤退した。もう長らく、実家の夜会には参加していない。単に他の夜会に顔を出していたり、そうでなければ仕事をしていただけのことである。実家の夜会であれば、ほら、家族が出ているからよいと思っていたのだし。
ただ。そうだ。実家の夜会に顔を出さない、と言うことは、不仲であると思われることもあるのだ。たんに甘えさせてもらっていただけなのだが。
外野というものは、何をどう、捉えるか分からないのだから。
さて翌朝。書き上げた招待状を配布しにいざ行かん、としたところで、母に呼び止められる。
「どうしました」
「お前、今日出仕後は戻ってくるのよね?」
「そうですね。流石にこのまま夜会には参れませんから」
通常の、殿下方の代理の参加であれば、そのままでもよいかもしれないが。流石に自分の婚約を発表する場に、仕事着のまま、というのは、よろしくないだろうことは分かる。一度戻って、準備をする予定だ。
「ではその時に、母の部屋までおいでなさい」
「承知いたしました。行ってまいります」
どんなお小言を言われるのやら。
それは帰ってきてからにすることにして、出仕する。本日仕事は元々入れていなかったため、出仕したら侍従のヘイケラと執事のラッセに驚かれた。
「殿下かフィルップラ卿、ヒエッカランタ卿はいらっしゃるだろうか」
「皆様おいでです」
「それは幸先がいい」
これ幸いと皆々様のご予定を確認したら、皆様おられるとの事。まずは直属の上司にあたる、ヒエッカランタ卿に招待状をお渡ししよう。
「ありがとう」
二人に礼を言って、ヒエッカランタ卿の執務室のドアをノックする。ここは執政棟の一部ではあるが、外部の人間が来るような場所ではない。そのため、重厚ではあるが装飾のほとんどない木の扉である。
「入れ」
「失礼します」
「メラルティンか。どうした」
お前今日は休みだったろうと言われると、そうであるとしか答えようがない。夜会三連打なので今日からお休みをいただいている。
「実は、婚約がまとまりまして」
「わざわざ言いに来たのか……! ああ、あー。いや出席はしないぞ」
「それでもやはり、招待状を出した、というのが必要なのです」
「なんか面倒な事でもあるのか」
ヒエッカランタ卿が、それまで目を通していた書類を置いて、こちらを見た。まあ、言うほど面倒でもないのだけれど。
「彼女が、クラミ子爵令息もご紹介されていた、との事で」
「ああ、かっさらった形になったのか」
「一応紹介自体は、自分の方が先ではあったのですが」
あれを紹介、としていいのかどうか、というのはまた別の話になってしまうのだ。駄目な気がするんだが。あれから二年も経っていることだし。
「一応メルヴィ嬢を婚約者として紹介するために、いくつかの夜会には出席する予定でいます」
「それで、我々の祝福がある、と話を持って行きたいわけだな」
「それもありますが、本題はしばらく忙しくなります。ですね」
「お前そういうところあるよな。分かった。何か手配しておこう」
そう言って、ヒエッカランタ卿は席を立った。フィルップラ卿のところと、殿下の所に、共に出向いてくれるつもりらしい。部下に対して手厚いなと思うが、多分、仕事に疲れていて一休みしたかったのもあったのだろう。
フィルップラ卿もクラウス殿下も、当日にはちょっとしたものを贈ると言って下さった。おそらくは花の類だろう。とてもありがたい。それよりも、相談に乗ってほしい。
「婚約者には、何を贈ればよろしいでしょう」
「お前は何を言っているんだ」
ドレスに靴に宝飾品に装飾品と、いくらでも思いつくだろう。殿下のそのお言葉は、確かにその通りなのだけれど。
「本日のクレーモア子爵家での夜会で、最初の発表をします。決まったのは昨夜です。お披露目式は四日後を予定していますが、今日の夜会前に、何か贈った方が良いものかと」
「ああ、そうだな。それは贈った方がいい」
「俺に聞くのか。いや待て、兄が何を贈ったのかを思い出そう。そうすればいいのか」
ドレスに靴、宝飾品に装飾品。ぱっと浮かぶどれもこれもが、即日用意できるようなものではない。そこまでは、自分だってわかるのだ。
「おいラッセ。誰かラッセを呼んでこい」
「ただいま」
年の功に頼ることにした殿下が、侍従に執事のラッセを呼ぶようにと命じる。先ほど殿下方の居場所を聞いたので不審に思われていたのだろうか、ラッセは近くで待機していてくれたようであった。
「お母上にお話をされるべきですな」
「そうなりますか」
「そうなります。跡継ぎではなくとも、そういう物をお母上はご用意されていると思われます」
「ありがとうございます。相談してみます」
母に呼ばれているのは、これだとありがたいのだが。
クラウス殿下の場合は婚約がまとまるまでに時間があったので、殿下がご自身でご準備されたという。フィルップラ卿の場合は、ご嫡男であらせられるから、ご実家に伝わるものを。ヒエッカランタ卿は何か考え込んでおられた。
「思い出した。義姉に言われて、ほぼ言われるがままに発注した」
あの頃は忙しくて眠くて眠くて、そういう物かと思っていたそうだという。自分で気が付いた私の方がましじゃなかろうか。不要な事であるから、口には出さないのだが。
「おい、メラルティンの方がましになってるぞ」
「殿下、お口に出されませぬよう」
「そうは言うがな、ラッセ」
「それよりもヨアキム、それは絶対にフローラ嬢に言うなよ」
「多分もう言った」
「お前と、お前という奴は」
とりあえず仲良く喧嘩している殿下と、フィルップラ卿とヒエッカランタ卿をその場において、自分はラッセの助言通りに帰宅することとした。やはりというか、今日の今日で出来ることは、何もないということだ。
あと先人の話を聞いて思ったのは、男と違って女性は婚約のお披露目式を、大切だと思っている、ということだ。ないがしろにしないで済むといいのだが。
「戻りました」
今日は仕事をしに行ったわけではないので、それでもまだ昼前である。母は起きているとメイドから聞いたので、母の部屋を訪れる。
「お帰りなさい」
母は丁度、兄の奥方と夏の終わりのバザーに出すという手仕事をしている所だった。なんでもハンカチに皆で刺繍をして、それを売るのだという。伯爵家が懇意にしている商会で取り寄せた布に糸だから物もよく、よく売れるのだという。買うのは、貴族家に仕える者達であるという。まあ、仕える主の作ったものだから、欲しい者は欲しいだろう。
「お話とは、何でしょう」
こちらの話の前に、あちらからのお話を聞いてしまうこととする。刺繍を刺す母たちからは離れた、一人掛けのソファに腰かけて、手仕事を眺める。あんな細かい作業、よくできるものだ。
「お前、メルヴィさんにあげる装飾品の準備はしてあるの?」
「ああ、丁度その相談もしたかったのです」
「あら、自分で気が付いたの? 偉いじゃない」
「ニコデムスよりよろしいわ」
兄よ。あなたは長らく婚約されていなかったか。いや問うまい。長すぎて気が付かなかったのかもしれぬ。
「良い子には、母からプレゼントをあげましょう」
「助かります」
母付きのメイドが、こちらに箱を二つばかり持ってきた。
「一つは、ラリエット」
それは一本の、ひも状の装身具であった。端と端を首元で交差させてその身を飾るものである。輪にするための留め具がないところが、ネックレスとの違いだろうか。使われているのは緑の石で、これは確か、我が領地から算出されているものだ。宝石ではあるのだけれど、一粒一粒が小さく、なるほどこれなら、自分の給料でも購入が出来る。
「もう一つは、トルク」
こちらもネックレスの一種である。ブロンズで仕立てられたそれは、よく磨かれていてきらきらと輝いている。ラリエットともネックレスとも違って柔軟さがない。胸の前で止めるように、留め具がついている。その留め具に、同じような緑の石がはまっているが。
「ラリエットの方を、いただけますか」
「よろしくてよ。私は彼女を、歓迎しましょう。まだお会いしたことありませんけれど」
「そういえば、そうでしたね」
メルヴィ嬢を伴って、音楽会やお茶会に顔を出したが、そこには母の姿も兄の奥方の姿もそう言えばなかった。まあ、仕事で顔を出している場であるから、それもそうなのだろうけれど。
「あなた今日は早めに準備してあちらにいらしてね」
「はい」
「四日後のお披露目のお式の後、メラルティン家の夜会があることもちゃんと伝えるのですよ」
「ありましたっけ」
「あります」
「しかとお伝えいたします」
それでは、と伝えて席を立つ。
母上のお小言が飛んでくる前に、撤退した。もう長らく、実家の夜会には参加していない。単に他の夜会に顔を出していたり、そうでなければ仕事をしていただけのことである。実家の夜会であれば、ほら、家族が出ているからよいと思っていたのだし。
ただ。そうだ。実家の夜会に顔を出さない、と言うことは、不仲であると思われることもあるのだ。たんに甘えさせてもらっていただけなのだが。
外野というものは、何をどう、捉えるか分からないのだから。
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