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第一章 正体ばれて絶体絶命 <第1話>
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<第一章 第1話>
「あなたの革命の時間は、ここで終わり。ここからは、あたしの、いえ、あたしたちの革命の時間よ」
そう、啖呵を切った直後、猛烈に後悔した。
余計なことを言ってしまった、と。
ニヤリと、ジョゼフ=ピエールが笑った。極悪そうな笑みだった。
「おまえの魂胆は、お見通しだ。この性悪ブルジョア女め。ここにいるプチブルのブタどもを、我々に反逆させることができれば、火あぶりから逃れられる。そう思っているのだろう。だが、それは不可能だ。なぜなら、ここにいるプチブルの男たちは、わずか百名。しかも、何も武器を持っていない。それに対して我々は、党員だけで千名もいる。しかも全員、刃物で武装している。拳銃を所持している者もいる。さらに、この広場には、党友も五千名以上いる」
党友の数は、五千名もいない。おそらく三千名程度だろう。
「あなたの魂胆も、お見通しよ」
ルビー・クールが、にらみながら言い返した。
「あなたは、市民の反乱を恐れている。なぜなら、あなたたちは、市民に、いかなる利益も、もたらすことができない。市民から奪うだけで、何も与えることができない。ゆえに、市民が一斉蜂起をしたら、あなたたちは市民の反乱に勝てない。だからこそ、市民を騙して、毎日、百家族ごと、殺していく魂胆ね。昨日殺した百家族は、店の所有権の放棄を渋った。革命に協力的ではなかった。だから皆殺しにした。そういう大嘘を言いふらす。その嘘を信じた市民たちは、自分たちは殺されないように、無産者革命党にしたがおう。そう思うはず。けれども、あなたは最初から、有産者市民は、おんな子どもも赤んぼうも、全員皆殺しにするつもりなんでしょ」
ガハハ、とジョゼフ=ピエールが大笑した。
「そのとおりだ。だが、一点だけ違う。若い美女は、すぐには殺さない。殺すのは、我々の共有物として、充分に楽しんでからだ」
ジョゼフ=ピエールは下卑た笑みを浮かべながら、ルビー・クールに近づいた。
「おまえは若い美女だから、泣いて懇願するなら、殺すのは後回しにしてやってもいいぞ」
「けっこうよ。さっさと薪に火をつけなさい」
「輪姦されてから殺されるくらいなら、早く殺してくれ、ということか」
「違うわ。殺されるのは、あたしじゃない。あなたよ」
「オレ様が殺されるだと。いったい誰が殺すんだ?」
「あたしよ」
ジョゼフ=ピエールが、爆笑した。
「磔にされて、火あぶり直前のおまえが、か?」
「ええ、そうよ。あたしが、あなたを処刑するわ」
笑い転げた。ジョゼフ=ピエールが。それに、やりとりを聞いていた無産者革命党の党員たちも。
「どうやってだ?」
「さっさと薪に火をつけなさい。そうすれば、分かるわ」
押し黙った。突然。ジョゼフ=ピエールが。不審そうな顔で。
しまった。まずいことを言ってしまったか。作戦は、失敗してしまうのか。
ルビー・クールは、後悔した。自分の発言を。
そのときだった。
突風が吹いた。強い風だった。
思わず、目をつぶった。顔を背けながら。
目を開いた。
男たちが、どよめいた。
広場にいる男たち、全員が。
視界の左端に、見えた。左手に向かって走り出す若い男が。
その若い男は、石畳に落ちた金髪のウイッグを拾った。
振り返ってルビー・クールを、見た。真っ青な顔で。ナットが。金髪のウイッグを手に。
ジョゼフ=ピエールが、怒鳴った。驚愕の表情で。
「赤毛の女! しかも、白い制服! おまえ、ひょっとして……」
まずい、まずい、まずい。正体が、ばれてしまう。ばれてしまえば、作戦は台無しだ。
そのうえ、今はロープで拘束されている。もし今、拳銃で撃たれたら、逃げられない。撃ち殺されてしまう。
ルビー・クールは、涙目になった。
「あなたの革命の時間は、ここで終わり。ここからは、あたしの、いえ、あたしたちの革命の時間よ」
そう、啖呵を切った直後、猛烈に後悔した。
余計なことを言ってしまった、と。
ニヤリと、ジョゼフ=ピエールが笑った。極悪そうな笑みだった。
「おまえの魂胆は、お見通しだ。この性悪ブルジョア女め。ここにいるプチブルのブタどもを、我々に反逆させることができれば、火あぶりから逃れられる。そう思っているのだろう。だが、それは不可能だ。なぜなら、ここにいるプチブルの男たちは、わずか百名。しかも、何も武器を持っていない。それに対して我々は、党員だけで千名もいる。しかも全員、刃物で武装している。拳銃を所持している者もいる。さらに、この広場には、党友も五千名以上いる」
党友の数は、五千名もいない。おそらく三千名程度だろう。
「あなたの魂胆も、お見通しよ」
ルビー・クールが、にらみながら言い返した。
「あなたは、市民の反乱を恐れている。なぜなら、あなたたちは、市民に、いかなる利益も、もたらすことができない。市民から奪うだけで、何も与えることができない。ゆえに、市民が一斉蜂起をしたら、あなたたちは市民の反乱に勝てない。だからこそ、市民を騙して、毎日、百家族ごと、殺していく魂胆ね。昨日殺した百家族は、店の所有権の放棄を渋った。革命に協力的ではなかった。だから皆殺しにした。そういう大嘘を言いふらす。その嘘を信じた市民たちは、自分たちは殺されないように、無産者革命党にしたがおう。そう思うはず。けれども、あなたは最初から、有産者市民は、おんな子どもも赤んぼうも、全員皆殺しにするつもりなんでしょ」
ガハハ、とジョゼフ=ピエールが大笑した。
「そのとおりだ。だが、一点だけ違う。若い美女は、すぐには殺さない。殺すのは、我々の共有物として、充分に楽しんでからだ」
ジョゼフ=ピエールは下卑た笑みを浮かべながら、ルビー・クールに近づいた。
「おまえは若い美女だから、泣いて懇願するなら、殺すのは後回しにしてやってもいいぞ」
「けっこうよ。さっさと薪に火をつけなさい」
「輪姦されてから殺されるくらいなら、早く殺してくれ、ということか」
「違うわ。殺されるのは、あたしじゃない。あなたよ」
「オレ様が殺されるだと。いったい誰が殺すんだ?」
「あたしよ」
ジョゼフ=ピエールが、爆笑した。
「磔にされて、火あぶり直前のおまえが、か?」
「ええ、そうよ。あたしが、あなたを処刑するわ」
笑い転げた。ジョゼフ=ピエールが。それに、やりとりを聞いていた無産者革命党の党員たちも。
「どうやってだ?」
「さっさと薪に火をつけなさい。そうすれば、分かるわ」
押し黙った。突然。ジョゼフ=ピエールが。不審そうな顔で。
しまった。まずいことを言ってしまったか。作戦は、失敗してしまうのか。
ルビー・クールは、後悔した。自分の発言を。
そのときだった。
突風が吹いた。強い風だった。
思わず、目をつぶった。顔を背けながら。
目を開いた。
男たちが、どよめいた。
広場にいる男たち、全員が。
視界の左端に、見えた。左手に向かって走り出す若い男が。
その若い男は、石畳に落ちた金髪のウイッグを拾った。
振り返ってルビー・クールを、見た。真っ青な顔で。ナットが。金髪のウイッグを手に。
ジョゼフ=ピエールが、怒鳴った。驚愕の表情で。
「赤毛の女! しかも、白い制服! おまえ、ひょっとして……」
まずい、まずい、まずい。正体が、ばれてしまう。ばれてしまえば、作戦は台無しだ。
そのうえ、今はロープで拘束されている。もし今、拳銃で撃たれたら、逃げられない。撃ち殺されてしまう。
ルビー・クールは、涙目になった。
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