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64. ごめん……弱くて…… ~聖菜視点~

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64. ごめん……弱くて…… ~聖菜視点~



 花火大会が終わり、自分の部屋に戻ってくる。取り返しのつかないことをしてしまった時、人間は何を思うのだろうか?後悔?懺悔?絶望?今の私はまさにそれだ。

 私はベッドの上で膝を抱えて座る。そして枕元に置いてあるスマホを手に取る。不在着信とメッセージ。もちろん優斗君からだ。

 でも……今はそれに返信することができない。だって……私のせいだから。

 私の行動が軽率だったばかりに、私の身勝手な気持ちのせいで、私のワガママのせいで、私のくだらない感情のせいで……

 未来を変えてしまったから……

 私は自分勝手にも優斗君との幸せな未来の為だけに、行動してきた。それが最も恐れていた最悪な事態を招いてしまった。

 私は……私が犯した罪は消えることはない。

 私は……私は……どうすればよかったのだろう。

 どうしたら正解だったのだろう。

 私は……私は……私は……

 何度も自分に問いかける。

 答えは出ない。

 そんなこと分かってる。

 それでも問い続ける。

 誰か教えて欲しい。

 誰か私を助けて。そんなことを考えながら、気がつくと朝になっていた。

 昨日の出来事を思い出し、涙が溢れてくる。こんなにも辛い思いをするくらいなら、いっそ誰も知らないところに行きたい。すべてをなかったことにしたい。

 そう思った瞬間。

 私の脳裏に優斗君との思い出が次々と浮かび上がる。

 初めて桜並木で声をかけたこと。ラブホでキスをしたこと。そのあとのデートや優斗君の家にお泊まりしたこと。そして……あの日私をいっぱい愛してくれたこと。

 優斗君と過ごした日々が走馬灯のように蘇ってくる。それと同時に未来の生活、葵や愛梨の顔が浮かんでくる。

「無理だよ……こんなにも……好きなんだもん……忘れるなんて出来ないよ……。」

 私は泣き崩れた。

 それから数日。私は部屋に引きこもり続けた。外に出る勇気もなければ、学校に行く元気もなかった。

 優斗君は毎日電話してくれるし、メッセージもくれる。私の家にも来てくれた。それだけで嬉しかったけど、返事はできなかった。

 もう優斗君と話す資格はない。会うこともできない。

 すべては私のせいなのだから。

 優斗君のことが好き。大好き。愛してる。

 だからこそ……これ以上迷惑をかけたくない。

 優斗君を困らせたくない。

 優斗君を苦しめたくない。

 私の存在が優斗君を傷つけてしまう。それが何よりも怖い。きっと優斗君は今頃不安になっているはず。もしかしたら嫌われてるんじゃないかって。本当に優しい人だから。

「優斗君……会いたいよ……」

 このままじゃいけない。

 早く謝らないといけない。

 でも怖くて会いに行けない。

 ごめん……弱くて……

 私は部屋の隅で小さくなって泣いた。
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