異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第4章第十三話 決闘

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  第4章第十三話 決闘
 「ムリだろ。勝てっこない。あんなデカいヤツ。それに、鉄の盾も持ってるし」
 動揺していた。サソリ姫の声は。
 それに対し、トッキロが冷静に答えた。
 「勝つ必要は、ありません。一時的に戦闘不能にすれば、それで充分です。そのすきに後退して、ここから脱出しましょう」
 「わかったよ。毒が、必要なんだろ」
 サソリ姫の声にも、冷静さが戻って来た。
 「一番強力な毒が、あと一瓶ひとびん、残ってるよ」
 その言葉に、即答した。トッキロが。
 「それは、脱出時に取っておきましょう。アース・ドラゴン対策用に」
 「今が、使う時だろ。一番強力なヤツを」
 怒気を含んでいた。彼女のその言葉には。
 だがトッキロは、冷静だった。
 「二番目に強力な毒で、だいじょうぶです。あと、何瓶ありますか?」
 「いくつもあるよ。二番目に強い毒で、いいなら」
 「それでは、二瓶ください。二番目に強力な毒を」
 そのときだった。
 西の方角から、叫ぶ声が聞こえた。
 雷姫だ。
 稲妻が走った。水平に。西の暗闇の中。
 絶叫が聞こえた。魔族が感電したのだ。
 怒声も聞こえた。魔族たちの怒鳴り声だ。
 交戦勃発だ。
 氷姫の声も、聞こえる。兵士たちへ、命じている。隊列を組め、と。
 人質集団の西側にいた見張りの魔族は、十名だ。
 氷姫と雷姫の戦力だけで、だいじょうぶだろうか。
 鉄龍将軍が、怒鳴った。視線を、西側にチラリと向けたあと。
 「攻撃水魔法の使い手よ! 隠れてないで、出てこい! さもないと、あたり一面を燃やし尽くすぞ!」
 小声で、つぶやいた。水魔法の詠唱を。トッキロが。
 テニスボール大の水球が、二つ出現した。
 サソリ姫が、小瓶の毒を注いだ。一つの水球に一瓶ずつ。
 トッキロが小声でささやいた。
 「鉄龍将軍の動きを毒で止めたら、サソリ姫様は、南側に走って逃げてください。全速力で」
 「どうすんだよ? トッキロは」
 「殿しんがりつとめます。ファイアー・ボールを打ち落としながら、少しずつ後退します」
 鉄龍将軍が、ふたたび怒鳴った。遠くまで響き渡るような大声で。
 「黒髪の人間よ! 出てこないなら、向こうにいる人間どもを、焼き尽くすぞ! われの魔力をもってすれば、われのファイアー・ボールは、向こうまで届くからな!」
 とらわれていた人質は、およそ千名。そのうち半数以上が子供や乳幼児だ。
 そのため、脱出に時間がかかっている。
 そのうえ、西側の見張りの魔族たちに気づかれ、現在、交戦中だ。
 人質たちの最後尾の集団は、トッキロたちの位置から、まだ、五十メートルも離れていない。
 強力な魔力を持つ魔族ならば、人質たちのいる場所まで、特大ファイアー・ボールを飛ばすことも可能だろう。
 それは、まずい。
 人質たちが、焼死してしまう。
 時間を、稼がなければ。人質の脱出まで。
 立ち上がった。トッキロが。突然。
 あわてふためいた。サソリ姫が。
 「おい、なにやってんだよ! 死ぬ気かよ!」
 大声で呼びかけた。トッキロが、鉄龍将軍に。
 「鉄龍将軍! 私と、一対一で勝負せよ! 決闘だ!」
 ガハハ、と大笑した。鉄龍将軍が。
 「われと勝負だと? それも一対一で?」
 「そうだ! 一対一の決闘だ!」
 大声で答えた。トッキロが。
 笑いながら、鉄龍将軍が言葉を続けた。
 「おぬしが、炎龍王女を苦しめた黒髪の人間か?」
 「そうだ」
 「どれだけの大男かと思ったら、ちっぽけな人間ではないか」
 「普通の人間の兵士と比べれば、大きいほうだ」
 「われから見れば、虫けらのごとき、ちっぽけな人間だ」
 まだ、笑い続けている。鉄龍将軍は。
 「名前を名告なのろう。私の名前は、五十嵐十吉郎。王国共通語に訳すと、五十の嵐に、十の幸運を持つ男という意味だ」
 「足りないじゃん。幸運の数が」
 ぼやいた。サソリ姫が、小声で。地面に伏せたまま、少しずつトッキロから離れながら。
 「五回の嵐で、一回しか助からないなんて」
 「全部、生きのびますよ。今回も」
 鉄龍将軍が、ようやく笑うのをやめた。
 「おぬしの幸運も、ここで終わりだ! さあ、かかってこい!」
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