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60 手をつないだまま、エンドロール
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暗い映画館の席に並んで座った瞬間、隣の舞の肩が、そっと腕に触れた。
まだ予告編すら始まってないのに、ざわざわした空気の中で、舞の体温だけがやけにくっきり分かる。
今日、誘ったのは私だ。
新しい恋愛映画が上映されるって知ったとき、舞と一緒に見たいって思った。
理由は、分かってる。
こういう話を見たら、舞は少し甘くなる。
「綾、ポップコーン取って」
舞が小声で言う。
バケツは私の膝の上に乗ってる。
舞はいつも、こうやって当たり前みたいに甘えてくる。
私は言葉を返さず、バケツを少し傾けた。舞の手が取りやすいように。
指先が、ほんの一瞬触れた。
それだけで、舞がくすっと笑った気配がする。
暗くて顔は見えない。
でも、分かる。
きっとあの、ちょっと意地悪そうな私の好きな笑顔だ。
やがて映画が始まって、オープニングの音が響く。
画面が明るくなるたびに、舞の横顔が浮かび上がった。
長いまつ毛。
細い鼻すじ。
少し尖った唇。
見慣れてるはずなのに、今日は特別に綺麗に見える。
デートだから、ちゃんとメイクしてきたんだろうな。
普段より少し大人っぽい。
物語は運命みたいな出会いから始まった。
同じカフェで席を譲り合って、そこから恋が芽生える。
ありがちなのに、胸がきゅんとするやつ。
私はスクリーンを見てる。
でも、半分以上は舞の反応を見てる。
舞は感情が入ると、すぐに私の袖を掴む癖がある。
そして案の定、告白のシーンで。
ぎゅっ。
舞の指が私の腕に絡みついてきた。
結構、強い力。
スクリーンの光が舞の横顔を照らして、目が少し潤んでるのが見えた。
泣き虫なんだから。
本当に昔から、変わらないんだから。
私はそっと、自分の手を重ねた。
舞は一瞬びくっと固まって、それから指を絡め返してくる。
手のひらが少し汗ばんでる。
緊張してるのかな。
そしてクライマックス。
二人がすれ違って、別れそうになる場面。
音楽が切なくて、会場が息を止めたみたいに静かになる。
私は舞の手を強く握り返した。
離さない。そういう意味で。
舞も同じタイミングで握り返してきた。
明るさと暗さが何度も入れ替わる中で、私たちの手だけはずっと同じ場所にあった。
ずっと、離れない。
エンドロールが流れ始めて、明かりがつく直前。
舞が私の肩に頭を預けてきた。
「綾……」
小さな声。
私は返事をしないで、舞の髪をそっと撫でた。
シャンプーの匂いがふわっと広がる。
甘いフローラル系。
舞の好きなやつ。
明かりがついて、周りの人が立ち上がり始める。
でも私たちはまだ動かない。
舞が顔を上げて、私を見た。
目が赤い。
ほんとに泣いてたんだ。
「最後、幸せになってよかったね」
私が言うと、舞は照れくさそうに笑って、
「うん……でも、ちょっと切なかった」
そう呟いたあと、急に真剣な顔になった。
「綾は?」
「私は……隣に舞がいてくれたから、ずっと幸せだった」
少しだけ考えて、それでも正直に言った。
言い終わった瞬間、恥ずかしさが遅れてくる。
でも舞は目を丸くして、次に顔を桜色にしてた。
「ずるい……そんなこと、急に言わないでよ」
小声で文句を言うくせに、嬉しそうに私の腕に抱きついてくる。
映画館の通路を歩いてる間も、ずっと離れない。
外に出たら、冬の空気が冷たかった。
頬がきゅっと締まる。
その瞬間、舞が私のコートのポケットに手を入れてくる。
「寒いね」
私は自分の手を重ねて、舞の指を包んだ。
温めるみたいに。
街灯の下で、舞が上目遣いに私を見る。
「ねえ、綾」
「ん?」
「今日、すごく楽しかった。また……来ようね」
私は頷いて、舞の指を少し強く握った。
離したくない。
ああいう映画みたいに、すれ違って苦しくなるのは嫌だ。
私たちは、もっとちゃんと。
もっとまっすぐに、ずっと一緒にいるんだから。
帰り道、コンビニに寄って温かいココアを買った。
ベンチに座って、並んで飲む。
舞が私の肩に頭を乗せて、静かに言う。
「綾、好きだよ」
突然すぎて、ココアをこぼしそうになった。
でも、ちゃんと聞こえてた。
私は舞の頭を撫でて、同じ熱で返す。
「私も、舞が大好き」
夜の街は静かで、私たちの声だけが小さく響いた。
映画の続きが、もう現実の中で始まってるみたいだった。
まだ予告編すら始まってないのに、ざわざわした空気の中で、舞の体温だけがやけにくっきり分かる。
今日、誘ったのは私だ。
新しい恋愛映画が上映されるって知ったとき、舞と一緒に見たいって思った。
理由は、分かってる。
こういう話を見たら、舞は少し甘くなる。
「綾、ポップコーン取って」
舞が小声で言う。
バケツは私の膝の上に乗ってる。
舞はいつも、こうやって当たり前みたいに甘えてくる。
私は言葉を返さず、バケツを少し傾けた。舞の手が取りやすいように。
指先が、ほんの一瞬触れた。
それだけで、舞がくすっと笑った気配がする。
暗くて顔は見えない。
でも、分かる。
きっとあの、ちょっと意地悪そうな私の好きな笑顔だ。
やがて映画が始まって、オープニングの音が響く。
画面が明るくなるたびに、舞の横顔が浮かび上がった。
長いまつ毛。
細い鼻すじ。
少し尖った唇。
見慣れてるはずなのに、今日は特別に綺麗に見える。
デートだから、ちゃんとメイクしてきたんだろうな。
普段より少し大人っぽい。
物語は運命みたいな出会いから始まった。
同じカフェで席を譲り合って、そこから恋が芽生える。
ありがちなのに、胸がきゅんとするやつ。
私はスクリーンを見てる。
でも、半分以上は舞の反応を見てる。
舞は感情が入ると、すぐに私の袖を掴む癖がある。
そして案の定、告白のシーンで。
ぎゅっ。
舞の指が私の腕に絡みついてきた。
結構、強い力。
スクリーンの光が舞の横顔を照らして、目が少し潤んでるのが見えた。
泣き虫なんだから。
本当に昔から、変わらないんだから。
私はそっと、自分の手を重ねた。
舞は一瞬びくっと固まって、それから指を絡め返してくる。
手のひらが少し汗ばんでる。
緊張してるのかな。
そしてクライマックス。
二人がすれ違って、別れそうになる場面。
音楽が切なくて、会場が息を止めたみたいに静かになる。
私は舞の手を強く握り返した。
離さない。そういう意味で。
舞も同じタイミングで握り返してきた。
明るさと暗さが何度も入れ替わる中で、私たちの手だけはずっと同じ場所にあった。
ずっと、離れない。
エンドロールが流れ始めて、明かりがつく直前。
舞が私の肩に頭を預けてきた。
「綾……」
小さな声。
私は返事をしないで、舞の髪をそっと撫でた。
シャンプーの匂いがふわっと広がる。
甘いフローラル系。
舞の好きなやつ。
明かりがついて、周りの人が立ち上がり始める。
でも私たちはまだ動かない。
舞が顔を上げて、私を見た。
目が赤い。
ほんとに泣いてたんだ。
「最後、幸せになってよかったね」
私が言うと、舞は照れくさそうに笑って、
「うん……でも、ちょっと切なかった」
そう呟いたあと、急に真剣な顔になった。
「綾は?」
「私は……隣に舞がいてくれたから、ずっと幸せだった」
少しだけ考えて、それでも正直に言った。
言い終わった瞬間、恥ずかしさが遅れてくる。
でも舞は目を丸くして、次に顔を桜色にしてた。
「ずるい……そんなこと、急に言わないでよ」
小声で文句を言うくせに、嬉しそうに私の腕に抱きついてくる。
映画館の通路を歩いてる間も、ずっと離れない。
外に出たら、冬の空気が冷たかった。
頬がきゅっと締まる。
その瞬間、舞が私のコートのポケットに手を入れてくる。
「寒いね」
私は自分の手を重ねて、舞の指を包んだ。
温めるみたいに。
街灯の下で、舞が上目遣いに私を見る。
「ねえ、綾」
「ん?」
「今日、すごく楽しかった。また……来ようね」
私は頷いて、舞の指を少し強く握った。
離したくない。
ああいう映画みたいに、すれ違って苦しくなるのは嫌だ。
私たちは、もっとちゃんと。
もっとまっすぐに、ずっと一緒にいるんだから。
帰り道、コンビニに寄って温かいココアを買った。
ベンチに座って、並んで飲む。
舞が私の肩に頭を乗せて、静かに言う。
「綾、好きだよ」
突然すぎて、ココアをこぼしそうになった。
でも、ちゃんと聞こえてた。
私は舞の頭を撫でて、同じ熱で返す。
「私も、舞が大好き」
夜の街は静かで、私たちの声だけが小さく響いた。
映画の続きが、もう現実の中で始まってるみたいだった。
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