【3部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~

南條 綾

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2章 不気味な島

76話 悪夢

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 今回は話の都合上、シビの悪夢描写が長めになります。
 触手・精神的恐怖・性的な体感覚描写がかなり強く出てきますので、苦手な方はご注意ください。



 俺は目を閉じた瞬間、闇に落ちた。
 底なしの虚空に体が浮かび、糸で吊るされたように固定される。
 重力も支えもなく、ただ無限の黒に沈んでいく。
 
 次の瞬間、無数の触手が闇から湧き出た。
 ぬるぬるとした、生き物の表面。
 温かく、なのに底冷えする感触。
 俺の肌に、ねっとりと絡みつき、這い回る。
 腕を巻き、首筋を撫で、腰を締め、太ももを優しく開いていく。
 逃げ場がない。
 毛穴から入り込んでくる。

 血管を這うように、ゆっくり体内に広がっていく。
 痛みはなかった。
 代わりに、体が内側から煮え立つように熱を帯び始める。
 胸の先がぴんと張りつめて疼く。
 
 触手が布地越しに軽く擦るだけで、鋭い電流のような痺れが背筋を駆け上がり、体がビクンと跳ねる。
 下腹部に、鈍く甘い疼きがじわじわと沈み込んでいく。
 奥の方が熱く疼きながら締め付けるような感覚が広がり、まるで何かがゆっくりと深く入り込み、芯を押し広げながら脈を打っているかのように。

 体の中が勝手に反応して、甘い波が何度も、何度も押し寄せてくる。
 こんな、甘く蕩けるような、体の芯まで溶かされる快感なんて、知らない。
 体が俺の意志を無視して反応してる。

 44歳の意識が、18歳の少女の肉体に閉じ込められて、勝手に溶けていく感じだ。
 理性を振り絞らな……!
 必死で自分に言い聞かせるのに、声にならない叫びが頭の中で反響するだけ。
 快楽の波がそれを掻き消し、体が勝手に反応してしまう。
 視界が霞み、思考が霧のように薄れていくのが、はっきりとわかる。

「やめろ……!」

 叫んだ声が高く掠れて震える。
 少女の喉から漏れる、甘い喘ぎのような響きに、自分自身がゾッとする。  堕ちてなるものかよ……!
 俺の意地が、頭の奥で必死に叫ぶ。
 
 でも、体はもう言うことを聞かない。  触手が胸を優しく包み込み、敏感な頂をくるくると転がす。
 体が弓なりに反り、腰が勝手にくねってしまう。
 背中が震え、息が熱く乱れて、甘い吐息が止まらない。
  こんな反応、俺の意志じゃないはずなのに……体が、どんどん熱く蕩けていく。

「はっ……あ……っ」

 下半身へ伸びた触手が、太ももをゆっくりと開いていく。
 抵抗しようとしても力が抜ける。 
 熱い先端が秘められた部分に軽く触れ、擦られた瞬間。
 全身を甘い痺れが駆け巡り、体がビクンと震える。
 下腹部が熱く疼き、内腿に温かい液体の感触が広がっていく。
 腰が勝手に浮き上がり、奥の方が疼いて締め付けるように反応してしまう。
 もっと……と、体が無意識に求めてしまう。体が正直すぎる。
 理性が、どんどん溶けていく。

 ふざけんなよ……俺が、女の体になっても、こんな反応するはずないだろ。
 拒否しろと言っているのに、だけど、触手に絡みつかれ、震え、喘ぎ、頭が真っ白になる。
 思考の糸が、次々と切れていく。
 触手が、ゆっくりと、深く、入り込んでくる。
 俺はただ、甘い声を漏らし、震え続けることしかできなかった。
 ……まだ、終わらない。
 闇の奥から、さらに多くの触手が近づいてくる気配がする。
 体が、もっと深く、貪られようとしている。

 急に耳元で甘く囁く、エレナの声が、聞こえてきた。

「シビさん……」

 首だけ振り向くと、彼女がいた。
 でも、違う。
 体が黒い溝のようにひび割れ、そこから粘つく触手が無数に伸びている。
 瞳は底なしの闇で、底に落ちれば二度と浮かび上がれないような深さだった。
 唇が裂け、舌が俺の頬を這い。
 ぬるりと、冷たく、でも熱かった。
 甘ったるい腐敗の臭いが肺を犯し、息をするたびに喉が焼けるように苦しい。触手が胸に沈み込んで、熱を注ぎ込む。

 俺の胸が熱く膨張し、痛みと混じった感覚に、高い声がまた漏れてしまった。
「んっ……あ……」

 自分の声に、喉が震える。
 エレナの前で、こんな喘ぎを晒してるなんて……?
 惨めで、恥ずかしくて、吐き気がする。

 なのに、こんな状況で興奮してる自分を意識した瞬間、なぜかわからないけど……ぞっとした。
 背筋が寒くなるのに、体は逆に熱くなる。
 胸の先がぴんと張りつめて、触手が軽く擦るだけで甘い電流が走る。
 腰が勝手にくねり、内腿が熱く湿っていく。
 体は、裏切り者のように、どんどん熱くなる。

 エレナの無垢な顔が、微笑みながら俺を包み込む。
 触手が全身を這い回り、胸を、腰を、太ももを同時に撫でる。
 柔らかく、執拗に、優しく、残酷に。
 体が熱い波に飲み込まれそうになる。

 彼女の鼓動と同期して、震えが止まらない。
 心臓が、ドクン、ドクン、と巨大な石柱の脈動に合わせて跳ねる。
 頭が回らない。

 俺は……俺じゃなくなってる。

 エレナの裂けた唇が近づいてくる。
 甘ったるい腐敗臭が鼻腔を犯しながらも、体が疼いてしまう。
「シビさん……もっと、感じて……」

「やめろ……エレナ……お前じゃなく……なぜ……」

 心で叫ぶのに、体は抗えない。
 触手がさらに深く入り込み、俺の内側を掻き回す。
 一瞬、見えた。
 山脈が生き物のように息づいている。
 溝がゆっくり開閉し、巨大な口のように俺を飲み込もうとする。
 黒い岩壁が、肉のようにうねり、俺を引きずり込もうとする。

『ピィ……リィ……』

 笛の音が頭蓋内で反響するたび、触手が深く絡みつき、体を内側から溶かそうとする。
 エレナの体が俺に重なる。
 胸が胸に沈み込み、境界が曖昧になる。
 甘い痛みと熱い波が、何度も繰り返される。

 俺の体が、彼女の一部に。
 彼女の体が、俺の一部に。
 溶け合って、混じり合って、元の形を失っていく。

「一緒に……永遠に……溶け合いましょう……シビさん」

 それはエレナじゃない。
 頭ではわかっている。
 分かってはいるんだ。だけどまぁいいかと受け入れている自分がいた。

 無垢な神官の顔が、異形の微笑みを浮かべて俺を汚す。
 熱い波が訪れる。
 解放されない。ただ、永遠に疼き、狂う。
 理性が砕け散り、俺が飲み込まれ続ける。

 「俺は……こんなんじゃ……」

 アイデンティティが、音を立てて崩れ落ちる。
 人間じゃなくなる。ただの肉の塊。
 島に飲み込まれて行く。宇宙の無意味な欠片となり、一体になっていく。
 すべてが色褪せて、価値なんて最初からなかったんだって思えてくる。
 視界が黒く染まる。
 ゆっくり、じわじわと、闇が俺の瞳を塗りつぶしていく。

 エレナの顔が俺の顔に重なる。
 触手が唇を覆い、喉の奥まで入り込む。
 ぬるぬるとした感触が舌を絡め取り、甘ったるい腐敗の味が口いっぱいに広がる。
 肺に、血に、骨にまで染み込んで、体全体を満たす。
 息をするたび、腐った甘さが喉を焼いて、胃を逆流させる。

 体は震えながらも、なぜか受け入れてしまう。
 俺たちは、もう分離できない。
 一つの、歪んだ、永遠に震える存在になった。
 俺の胸が彼女の胸に沈み、彼女の瞳が俺の瞳に溶け込み、境界が溶ける。
 痛みも快楽も、すべてが混じり合って、ただの脈動になる。
 永遠に疼き、永遠に震え、永遠に……。

 その時だった胸の中に熱いものを感じる。

「シビさん」

「ジョー。何こんなやつに負けてるの。心配で成仏できないでしょうが」
 
 本物のエレナの声とシビの声が聞こえる。
 遠くから、でも確かに。
 エレナの祈りが、シビの不屈の魂が俺は俺だと認識する。
 アウリス神の加護の光が、闇の隙間から春の陽気な日差しのような温かさで俺を照らしてくれる。
 俺の意識が覚醒する。
 あぁ俺は負けない。
 また助けられた。

「俺は……何度彼女たちに助けられたら気が済むんだよ……」

 俺の中にある魔力を……集中させ……この見せている悪夢を……爆発させる。

 俺の周囲が、ガラスのように砕かれて光が広がった。
 黒いガラス片のような闇の欠片が、無数に飛び散り、
 その鋭い破片がキラキラと反射しながら落ちていく。
 隙間から眩しい白い光が噴き出して、闇を焼き払う。

 触手のぬめりも、エレナの異形の微笑みも、甘ったるい腐敗の味も。
 一瞬で、光に溶けて消えた。
 ガラスの破片が散る音が、頭の中でカチカチと響き、
 闇の残響が急に遠ざかる。
 喉の奥に残っていたぬめりが、引き抜かれるように後退し。
 甘い腐敗の残り香が、風に吹き飛ばされるように薄れていく。

 そうして俺は悪夢から解放され、この世界に覚醒ができた。
 寝ていたと同じように焚き火の前で寝袋の中で眠っていた。
 体がびっしょり汗で濡れている。
 シャツが肌に張りついて、冷たいのに熱い。
 下腹部に、まだ熱い疼きが残り、体が微かに震えている。
 夢……だったはずなのに、体が覚えている。

 胸の締め付け、喉の違和感、腰の震え……すべてが、皮膚の下に残ったまま。
 エレナの方を見てみると彼女も寝袋ですやすやと静かに寝息を立てている。

 俺は寝袋から出て、彼女の髪が頰に触れる。
 柔らかくて、温かくて……安心をした。

 幸い彼女は、悪夢に侵されてはいなかった。
 穏やかな寝顔。

 頭の中で襲えと訴えかけてくる。
 胸の鼓動が、島の拍動と完全に同期した気がする。
 俺の心臓も、ドクン、ドクン、と山脈の脈に合わせて跳ねていた。
 下半身の熱が、引かない。
 狂気が、頭の奥で笑っている。

 「はぁはぁ……」

 俺は少し舌を嚙み、意識を覚醒させる。
 絶望が、肺を締め付ける。
 きっと、俺がこいつを異性とみている節があったから、そこを付け狙われたのかもしれない。
 それとも、俺は、この山の何かに魅入られて食われるのかもしれない。

 俺はエレナを、守れるのか?
 それとも、島が俺たちを、永遠に融合させるのか。決着が明日から始まる。
 島を調べ、山を調べて、絶対に元凶を見つけてやる。
 この夢が、警告なのか、予言なのか。
 どっちでもいい。
 逃げられない狂気なら、特攻してぶち破って見せる。火が、弱々しく揺れている。

 俺は、エレナの額に手を乗せ、そっと撫でた。
 彼女の肌は、柔らかくて、少し汗ばんでいる。
 本物の温もりだった。

「シビ……さぁん。大丈夫ですよ……」

 起きたと思ったら、また熟睡しているようだった。
 寝言が、優しく響く。
 そんなエレナの寝顔を見たら、なんだか暖かく平穏な気持ちになったので、着替えを済ませてもう一度寝ることにした。

 汗で濡れた服を脱ぎ、乾いた布を体に巻く。
 下腹部の疼きは、まだ残っている。
 でも、今は……少しだけ、抑えられる気がした。

 焚き火の炎が、ぱちぱちと音を立てる。
 俺はエレナの隣に体を横たえ、目を閉じた。
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