大いなる神秘の鍵

第4部 大いなる実践的な秘密、または、知の実現

第4部 第1章 変身について。キルケの杖。メディアの釜。魔術の武器で勝ち取られた魔術。イエズス会の大いなる秘密と、イエズス会の力の秘密。

第4部 第1章 変身について。キルケの杖。メディアの釜。魔術の武器で勝ち取られた魔術。イエズス会の大いなる秘密と、イエズス会の力の秘密。

　ダニエル書4章33節には、ネブカドネザル2世は権力と傲慢が絶頂の時に突然に獣に変身した、と記されている。
　ダニエル書4章33節には、ネブカドネザル2世が未開の場所に逃げて草を食べて髭と髪と爪が伸びた状態のまま7年間を経た、と記されている。
　「高等魔術の教理 14章」で、エリファス レヴィは、狼男の神秘についての考えを話した。
　キルケの例え話は、知られているし、理解されている。
　ある人から他人への、決定的な「支配力」は、真のキルケの杖である。
　ほぼ全ての人の人相には、1体以上の動物との類似が有る。
　言い換えると、ほぼ全ての人の人相には、特化した先天的な物である肉欲の特徴が有る。
　肉欲は、正反対の肉欲と、つり合っている。
　また、強い肉欲が、弱い肉欲を支配している。
　羊を圧倒するために、牧羊犬は、狼への恐怖を利用する。
　もし、あなたが、かわいい子猫に愛されたい犬であるならば、猫に変身するという手段を取るしかない。
　しかし、どの様にして、変身するのか！？
　観察、模倣、想像によって、変身する。
　「観察、模倣、想像によって、変身する」という象徴的な言葉で読者は理解できた、と思う。
　「観察、模倣、想像によって、変身する」という啓示を催眠術をかけたいと望む全ての人に勧める。
　「観察、模倣、想像によって、変身する」という啓示は、催眠術師のわざの全ての秘密のうち、最も深い秘密である。
　「対極との対立をつり合わせて、自分の動物磁気、星の光に両極性を与える事」は、専門用語による表現である。
　または、「吸収の中心へ光線を傾けるために、吸収の特性を自身に集中させる事」。
　逆も同様である。
　すでに話した、諸々の動物の形の助けによって、人の磁気の両極性を統治できる。
　諸々の動物の形は、想像力を固定するのに役立つ。
　例えば、あなたは、あなたの様に両極性を持つ相手に、磁気的に作用したいと望んでいる、とする。
　もし、あなたが磁気の催眠術師であれば、あなたは最初の接触で相手を見抜けるであろう。
　あなたよりも、相手は、ほんの少しだけ弱い、とする。
　例えるなら、相手は小さいネズミであるハツカネズミであり、あなたはハツカネズミより大きいネズミである。
　自身を猫にしなさい。
　そうすれば、あなたは相手をとらえるであろう。
　シャルル ペローが考案した話ではないが、シャルル ペローが誰よりも上手に話している、見事な「ペロー童話集」の中の「長靴をはいた猫」という話で、不思議な猫は、機転を利かせて、オーガをネズミに変身させて、すぐに食べた。
　アプレイウスの「黄金のロバ」の様に、多分、「マザー グース」は、真の魔術の口伝であり、幼子のための御伽話を口実に、知の畏敬するべき秘密を隠している。
　手をかざすだけで、言い換えると、手振り等の象徴で意思を表すだけで、催眠術師が純水に赤ワイン、リキュール、考えられる全ての薬の味や特性を与える事ができるのは知られている。
　猛獣使いが精神的に催眠的にライオンよりも強く獰猛に変貌してライオンを圧倒する事も知られている。
　勇敢なアフリカのライオン狩りJules Gerardが、仮に、ライオンを恐れたら、ライオンに食い殺されてしまうであろう。
　ライオンを恐れないためには、人は、想像力と意思による努力によって、ライオンよりも強く獰猛に変身する必要が有る。
　ライオンを恐れないためには、人は、「私はライオンであり、私の目の前にいる動物はライオンである私を恐れる犬に過ぎない」と自分に言い聞かせる必要が有る。
　シャルル フーリエは、反ライオンを妄想した。
　ファランステールを妄想したシャルル フーリエの反ライオンという妄想を、ライオン狩りJules Gerardは実現した。
　しかし、大衆は、「ライオンを恐れないためには、勇敢な人に成って十分に武装するだけで十分である」と言うであろう。
　いいえ。十分ではない。
　ライオンを恐れないためには、人は、自身を心で知る必要が有る。
　言ってみれば、ライオンを恐れないためには、人は、ライオンの跳躍を計算できる必要が有る。
　ライオンを恐れないためには、人は、ライオンの戦略を見抜く事ができる必要が有る。
　ライオンを恐れないためには、人は、ライオンの爪を避ける事ができる必要が有る。
　ライオンを恐れないためには、人は、ライオンの動きを予見できる必要が有る。
　要約すると、優れたラ フォンテーヌが話している様に、ライオンを恐れないためには、人は、ライオン学、ライオン術の達人に成る必要が有る。
　獣、動物は、人の先天的な物である肉欲の生きている象徴である。
　もし、あなたが、ある人を臆病にしたのであれば、あなたは、ある人をウサギに変えたのである。
　逆に、もし、あなたが、ある人が獰猛に成る様に追い込んでしまったのであれば、あなたは、ある人を虎に変えたのである。
　キルケの杖とは、女性が持つ魅了する力である。
　キルケの杖がオデュッセウスの戦友を豚に変えたのは、当時だけの話ではない。
　破壊しない変身は存在しない。
　人は、タカをハトに変えるには、第一に殺す必要が有り、それから、最初の形跡を完全に破壊するために、死体を破片にまで切って分解し、そして、メディアの魔術の釜の中で死体の破片を煮る必要が有る。
　(「殺す」等は、例えである。)
　人の改心を達成するために、近代の秘儀祭司達であるイエズス会が、どのような手段で進めるのか、見なさい。
　例えば、カトリックにおいて、多かれ少なかれ弱くて肉欲に夢中な人をイエズス会の禁欲的な宣教師に変えるために、イエズス会が、どのように取り組むのか、見なさい。
　イエズス会の改心のさせ方には、畏敬するべきイエズス会の大いなる秘密が存在する。
　イエズス会は、常に誤解され、たいてい中傷されるが、常に王者である。
　イグナチオ デ ロヨラの「霊操」という名前の本を注意深く読みなさい。
　そして、イグナチオ デ ロヨラという知者が、どんな魔術的な力によって、信心を実現するのか、気づきなさい。
　イグナチオ デ ロヨラは、弟子達に、目に見えないものを見、触り、嗅ぎ、味わう様に命令している。
　イグナチオ デ ロヨラは、祈りを通じて、自発的に幻覚を見るまでに、五感が高まる事を望んでいるのである。
　弟子達が宗教の神秘について熟考する時に、イグナチオ デ ロヨラは、第一に、弟子達が、ある場所を想像力で創造して、夢見、見、触る事を望んでいる。
　もし弟子達が地獄について熟考するのであれば、イグナチオ デ ロヨラは、弟子達に、燃えている岩を触らせ、瀝青の様に深い闇の中で泳がせ、液体の硫黄を舌の上に載せ、不快な悪臭で鼻の穴を満たし、恐ろしい拷問を見せ、人の声とは思えない苦しんでいる人の呻き声を聞かせる。
　イグナチオ デ ロヨラは、弟子達に、執拗な鍛錬によって忍耐させた全てのものを意思で創造する様に命令している。
　イグナチオ デ ロヨラの弟子達は皆、自己流で自発的に幻覚を見る事を達成するが、常に、最も感銘を受けた方法で自発的に幻覚を見る事を達成する。
　イグナチオ デ ロヨラの「霊操」は、「暗殺教団」の指導者「山の老人」が悪事に役立てた大麻による幻覚ではない。
　イグナチオ デ ロヨラの「霊操」は、眠らないで見る夢であり、狂わない幻覚であり、論理的に熟考された望まれた幻視であり、知と信心による現実の想像による創造である。
　そのため、イエズス会士は、教えを説く時に、「私が話す事は、私が、目で見た事、耳で聞いた事、手で触れた事である」と話す事ができる。
　イグナチオ デ ロヨラの「霊操」で鍛えられたイエズス会士は、自分の様にイグナチオ デ ロヨラの「霊操」で鍛えられたイエズス会士達の意思の輪と一体に成る。
　結果的に、各イエズス会士の神父は、イエズス会と同じくらい、強い。
　また、イエズス会は、俗世の大衆よりも、強い。